【完結】拾った猫が超絶美少女だったので、彼女を救うため異世界に行って来ます!

一茅苑呼

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第三章 奪われた未来

2.答えは、ノーだ

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ギルは、痛々しいものでも見るようにして、エマをただ黙って見つめていた。

オレはといえば、事情が解らず、いきなり激昂したエマへの対処に困り、そんな二人を代わる代わる見るしかなかった。

「ユーヤを憎んで、何が悪い!
おれは悪くないぞ。悪いのは、あいつのほうだ。憎まれて当然のことを、あいつはしたのだ」

エマは、自分でも感情を持て余しているかのようだった。
矢継ぎ早にでてくる言葉は、心の叫びのようで……ますますオレは困惑した。

「おれは、一生あいつを憎んでやる! あぁ、一生だ。ゆるしはしない、決して!」

憎悪が一段と色濃く、エマのセルリアン・ブルーの瞳に浮かびあがった。

何がどうして、エマがこんなにもユーヤを憎んでいるのか、見当もつかなかった。
けれども、ギルは事情を知っているらしく、小さく息をついた。

「そう言うだろうと思ったよ。そんな感情をもったまま、ユーヤの所に行くというのなら、僕は行かない。行けないよ。
君たちを手伝うことは、できない」

きっぱりと断られてしまい、オレの気分は沈んだ。

またまたティアが遠ざかっていく……。

暗く落ちこむオレの前で、エマが鋭く言い放った。

「なぜだ!? なぜ、一緒に来れない!? 手を下すのは、おれであって、貴様ではない!」

ちょ、ちょっと待てよ。
手を下すって……まさか、ユーヤを殺すつもりじゃないよな!?

「まさかとは思うけど、エマ、ユーヤをどうこうしようなんて考えてるわけじゃ……」
「うるさい!」

思わず口を挟んだオレを、エマが一喝する。次いで、切れるように鋭くギルをにらみつけた。

「答えろ! なぜだっ!?」
「君も知っての通り」

言いながらギルは、立ち上がって窓辺に寄り、オレ達に背を向けた。

「ユーヤは僕の友人だ。その僕が、友人を殺そうと思ってる相手に、手を貸すと思うのかい?
……答えは、ノーだ」

ギルはオレ達を振り返った。さっきまでの穏やかな表情から一変し、厳しい顔つきだった。

「───無駄な争いは避けるべきだ。なんとか話し合いで解決したほうがいい」

はっ、と、エマは、鼻であしらった。

「無駄な争いだと?あいつは血を流さずに、今の地位を手に入れたのか?
……笑わせるな。貴様は、いくら友人とはいえ、そんな奴をかばうのか!?」

ギルは、哀しそうに目を伏せた。

「ユーヤは、道をたがえたな」

つぶやくように言ったギルに対し、エマが不愉快さを前面にだして椅子から立ち上がる。

「話にならぬな。───貴様の返答は分かった。アサクラ、行くぞ」
「えっ。待ってくれよ、エマ!」

スタスタと扉に向かい、歩きだしたエマの背中に、あわてて声をかけた。が、彼女は、お構いなしに扉の向こうへ消えた。

「……アサクラ、話がある。今夜は、僕の家に泊まらないか?」
「でも、エマが……」

さっきの様子を気にかけるオレに、ギルが苦笑いしながら肩をすくめた。

「大丈夫。ひとりでユーヤの所に行ったりはしないよ。
……彼女は、そんなに浅はかな人ではないからね。自分の家に戻るはずだ」

ギルの言葉に、今までのエマを思い返した。

……うん。
確かに、エマは短気だけど、考えなしってわけじゃないもんな。
そう結論づけて、オレはその晩、ギルの家に泊めてもらうことにした。
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