【完結】拾った猫が超絶美少女だったので、彼女を救うため異世界に行って来ます!

一茅苑呼

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第二章 異世界への扉

7.オレも、行く

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「ティアの居なくなったいま、この世界に長居は無用だ。おれは元々、ティアを追いかけて来たのだからな。
スメルムーンに、帰る」

エマ……。
ティアを取り戻すって、エマひとりでかよ?
ここに……この世界に、ひとりで来たくらいだから、多分、そうだよな。
ひとりでなんて、そんなの無茶だ。

「オレも、手伝うよ。オレも……スメルムーンに、連れて行ってくれよ」

目を見開き、それからエマは、当惑顔をした。

「何を、馬鹿なことを……!」
「馬鹿なもんかっ」

オレは叫んだ。

そうだよ。
ここまできて、いまさら関係ないなんて、そんなの、おかしいだろ……!?

ティアは、スメルムーンに帰りたくないって言っていた。エマは、そんな彼女の気持ちをくんで、無理強いをしなかった。
……しようと思えば、できたはずなのに。

きっと、エマにはエマの事情があって、ティアを追って来たんだろう。
それは、ティアの意思に反するような理由ではないはずだ。そう、思った。

だとしたら、オレはエマを手伝いたかった。ティアの事情を聞いてしまった以上。

「オレも、行く。乗りかかった船だぜ? オレに降りろって言うのかよ!?」

しばし、にらみ合った。

先に視線をそらしたのは、エマの方だった。
とび色の前髪をかきあげて、横を向く。

「良かろう。連れて行ってやる。だが、貴様の命の保証はせぬぞ」

エマの口調はすねているのがありありと分かって、オレはちょっと笑ってしまった。

「その前に、アサクラ」

釘を刺すように、エマが厳しい目をしてこちらを見る。

「貴様を鍛え直す必要がある。このまま連れて行くには、あまりにも足手まといになるからな」

     ◆  ◆  ◆

それからエマに、毎日部活を終えると、剣の使い方を習った。暗闇のなか、空き地で。

「技術を貴様に求めるつもりはない。一週間かそこいらでは、求めようもないからな。
良いか、アサクラ。となると、あとに残るのは持久力と精神力だ。そこを、鍛える」

エマとの特訓を終えると、オレはもう、くたくただった。

「アサクラ……つらいか?」

夜、うとうとしかけた時、いきなりエマに言われて、思わずベッドから飛び起きた。
ベッドのすぐ側、オオカミになって体を丸めているエマを見た。

「つらいのなら、やめてもよいのだぞ。おれは強制はせぬ。……ひとりでも、スメルムーンには戻れるしな」

エマの声には、寂しげな響きがあった。
その時、初めてエマが、オレを頼ってくれているように思えた。
それがたまらなく嬉しくて、疲れが吹き飛んでいく気がした。

「つらくなんてねーよ。オレ、やると決めたら、最後までやり抜く主義なんだ」

すると、エマはくすっと笑った。

「ほう、それはそれは。期待しておるぞ。あとで泣く羽目になっても、知らぬからな?」

久々のエマの厭味いやみに、なんだかホッとした。

───待っててくれよ、ティア。
もうじき、エマと二人でスメルムーンに向かうからな。



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