8 / 11
7.
しおりを挟む「もうさ……こういう風に会うの、やめよう」
静は、心の底から驚いたように、俺を見た。
「なに、それ……」
その反応に、参ったな、と、思う。
自分の方から「別れよう」って言ってきた時は、こっちの言い分も聞かずに、自己完結してたくせに。
「私の……『それまでの私』のことを殺しておいて、もう会わないって言うの? だったら『いまの私』も、殺してよぉ……」
おいおい……。
俺は言葉を失った。
───そうだ。
静は、酒に弱かった。
素面の時は、このうえなく、クールでしっかりしているのに。
酒が入ったとたん、甘えたのワガママ娘になる。
付き合っていた時は、そんな彼女を可愛いと思ったし、それを利用して口説いたことも認める。
けど……。
いまのこの状況下では、最低最悪の女をつかまされた感じだ。
……女って、なんでこんなにメンドくさいんだ?
「私のコト、嫌いになったの?
私……私だって本当は、直和のコト、好きだったんだよ?
だけど……直和はホワイトデーの日に、会社の人達とイチゴ刈りとかに行っちゃってさ。
木村さんとかリンリンがいるから、行って欲しくなかったのに!
おまけに───」
なおも静は、俺に別れを告げた『原因』を話した。
だけど、それがなんだっていうんだ?
終わったことじゃん。いまさらだろ、それ。
そう思いながらも身体はなんとなく静に寄り添われて、その髪を手ぐしで梳き、その唇を奪った。
小言ばかりを耳にするより、静のせつなげな吐息を聞いている方が、よっぽどマシだ。
静に抵抗はなく、俺たちは、そのまま互いを求め合った。
静の『奉仕』は極上で、その点においてだけ、彼女と離れるのは惜しかった。
半裸の上半身を隠すように、静は着ていたブラウスを胸元にあてた。
酔い覚ましに飲んでいた俺の手から、ポカリスエットを奪う。
「……どうしても、もう、会えない?」
「その方が、いいよ。小泉さんも言ってたよ、静に……幸せになって欲しいって」
都合のいいセリフと重々承知で、俺は彼女との関係を清算する気でいた。
静は黙っていた。
いつもの平静を取り戻したかのように、向こう向きで服装を整えて、そしてソファーに座り直した。
その眼差しは冴え冴えとし、理知的な静に戻ったようだった。
ところが、
「──バラしてやる、全部。
あの女にも、職場のみんなにも」
ゾッとするような、低い声が、俺の隣で発せられた。
10
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
夫以上の男、妻以上の女
ヘロディア
恋愛
不倫相手とデートに行く主人公。
その相手も既婚者で、かなり質の悪い行為とは知っていたものの、どうしてもやめられない。
しかしある日、とうとう終わりを告げる出来事が起きる…
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
抱きたい・・・急に意欲的になる旦那をベッドの上で指導していたのは親友だった!?裏切りには裏切りを
白崎アイド
大衆娯楽
旦那の抱き方がいまいち下手で困っていると、親友に打ち明けた。
「そのうちうまくなるよ」と、親友が親身に悩みを聞いてくれたことで、私の気持ちは軽くなった。
しかし、その後の裏切り行為に怒りがこみ上げてきた私は、裏切りで仕返しをすることに。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる