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しおりを挟むそうして俺は彼女と一緒に、親父の事務所で缶チューハイを呑んでいるわけだ。
車の中で話された涙のワケは、十年来の親友とのことで。
……俺にいわせれば、泣くほどのことではないように思えた。
「──彼女、私のこと、変わったっていうの。
別れた男と、こんな風に付き合ってることを肯定しまう、そういう考え方をね。
それも、なじるような言い方じゃなくて……でも、なんだか見放されたって気がして……。
彼女は、その『変わる前の私』が好きで、いまの『変わってしまった私』には、興味がないんじゃないかって……。
そう思ったら、悲しくなってきて……」
俺は内心、静って実はレズだったのかな、とか、見当違いな想像をしていた。
だから、俺はフラレて。
で、その好きな女友達とうまくいかなくて、また俺のとこにきたとか……。
「そんな深刻にならなくても、いいんじゃないの? その友達に絶交されたわけでもないんでしょ?
だったらいいじゃん。考えすぎなんだよ、静は。
静が思うほど、相手は静のこと考えてないよ。
そもそも友達って、結局、裏切るものだしさ」
「……直和には、本当の友達がいないから、解らないんだよ……。信じてないんでしょ? 人を」
付き合ってた当時にした話を、静はしっかり覚えていたらしい。
嫌な切り返しをされた。
「そう言われたら、返す言葉ないけどさー」
「───なんで、こんな男のこと、まだ好きなんだろう……。
きっぱり忘れていれば、鈴木さんに軽蔑されなかったかもしれないのに」
そのひとことに、カチンとくる。
誰が、好きになってくれって頼んだよ?
そんなに鈴木さんとやらがよければ、そいつに慰めてもらえばいいじゃねーか。
俺は缶チューハイをぐいと呷った。
うつむいて、鼻をすすっている静を見る。
……馬鹿らしくないか、この状況。
そう思って、俺は切りだした。
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