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しおりを挟むそのあと何回か、静と二人だけで会った。
特に、どこへ行くではなく──たいがいカラオケで──最後にキスして、その先も……みたいな展開で。
俺は、それを『浮気』だとは、考えてなかった。
自分でもよく解らない熱病に、侵されている感じだった。
そんなある日。
仕事あがりに食事しよう、と、朋美に誘われた。
朋美の方は、すっかりほったらかしの俺だったが、周囲は俺たちのことを『公認』していて。
普段あまり関わりのない、精肉部や鮮魚部のおばちゃん達にも、からかわれるほどだった。
朋美はどうやら、外堀から埋めてくるタイプの女だったらしい。
……静の時は、知る人ぞ知る、みたいだったのに。
「仲村さんと、付き合ってたんだって?」
コーラを飲みながら、朋美に上目遣いに見られ、俺は肩をすくめた。
「んー……ま、そうだけど。俺がフラレて終わったんだよ」
───なのに、時々二人だけで会って。
エッチして、別れてる。
付き合ってた頃と、一緒だ。
テーブルに置かれたカルボナーラの皿を、フォークでつつく。
……俺と静って、なんだ?
「ふーん。……いまでも、会ったりしてるの?」
「え?」
「嫌いになって別れたんじゃないんでしょ、桜井くんの方としては。
向こうから連絡あったりすれば、やっぱり、会いたくなるんじゃないの?」
騒がしいファミレスで、俺たちの座る一角だけが、急に温度が下がった気がした。
「何……言ってんだよ。いま、俺、お前と付き合ってるじゃん」
言いながら、そこで初めて実感する。
傍から見れば、俺のやってることって、二股以外のなにものでもないんだと……。
*
「……直和……いま、話せる?」
自分のしていることを自覚してから初めて、静の方から連絡があった。
その日、友人とばか騒ぎした後だった俺は、ケータイから聞こえてくる静の涙声に、酔いが一気に冷めてしまった。
理由を尋ねても、泣き続ける彼女に、埒があかず、それで彼女の自宅まで迎えに行った。
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