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❖グレイな恋人❖
異種接近交遊 Part.3『外皮』
しおりを挟む「大丈夫ですか?」
さすがに、体力的には2連続はキツかった。……いや、良かったけどね。
でも、シャワー浴びたらどっと疲れが出て、ちょっと眠い。
正直、ビールに手が伸びかけたけど、ライがバスルームから戻って来たら説明してもらわなきゃ!
と、思ってたから、ノンアル炭酸飲料で我慢してるところ。
「話……明日にします?」
「今日、いま説明して」
「……秋良さん、変なとこ頑固だなぁ」
手にした缶をテーブルに置いて、私の隣に腰を下ろしたライをにらむように見る。
明日は土曜日。ライは休み。私は有休消化中。
いまは日付けが変わる二十分ほど前。
二人とも、時間は十分あるはず。
「ん、と……。まず、僕の言い方が悪くて、秋良さんに誤解させたこと、謝りますね。ごめんなさい」
どこから話そうかな、と、言葉を選んだあと、ライが私に頭を下げる。
誤解? って、どういうことだろ?
訊きたい気持ちを抑えつつ、私はライの話の続きを待った。
「『外皮』って便宜上言いましたが、コレ、可視光線の屈折率を操作できる仕様になってて。この、秋良さんに見せた───じゃなくて、見られたファスナーが、実は起動スイッチなんです」
「起動スイッチ?」
「はい。調節機能というか……。実際、やってみせますね?」
自分の首の後ろに手を伸ばしたライがファスナーに触れ、カチッと小さな金属音が響く。
彼を見つめたままの私の目に、グラデーションが複雑に絡み合うような、そんな色彩の変化が起こった。
「……は? ウソでしょ……」
ライがいた、その場所に、ライと同じポーズをした存在。
黄褐色の毛並みと、ピンと真っすぐに立った耳。一対の茶色い瞳。
突き出た鼻と、その横にあるヒゲ。
「コレが、僕の真実の姿です。
───どう思います? 秋良さん」
短い毛に覆われた二の腕と、その先にある大きな手。見せつけるように、にゅっと飛び出す、肉食獣の爪先。
私は、私の心臓がこれでもかという勢いで激しく脈打つのを感じた。
「ごめん……! 吐きそう……!」
思わず、口もとを手で覆う。
だって、ナニ、その姿。それって、アレじゃん。
この地球の、この日本の、ヲタク界隈で言われるところの───。
「獣人じゃん!! え? 何科? ネコにもイヌにも見える!!」
興奮して、興奮しすぎて、心臓ヤバい。
やだ、死にそう!
頭がバカになってきた!
興奮冷めやらない私の前で、至って冷静に正体を明かしたライが自分の姿を見下ろす。
「一応、見た目はドーベルマンに近いのかな。でも、特性とか」
「ごめん! ギュッってしても、いい!?」
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