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第四章 過去が溶け出すアイスティー

親子鑑定【2】

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「バッカじゃないの!」
「えー? まいさんって、ホント僕に馬鹿馬鹿いうよね。ひょっとして、愛情の裏返し?」

ふふっと面白そうに笑って、大地は、さっきむいてあげた父さんからの土産
(ゴルフ場からの帰り道の直売所で買ったらしい)
の梨を口にする。

父さんは、明日早いからという理由で、先に寝室へ行ってしまった。

二人きりになったとたん、正気に戻った私は、大地に思いきり悪態をついた。

「あんたねぇ、今頃になってDNA鑑定したいとか抜かしやがるオヤジに、ムカッとしないわけ!?
『疑うなんてヒドイです』
くらい言ったって、いいと思うわよ!?」
「うーん……でも、実際に子供を産む女の人と違って、男の人ってたとえ結婚していても、自分の子だって実感わかない人、多いらしいよ?
だから、僕やあの人と離れて暮らしていたお父さんが、そう思うのは最もだと思うし。
僕としては、鑑定して血縁関係が認められて、それでお父さんが納得できるっていうなら、その方が良いと思うけど」
「……分かった。あんたがそこまで言うなら、もう何も言わない」

大きく息をつき、手にした楊枝ようじで梨をつつく。ふと思いつき、大地に問う。

「大地、血液型なに?」
「A型だけど」
「お母さんは?」
「A型だったよ」

うーん。
父さんがA型だから、やっぱり確率的には間違ってない。
これで大地がAB型とかだったら、そりゃ疑ったって構わないけどさー。

……あれ?
逆に鑑定なんて、必要なくなるのか? と、自問自答していると、興味津々といわんばかりに大地が私を見た。

「で、まいさんは何型?」
「私? Oよ。……ってか、私の血液型カンケーないじゃんか」
「関係なくないよ。僕が知りたいんだから」

なんの役にも立たない情報手に入れて、どうするってのよ……。

あきれる私をよそに、大地は、
「A型とO型なら相性バッチリだよね」
と、嬉しそうに笑っていた。

血液型占いなんか信じてるのかコイツ、と、思わなくもなかったけど。
大地の笑顔が、そんなつまらない事実によってでも見られるなら、それでもいいか、だなんて。
我ながら、ずいぶんと大地に毒されてきているなぁと、苦笑いが浮かんだ。

「……なに? まいさん、どうしたの?」

不思議そうに見返され、なんだか急に悔しくなって、大地の向こうずねを、思いきり蹴りとばしてやった。



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