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第一章 生暖かいアイスキャンディー

最初のあやまち【2】

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ハァーッ。気まずい……。

ベッドにうつ伏せになって、さっきの大地の顔を思いだす。あきらかにとまどって、対処に困っていた。

そりゃそうだ。
たとえ女の性欲処理の実態を知っていたとしても、現実を目の当たりにして、言えることなどないだろう。
逆に、私が大地の立場でも、そうだ。

もう一度、大きく溜息をつく。
もっとちゃんと、用心しておけば良かったと、後の祭り的なコトを考える。

───コン、コン。
部屋がノックされ、びくっとして扉の方に目をやった。

「あの……まいさん? もう寝ちゃった……?」

ためらいがちに開いたドアに、あわてて顔を伏せる。ベッドに大地が、近づいてくる気配がした。

「……あの、さ」

ベッドの端が沈む。大地がそこに腰を下ろしたのだろう。
痛いほどに視線を感じたけど、大地を振り返る気にはならなかった。

「まいさん。起きているんでしょう?」

私は寝たフリをした。それで何とかこの場をやり過ごそうとした。

だって、どうしろっていうの。何をどう話せっていうのよ?
歯切れの悪さから言って、こいつの話したいことは、どう考えても、生温かいアイスキャンディについてじゃんか。

ふいに、大地のおおげさな溜息が聞こえてきた。直後、指先が後頭部に触れたような気がして……その指が、えり足の髪を払いのけた。

───え?

うなじに唇が、押しあてられた。ゾクッとした悪寒に似た感覚が、全身を走る。

「だっ……!」
「───やっぱり、起きていたんだ」

覆い被さって、大地は私の顔を横からのぞきこんできた。ムッとしたような表情の大地と目が合った。
背中に、大地の片腕が乗っていて体が起こせない。

「大地!? 退いて、離してよ! いきなり何すんのっ!?」
「ヤダ。寝たふりしたお仕置き」
「ちょっと!」

ふっ……と耳元に息がかかったと思ったら、またしても、うなじにキスされた。
……や、められた。ちょっと待て……!

「大地、あんた、何してんのか───」
「解ってるよ。ちゃんとね。……さっき、まいさんが、お風呂でしてたコトも」
「なっ……」

カッと頭に血がのぼって、何を言っていいのか、分からなくなる。
大地は、そんな私に笑ってみせると、その唇で私の唇を……ふさいだ。

───サイアクだ。

何が最悪って、大地の唇の感触があまりにも心地よくて、思わず応えてしまったってコト。
もう何年もキスなんかしてないのに、しっかり肉体カラダが覚えているところが怖い。

それでなくとも、さっきまで持て余していた性的欲求は、まだ身体の奥でくすぶっていて。
拒むことをしらずに、身内の衝動があおられていくのが分かった。

「っ……は……、だ、いち……」
「何……? まいさん……?」

状況を楽しんでいるとしか思えない大地は、ふふっと笑って私の身体を抱き寄せた。
思わず理性を手放して身を任せたくなるくらい、大地の体温が気持ち良く感じられた。

かろうじて残っていた理性の欠片を拾い集めるようにして、ようやく口を開く。

「ちょっと……これは……マズイわよ……?
どう考えても……」

大地の腕の中にいるせいか、頼りない声での訴えしかでてこない。

近親相姦ってコトバが、頭の中でぐるぐると駆けめぐる。居心地の良さを感じている身体と相反して、めまいを起こしそうだった。

あぁ、どうしよう……。

「そう? 身体は、そうは言ってないみたいだけど」

図星をつかれて、羞恥しゅうちに頬が染まるのが分かった。

口先だけの抵抗だって、読まれてる。
呼吸が浅くなって、二の句が継げない。

「……意地悪なコト、言っちゃった……?」

笑い含みのささやきと共に、大地の手が、私のパジャマの上着の上で探るように動いた。

下着は、キャミソールしか付けていない。
ふくらみにたどり着いた手のひらが、薄い布地の上から、確かめるように優しく触れる。

指先に先端をキュッとつままれて、快感にあらがえずに、吐息を漏らしてしまう。

「ねぇ……イヤじゃない、よね……?」

問いかけに、熱くなった頬のまま、にらみ返す。が、身体はすでに反応してしまっていた。

突き飛ばすことも積極的に動くこともできずに、なすがまま、大地が私に与える愛撫を受け入れていた。

やがてショーツに伸ばされた指先が、撫で上げるように動いた。

「あ……もう結構、濡れてるんだね……」

ごまかしようのない事実の指摘と共に、ショーツを脱がされ、じかに触れられて……限界だった。

我慢できずに、声をあげてしまう。
呼吸が荒くなって、思考力は消え去り、身体で感じることがすべてとなった。

「───良かった。ちゃんと、感じてくれていて。……可愛いね、まいさん」

自分の指先を口に含み、大地は楽しげに笑う。
自らも下半身裸になると、私の耳元に唇を寄せた。

「アイスキャンディは、もういらないからね? いつでも、呼んで?」

四角いフィルムに入ったゴムをくわえ、得意げに片目をつむる。
手慣れた様子で装着すると、私の大腿を押し開きながら、中へと入ってきた。

大地の刻むリズムは、私の反応を見ながら、変わる。
足の位置を変えたり、挿入する角度を変えたりと、私の感じやすい部分を探っているようだった。

私の上で、大地は徐々にペースを上げていく。
艶っぽい声であえいで、私の瞳をのぞきこんできた。

「───きつくて、気持ちいいね、まいさんのなか……」

何も言えずに息をきらしている私に、大地は荒い息遣いのまま、くちづけた。その腕が、私の身体を抱きしめる。

互いの鼓動が、汗で湿ったTシャツ一枚を隔てて、高鳴っているのが分かった。



 ………私は、半分とはいえ、

 血の繋がっている弟と、

 その晩……

 シテ、しまったのだった………。



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