イロトリドリ

宝。

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if童話

もしも桃太郎が……参

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もし大事な用があるんなら、頭領のとこに行った方がええ。
そう言って年老いた鬼が指したのは、遥か高くそびえ立つ2つの塔……否、2つの針山と、その間に鎮座する大きな山。その正面には三日月型の窪みが斜めに2つ、左右対称の位置にある。遠くからこの3つの山を望むと、あたかも巨大な鬼の顔に見える。
「まさか……あの山の上に……?」
「ンなわけャねぇだろ?あんなとこまでいちいち登れるかってんだ」
「鬼だって疲れるんだぜ?人間さん」
……先程大笑いしていた鬼共にまた1つ常識を覆された。文献には鬼は疲れ知らずの、それこそバケモノじみた体力を持ち、金棒を振り回して村の家々を壊して回ったと書いてあった。
「……そういえばお前達、金棒はどうした?」
何度目ともしれない頭痛にこめかみを押さえながら聞くと、
「わしらみたいな下級の鬼が持っとる訳がなかろう?」
「金棒を持つことが許されんのは、それこそ頭領府に住んでる鬼くらいさ」
「左様。鬼に金棒という言葉は人里にもあろう?あれは本来、強ぅて位の高い鬼を指す言葉じゃて」
この島は私の常識を覆す為にあるのではなかろうか……
見ればお供の3匹も子鬼と打ち解けじゃれあっている。

はぁ……
ため息を1つ吐き、様々なことを諦める
「……もういい。とりあえずその頭領府?とやらに行こう。詳しい話はそちらで聞く」
「それならば案内が必要じゃろうて」
おいと鬼の集落の長が背後に声をかけると、すぐに2体の鬼が前に出てそれぞれこちらに軽く礼をした。
「こやつらはあんたさんのように、他から来た鬼を案内する役割でな?頭領府は勿論、そこまでの観光名所も紹介してくれるぞ?」
他にも鬼の住処があるとは……それにこんなところに観光名所など、楽しめる訳がないだろう……
「我々鬼はお前さん達を歓迎する。じゃがな?」
それまで朗らかな雰囲気だった老年の鬼は、目付きを鋭いモノに替え、こういった。
「お前さん達人間のいう鬼と、我々は全く別物・・・・じゃて。くれぐれもホンモノ・・・・には触れんようにな」
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