イロトリドリ

宝。

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if童話

もしも桃太郎が……壱

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おじいさん、おばあさん。必ず鬼を退治して、この村の財宝を取り返して来ます。

そう言って出てきた私の故郷。立派に育ててくれたおじいさんおばあさんへ、恩返しをするため。良くして頂いた村の方々との、約束のため。
前方に見えてきた鬼ヶ島をキッと睨み、決意新たに
「待っていろ鬼共……必ずこの桃太郎が……」

しばらくして鬼ヶ島へ上陸した私達は、周囲の気配を探る。いくら子分が3匹いたところで、奇襲されては対処が難しい。……周囲に鬼らしき気配はない。

私達は鬼ヶ島の中枢へ向かうべく、息を潜め、物陰に身を潜め、コソコソと移動を始めた。

果たして島の中心部から増えてきた家屋ーー鬼が家屋を建てることに驚いたがーーは、山側に移動するに連れて集落と言える様子を見せ始めた。それに対して私は、鬼を心から敵とは思えなくなっていた。

当たり前だが、鬼は一種類だけという訳では無い。赤鬼、青鬼、小鬼など、多岐にわたる。鬼は自然と生まれる訳でもない。人間と同じように、母親となる鬼が子を産む。

勿論それらを直接見てはいない。村の文献に描かれていた絵と、その横に記されていた解説を読んで知ったのだ。だが、そこには描かれていなかったモノ。先程から私を悩ませ続けている違和感が、兼ねてよりの疑問が、ソレを肯定しようとしてくる。

鬼の子が、その親の鬼等が、周りの鬼等が、皆一様に咲かせているモノ……

すなわち

"笑顔"
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