イロトリドリ

宝。

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その日僕は君を見た

満開に咲き誇る桜の元で

一片ひとひら一片ひとひら散ってゆく花びらに

寂寥感と悔恨の眼差しをむける君

僕は何も言えなかった

何も出来なかった

悔しかった

悲しかった

君に言いたかったことは沢山あった

でも、もう遅い

僕は真の絶望というものを知った

ただ、今になって気づいたんだ

君の瞳の奥に、散っては舞って

夢幻に咲き誇る桜の

美しさを讃える光があったことに

嗚呼ああ

君は



希望を抱いて散って逝ったんだね……



そこで目を覚ました僕は、天井を見上げながら目の両端が濡れているのに気づいた

人の夢とは儚いもの

とは誰が言ったか知らないが、実によく言えているものだ

桜は堂々と満開に咲き誇る姿も美しいとされるが、多くの人はそのセンチメンタルに散る姿にも心を奪われることだろう

なぜなら、ものの終わりというものは総じて

何かに繋がることなのだから……
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