上 下
70 / 114
乙女ゲームからエスケープ! 留学します!

魔法学

しおりを挟む
 「私は必修科目の魔法学、その総括をするジルケだ」

 そう担当の教員が最初に自己紹介するのは、他の必修科目でも変わらなかった。
 しかし、その担当の教員の他にも教員らしい大人が六人も並んでいる。
 教室は他の授業で使っているのと変わらない、小教室の人部屋だから、妙に圧迫感がある。
 特に前に並ぶ教員の一人が、昭和時代のスポ根漫画にでも登場しそうなマッチョ体育教師みたいな見た目なせいも相まって、何と言うか暑苦しい。

 「私は地属性を担当する、ゲルト=アーレだ、よろしく」
 ……うん、よくいるサラリーマン風の男性、としか。

 「水属性担当のクヌート=ベレントです。」
 こちらは一瞬性別がどちらか迷う中性的な美形さん。名前もそうだし、声が低いから男性なんだろうな。

 「火属性を担当致す、オスヴィン=ファーナーでこざる。基本どの属性にも言える事ではあるが、特に火は扱いを間違えると大事になりやすい。
 故に、巫山戯ることなく真面目に授業に取り組む様、心掛けて欲しい」
 ……おお、マッチョはやっぱり火属性……だけど口調はまるでサムライ。見た目はちょんまげでも裃でもなく、刀も下げてないからサムライ要素はゼロなんだけど。

 「風属性を担当するアウレール=フライ。今年教師になったばかりで慣れない事もあるけど、頑張るんで、よろしくね~♪」
 これは……また。なんか軟派なチャラ男臭のする男だな……。

 「光属性を担当するヘルミーナよ。光属性の子は珍しいから、お仕事があるのは久しぶりなの。よろしくね」
 こちらはおっとり天然系。光属性持ちって天然さんが多いとは聞くけど。

 「闇属性担当だ。……私も生徒を持つのは久々だな。今回も一人だと聞く。まぁ、仲良くやっていこうや」
 こちらは……姐さん、と思わず呼びたくなるような。そんな女性教師だ。

 「魔法学の基礎座学は基本私、ジルケが行う。これは全員共通で受けてもらうが、実技は属性の適性がなければ意味がない。
 よって、持っている属性と、その適性を見てどの教師にどれだけ時間を割くか。
 各個人、そして教師と相談しつつ決めていく。
 一応事前に属性については書類を提出して貰ってはいるが、担当教師の前で改めて測らせてもらう。
 これはあくまで今後の授業の進め方の参考にする為のもので、成績等には一切影響する事はない。
 あんまり気負わず、気を楽にして受けて欲しい」

 「よろしくお願いします。本日の鑑定を行います、ハッセ=ミュラーと申します。この学園都市の教会の司教をしております。
 エーテル石の売買のみならず、神や精霊に感謝申し上げたい際など、ご遠慮なくお気軽に教会に足を運んでいただけると幸いですが……。
 本日は授業の為の鑑定が優先でございますのでね、では前の席にお座りの方から順にどうぞ」

 最後の一人は……どうも衣装が……と思ったら神職の方だった。
 しかも、この国の六候爵の姓を名乗っている。
 セイントランド聖国では考えられない程に神職らしい穏やかな笑みを浮かべる丸メガネのおじさんは、見覚えのある玉を取り出し、教壇の上に置く。

 「では、まずはヘレナ=エーデンさん、どうぞ」
 一番前の、私と同じ列の私と逆の端に座っていた子の名が呼ばれる。

 「はい!」
 そして玉の上に手をかざす。
 「……はい、風属性、魔力量は中ですね」

 同じ様に順にクラスメイトの名が呼ばれ、鑑定結果を告げられている。
 基本、既知の結果が告げられている様で、自分の結果に驚く様な子は居ない。
 ただ、大半が一属性かニ属性持ちで、魔力量も多くて中と告げられている。
 その属性も大半が地水火風の四属性のどれかが大半。

 「フィリーネ=コルネリウスさん。……ああ、貴女はこちらの道具での鑑定をお願いします」

 そして、教壇の上の物とは別に、私の机の上にそれより少しサイズの大きな物を置いた。
 ……うん、セイントランド聖国のフライハイト大使館の教会で、普通の道具じゃ壊れるって言われたしな。
 こうなるのは覚悟していたけど、ロジーネ義姉さん達以外のクラスメイトからの視線が痛い……!

 「……はぁ、書類で事前に知らされていたのですけれど。
 この結果はやはり驚きますね」

 全属性、魔力量は特大と。
 告げたハッセさんの言葉に、クラスがどよめいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。

可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

申し訳ないけど、悪役令嬢から足を洗らわせてもらうよ!

甘寧
恋愛
この世界が小説の世界だと気づいたのは、5歳の頃だった。 その日、二つ年上の兄と水遊びをしていて、足を滑らせ溺れた。 その拍子に前世の記憶が凄まじい勢いで頭に入ってきた。 前世の私は東雲菜知という名の、極道だった。 父親の後を継ぎ、東雲組の頭として奮闘していたところ、組同士の抗争に巻き込まれ32年の生涯を終えた。 そしてここは、その当時読んでいた小説「愛は貴方のために~カナリヤが望む愛のカタチ~」の世界らしい。 組の頭が恋愛小説を読んでるなんてバレないよう、コソコソ隠れて読んだものだ。 この小説の中のミレーナは、とんだ悪役令嬢で学園に入学すると、皆に好かれているヒロインのカナリヤを妬み、とことん虐め、傷ものにさせようと刺客を送り込むなど、非道の限りを尽くし断罪され死刑にされる。 その悪役令嬢、ミレーナ・セルヴィロが今の私だ。 ──カタギの人間に手を出しちゃ、いけないねぇ。 昔の記憶が戻った以上、原作のようにはさせない。 原作を無理やり変えるんだ、もしかしたらヒロインがハッピーエンドにならないかもしれない。 それでも、私は悪役令嬢から足を洗う。 小説家になろうでも連載してます。 ※短編予定でしたが、長編に変更します。

異世界で神様に農園を任されました! 野菜に果物を育てて動物飼って気ままにスローライフで世界を救います。

彩世幻夜
恋愛
 エルフの様な超絶美形の神様アグリが管理する異世界、その神界に迷い人として異世界転移してしまった、OLユリ。  壊れかけの世界で、何も無い神界で農園を作って欲しいとお願いされ、野菜に果物を育てて料理に励む。  もふもふ達を飼い、ノアの箱舟の様に神様に保護されたアグリの世界の住人たちと恋愛したり友情を育みながら、スローライフを楽しむ。  これはそんな平穏(……?)な日常の物語。  2021/02/27 完結

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。 生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。 絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。 しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?

処理中です...