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乙女ゲームからエスケープ! 留学します!
フライハイト王国、途中下車の旅 〜出発地〜
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先日と同様、ランチとお茶を楽しんだ後の到着。今日も順調な航海だった様で。
港に待機していた四頭立ての大きな箱馬車二台と荷馬車が八台。
荷物は荷馬車へと私達の荷物が詰め込まれていく。
しかし、私達はと言えば。
「今夜はこの港で一泊して、明日朝一番の列車に乗るよ」
「列車……、ですか。馬車ではない乗り物……、興味ありますね」
「うん、荷物はそのまま直通で先にあちらの寮に届く様手配してある。俺達は途中食事や宿泊に途中下車して、学園都市につくのは明後日の夕方になるかな」
流石にまだこの世界の列車の速度は日本の普通列車並のようで、基本各駅停車らしく、そのくらいの時間はかかるらしい。
「けど、車で全行程行こうと思えば三日はかかるから。エーテル石代も馬鹿にならないし。
馬車だともっとかかるしね」
この港から今晩泊まる宿――これも先日泊まったのと同じホテルだと言う――までは馬車で数分。
荷物は多いし重いからだけど、私達は正直歩いた方が早くない?
「ご希望ならホテルの夕食の時間まで自由行動にしようか?
治安は問題ないけど、方向音痴とかはないよね?」
「私は大丈夫だと思うが」
「私は……普段街歩きなど致しませんから……。見知った屋敷や王宮で迷ったことはございませんが、大概侍女や侍従が共におりますから……、自分一人だと自信をを持って大丈夫とは言い切れないですわ……」
「私は、時折教会での奉仕活動などで出歩く機会はありましたが……。それも教会の者がついておりましたし。
確かに一人だと……」
「なら、アタシが案内するよ。こういうのにオトコ連れて行ってもシラケるだけだしね!」
「おい……」
「あ、ミヒャエルはフィリーネちゃんのエスコートしとけ。後で港の屋台の塩バニラシュークリーム差し入れでチャラにしてやろう」
「う、ぐ……!」
「じゃ、お嬢さん方、まずはカワイイ雑貨屋さん覗きに行こうか。見た目だけじゃなく使い勝手も良い文具なんかを扱ってる店があるんだよ」
「あー、フィリーネ。何か見たいものとかある?」
「うーん、欲望のままに言えば調理器具の店が見てみたいけど、今そんなの買っても無駄に荷物になるだけだし……。食材も無駄になりそうだからなぁ。夕食もこれからだし……」
これはなかなかに難易度の高いわね……。
と、悩もうとしたところへ、船に乗るので一時的に姿を隠していたファロンとウォルターが現れた。
頭の上にはルノー、肩の上にはルドルフも鎮座している。
「なら、教会へ行ってくれないか? ……そろそろ俺達の牽制も限界でさ。いい加減契約させろって煩いのが多くてな……」
「お買い物なら、その後で宝飾店などいかがです? 我らのエーテル石を使ったアクセサリーなど、身に付けていただけると嬉しいですね」
「いやいや、人族の女にアクセサリーを贈るのはその番の役だと聞いたぞ? 自らの髪や瞳の色の服飾品を贈るのがおヤクソクだと」
「ふむ、ならば土台とメインとなる宝石をこの者に選ばせ、我々はそれを引き立てる石を用意すれば良いのでは?」
おっと、私達そっちのけで勝手に精霊さんの間で私達の予定が決まっていくぞ?
しかもやっぱりヒロインチートルートからはどうしても逃れられない運命なワケ!?
「アクセサリー、か。確かに良いな」
あれ、ミヒャエルも乗り気……?
いや、近世ではアクセサリーなんて気にしてる余裕ができたのつい最近で。
侯爵家で用意されるものは元庶民の感覚からすると恐れ多くてつい“お借りしている物”という意識が抜けなくて。
そりゃ女の子だから宝飾品に興味が無い訳じゃぁないけれど。
「ならばあちらに輸入物を扱う良い宝石店が……」
と、ミヒャエルがウキウキしながら歩き出す。
あ、これもう逃げられないやつだ。
……そしてその晩、ホテルの夕飯時には私の胸元には銀の台座に鎮座した真珠を取り囲む六色のエーテル石が輝くネックレスがありましたとさ。
港に待機していた四頭立ての大きな箱馬車二台と荷馬車が八台。
荷物は荷馬車へと私達の荷物が詰め込まれていく。
しかし、私達はと言えば。
「今夜はこの港で一泊して、明日朝一番の列車に乗るよ」
「列車……、ですか。馬車ではない乗り物……、興味ありますね」
「うん、荷物はそのまま直通で先にあちらの寮に届く様手配してある。俺達は途中食事や宿泊に途中下車して、学園都市につくのは明後日の夕方になるかな」
流石にまだこの世界の列車の速度は日本の普通列車並のようで、基本各駅停車らしく、そのくらいの時間はかかるらしい。
「けど、車で全行程行こうと思えば三日はかかるから。エーテル石代も馬鹿にならないし。
馬車だともっとかかるしね」
この港から今晩泊まる宿――これも先日泊まったのと同じホテルだと言う――までは馬車で数分。
荷物は多いし重いからだけど、私達は正直歩いた方が早くない?
「ご希望ならホテルの夕食の時間まで自由行動にしようか?
治安は問題ないけど、方向音痴とかはないよね?」
「私は大丈夫だと思うが」
「私は……普段街歩きなど致しませんから……。見知った屋敷や王宮で迷ったことはございませんが、大概侍女や侍従が共におりますから……、自分一人だと自信をを持って大丈夫とは言い切れないですわ……」
「私は、時折教会での奉仕活動などで出歩く機会はありましたが……。それも教会の者がついておりましたし。
確かに一人だと……」
「なら、アタシが案内するよ。こういうのにオトコ連れて行ってもシラケるだけだしね!」
「おい……」
「あ、ミヒャエルはフィリーネちゃんのエスコートしとけ。後で港の屋台の塩バニラシュークリーム差し入れでチャラにしてやろう」
「う、ぐ……!」
「じゃ、お嬢さん方、まずはカワイイ雑貨屋さん覗きに行こうか。見た目だけじゃなく使い勝手も良い文具なんかを扱ってる店があるんだよ」
「あー、フィリーネ。何か見たいものとかある?」
「うーん、欲望のままに言えば調理器具の店が見てみたいけど、今そんなの買っても無駄に荷物になるだけだし……。食材も無駄になりそうだからなぁ。夕食もこれからだし……」
これはなかなかに難易度の高いわね……。
と、悩もうとしたところへ、船に乗るので一時的に姿を隠していたファロンとウォルターが現れた。
頭の上にはルノー、肩の上にはルドルフも鎮座している。
「なら、教会へ行ってくれないか? ……そろそろ俺達の牽制も限界でさ。いい加減契約させろって煩いのが多くてな……」
「お買い物なら、その後で宝飾店などいかがです? 我らのエーテル石を使ったアクセサリーなど、身に付けていただけると嬉しいですね」
「いやいや、人族の女にアクセサリーを贈るのはその番の役だと聞いたぞ? 自らの髪や瞳の色の服飾品を贈るのがおヤクソクだと」
「ふむ、ならば土台とメインとなる宝石をこの者に選ばせ、我々はそれを引き立てる石を用意すれば良いのでは?」
おっと、私達そっちのけで勝手に精霊さんの間で私達の予定が決まっていくぞ?
しかもやっぱりヒロインチートルートからはどうしても逃れられない運命なワケ!?
「アクセサリー、か。確かに良いな」
あれ、ミヒャエルも乗り気……?
いや、近世ではアクセサリーなんて気にしてる余裕ができたのつい最近で。
侯爵家で用意されるものは元庶民の感覚からすると恐れ多くてつい“お借りしている物”という意識が抜けなくて。
そりゃ女の子だから宝飾品に興味が無い訳じゃぁないけれど。
「ならばあちらに輸入物を扱う良い宝石店が……」
と、ミヒャエルがウキウキしながら歩き出す。
あ、これもう逃げられないやつだ。
……そしてその晩、ホテルの夕飯時には私の胸元には銀の台座に鎮座した真珠を取り囲む六色のエーテル石が輝くネックレスがありましたとさ。
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