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私、ざまぁ系ヒロインに転生してしまったかも……!?
大使館にお邪魔します。
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「合格! やった、合格だってルノー!」
屋敷に届けられた多くの郵便物の中から普段はゼロのはずの私宛の封書を、図書館に届けてくれたのはデリアではなく若い執事の一人だった。
今頃、使用人部屋でデリアも同じ装いの封書を受け取っているはず。
当然おロジーネお義姉様も。
開封した中に入っていたのは合格通知と、入学前に大使館に提出、あるいは学校に直接郵送する、必要のある書類が数枚入っていた。
まぁ、平たく言えば身元保証や学費の納付についてや制服含めたの学用品等の必要な物の一覧や購入予約の書類だ。
私達の場合、身元保証は、受験の為の一時入国の手続きの時に出した書類を元に新たに大使館が書類を作り、あちらへ送付してくれるそうで。
学費と購入予約書は注文表と必要金額を同封して送れば、期限に合わせてあちらで用意してくれるらしい。
これは、助かる。
因みに学費は額がそれなりなので、申し訳ないけれど侯爵家に出して貰うつもりであったが、入試の結果が良く、奨学金を受け取れる資格を得られた為に、学用品の費用を合わせても、エーテル石の売却で得られるお小遣いで賄える。
「なので。売却と手続き、お願いします。あ、売却した売上金は丸々納付する方向なので、今現金化する必要はありません。
むしろエーテル石のまま本国に送ってもらって、あちらで換金する方が良いですよね?」
基本、どこの国や地方でも教会に行けばエーテル石の換金は可能だ。
が、そのレートはそれぞれで異なる。
そもそもの国の通貨のレートも考慮する必要があり。
どう考えてもこのセイントランド聖国とフライハイト王国の国力の差を考えたら、こちらで換金したセイントランドの通貨をフライハイト王国の通貨に両替して送付するより、あちらで直接換金した方が損がない。
「確かに、受け取りました。直ぐにお預かり証明を発行しますね。
その他の書類も確認が取れ次第預かり証明を発行致しますので少々お待ち下さい」
書類を出しに大使館の受付に訪れたのだけれど、手続きに少し時間がかかるからと、個室の待合に通された。
少人数での話し合いの場に使われる小規模な部屋で、ソファセットが一組あるきりの部屋ではあったが、趣味の良い居心地の良い部屋だった。
部屋にはアロマがたかれ、カモミールの甘い香りが微かにする。
コーヒーテーブルの中央の一輪挿しに生けられているのもカモミールの花だった。
「カモミールのハーブティーはお嫌いではありませんか?」
「ええ、大丈夫よ」
「お連れ様も大丈夫でしょうか?」
「ああ。我々にとって人の食す飲食物は全て嗜好品であるからな。個々人によって好き嫌いは人以上にあるので一概には言えないが、少なくとも俺とコイツはハーブティーの類に特に好き嫌いはないぞ」
「強いて言えば、私は辛いものはあまり好みませんし、水気の少ないものや、口の中の水分を大量に失う類の物はあまり好みませんが……。
故意でなく、好意で出されたものなら、食しはせずともその好意は受け取りますよ」
「俺は氷菓はあまり得意ではないが……。そこは俺も同じだな。逆に好物だとしても悪意から出されれば当然俺等も怒るが」
「承知いたしました。ではお茶請けには水菓子を用意いたします。ちょうど良く、本国から美味しいりんごが入りましたので」
「お、お気遣いならさずとも……。今日は私一人で――いえ、精霊さんたちは居りますが、ロジーネお義姉様達はまた別に手続きに来ると思いますので、お構いなく……」
精霊達がとてつもなく目立つので、こうして別室に隔離された事はむしろありがたいが、あまりおもてなしされすぎるのも気疲れするというか……
「いえ、ミヒャエル坊ちゃまの指示ですので。
ふふふ、自分がいつも餌付けされているのが悔しかったのか、我が国の美味しいものをフィリーネ様にご賞味いただきたかった様ですよ?
あ、私が口を滑らせたことはどうかミヒャエル坊ちゃまにはご内密にお願いしますね?」
と。部屋付きのメイドにウィンクされた私は愛想笑いを引きつらせるしかなかったのだった……。
屋敷に届けられた多くの郵便物の中から普段はゼロのはずの私宛の封書を、図書館に届けてくれたのはデリアではなく若い執事の一人だった。
今頃、使用人部屋でデリアも同じ装いの封書を受け取っているはず。
当然おロジーネお義姉様も。
開封した中に入っていたのは合格通知と、入学前に大使館に提出、あるいは学校に直接郵送する、必要のある書類が数枚入っていた。
まぁ、平たく言えば身元保証や学費の納付についてや制服含めたの学用品等の必要な物の一覧や購入予約の書類だ。
私達の場合、身元保証は、受験の為の一時入国の手続きの時に出した書類を元に新たに大使館が書類を作り、あちらへ送付してくれるそうで。
学費と購入予約書は注文表と必要金額を同封して送れば、期限に合わせてあちらで用意してくれるらしい。
これは、助かる。
因みに学費は額がそれなりなので、申し訳ないけれど侯爵家に出して貰うつもりであったが、入試の結果が良く、奨学金を受け取れる資格を得られた為に、学用品の費用を合わせても、エーテル石の売却で得られるお小遣いで賄える。
「なので。売却と手続き、お願いします。あ、売却した売上金は丸々納付する方向なので、今現金化する必要はありません。
むしろエーテル石のまま本国に送ってもらって、あちらで換金する方が良いですよね?」
基本、どこの国や地方でも教会に行けばエーテル石の換金は可能だ。
が、そのレートはそれぞれで異なる。
そもそもの国の通貨のレートも考慮する必要があり。
どう考えてもこのセイントランド聖国とフライハイト王国の国力の差を考えたら、こちらで換金したセイントランドの通貨をフライハイト王国の通貨に両替して送付するより、あちらで直接換金した方が損がない。
「確かに、受け取りました。直ぐにお預かり証明を発行しますね。
その他の書類も確認が取れ次第預かり証明を発行致しますので少々お待ち下さい」
書類を出しに大使館の受付に訪れたのだけれど、手続きに少し時間がかかるからと、個室の待合に通された。
少人数での話し合いの場に使われる小規模な部屋で、ソファセットが一組あるきりの部屋ではあったが、趣味の良い居心地の良い部屋だった。
部屋にはアロマがたかれ、カモミールの甘い香りが微かにする。
コーヒーテーブルの中央の一輪挿しに生けられているのもカモミールの花だった。
「カモミールのハーブティーはお嫌いではありませんか?」
「ええ、大丈夫よ」
「お連れ様も大丈夫でしょうか?」
「ああ。我々にとって人の食す飲食物は全て嗜好品であるからな。個々人によって好き嫌いは人以上にあるので一概には言えないが、少なくとも俺とコイツはハーブティーの類に特に好き嫌いはないぞ」
「強いて言えば、私は辛いものはあまり好みませんし、水気の少ないものや、口の中の水分を大量に失う類の物はあまり好みませんが……。
故意でなく、好意で出されたものなら、食しはせずともその好意は受け取りますよ」
「俺は氷菓はあまり得意ではないが……。そこは俺も同じだな。逆に好物だとしても悪意から出されれば当然俺等も怒るが」
「承知いたしました。ではお茶請けには水菓子を用意いたします。ちょうど良く、本国から美味しいりんごが入りましたので」
「お、お気遣いならさずとも……。今日は私一人で――いえ、精霊さんたちは居りますが、ロジーネお義姉様達はまた別に手続きに来ると思いますので、お構いなく……」
精霊達がとてつもなく目立つので、こうして別室に隔離された事はむしろありがたいが、あまりおもてなしされすぎるのも気疲れするというか……
「いえ、ミヒャエル坊ちゃまの指示ですので。
ふふふ、自分がいつも餌付けされているのが悔しかったのか、我が国の美味しいものをフィリーネ様にご賞味いただきたかった様ですよ?
あ、私が口を滑らせたことはどうかミヒャエル坊ちゃまにはご内密にお願いしますね?」
と。部屋付きのメイドにウィンクされた私は愛想笑いを引きつらせるしかなかったのだった……。
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