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私、ざまぁ系ヒロインに転生してしまったかも……!?

素直に頷けません。

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 この国、セイントランド聖国に、平民が通える学校は一つだけ。それも裕福な商家の子息等のごく稀な恵まれた子供だけが通える学校でも教えるのは少し高度な“読み書き計算”と簡単な地理、歴史、その他社会常識といった教養科目程度。

 それ以上の教育を受けるならば、その学校で相当優秀な成績を残し、推薦枠を勝ち取るしかない。

 この国の貴族と、その選ばれ抜かれた幸運な平民だけが通える『学園』。
 平民がこの学校に通えることは『誉れ』とされるが、貴族でこの学園に通えないのは致命的。
 そしてその入学年齢である15歳が近づいているのだから、近々その話が出てくるのは分かっていた。

 でも、もう少しだけ目を逸らしていたかった。

 お約束の様な、乙女ゲームの舞台となる学園に入学すると言う事は、私にとって複数の意味で破滅へのカウントダウンの始まりだから。

 だからこそ必死に回避に動いているというのに。

 「ロジーネ、フィリーネ。それで、どうなのだ進捗は?」

 ……学園に入学するのには、形ばかりの試験を受ける必要がある。
 あくまで形式的なもので、貴族として当たり前の教養を身に付けていればある程度の点を取れる――取れずに入学不可となればそれは貴族として不適格と見做される――のだが、入学後のクラス分けにこの試験の結果が反映される。

 学園卒業後も、上位クラスだったか下位クラスだったかは大きく響いてくる。
 宰相子息の婚約者のお義姉様は勿論、政略結婚の駒としての価値を可能な限り上げたい侯爵としては、私の事も放っておいてはくれない。

 「私の方はつつがなく。フィリーネの方は、入学するのには問題ないかと。……クラス分けに関してはまだ分かりませんが。この短期間での結果としては上々かと」

 「ふん、薄汚い小娘には過ぎたる教育を与えてやっているというのにその程度の結果しか残せないとは、な。
 所詮は娼婦の娘か。
 おい、今のままならどこぞの死にかけジジイの後妻にでも押し込むからな。
 もう少しマシな相手を望むなら、今以上に精進する事だな」

 ……ははは。このおっちゃん変わらんなぁ。

 最初は憎々しげに私を睨みつけてきたお義母様も、私が頑張ったら少し当たりが柔らかくなったし。
 最初は喧嘩腰だったお義姉様はツンデレなだけの面倒見の良い良義姉だったのに。
 使用人だって最初は冷たかったけど。
 今でも平民の小娘と蔑む人も居るけど、あからさまな嫌がらせをする人は私の側には居なくなったのに。

 ……この世界にはDNA鑑定なんて無いから、この義父が実父かどうかなんて分からないけど。
 一応私の産みの母である妓女の上客だったのは間違いない。

 どこから報告が行ったか知らないけど、私が大妖精と契約していると知ったこの男が娼館にたんまり身請け金を払って私を買ったこの男は。
 その後の教育費も含め払った金の回収が出来ないとなれば、いとも容易く人買いに売りつけるだろう。
 金になるなら売り先が鉱山奴隷だろうと娼婦だろうと気にする男ではない。

 だけど。
 それでも学園へ入るための努力をする事について、素直に「はい」とは言いたくない。
 貴族としての振る舞いや教養を身に付ける事に対しての努力だったら素直に「はい」と言えたものを。

 はぁ。
 今日は当主も席に着く晩餐だからと何時もより更に豪華なご馳走だったというのに。
 あまり味わう気分になれないまま、食事が終了してしまった。

 「旦那様、今夜のご予定は?」
 食後のワインを嗜みながら、義母が尋ねる。

 ……家族水入らずの団らんに、私はお邪魔かしら?
 そっと退室すべき?
 等とそわそわ辺りの空気を読もうと試み――

 「すぐに出る。おい、馬車を用意させろ」

 ……おおっと、久々に帰って来たのに一晩も居ないまま出掛けるらしい。
 この人、侯爵の仕事をいつしてるんだろう?
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