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私、ざまぁ系ヒロインに転生してしまったかも……!?

お勉強どころじゃなさそうです。

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 ……何か今、恐ろしい台詞が聞こえたんだけど。

 「あの、第二王子殿下。フィリーネは父が――コルネリウス侯爵家当主が、侯爵家の利益になる政略結婚をさせる為に引き取った娘です。
 せめて側妃であれば父も喜んで差し出すでしょうが、妾妃扱いでは我が侯爵家に利益がありません。
 既にこの娘に政略結婚に耐え得る教育を施す等、当家で負った負担以上の利益がなければ。
 ……陛下や王太子殿下の命令とあれば、侯爵家ごときでは逆らえませんが、第二王子殿下の申し出であれば、父は断るでしょう。
 それでも、フィリーネを無理やり召し上げる事は可能でしょうが、我が侯爵家との遺恨は避けられないものとお覚悟の上でお願い致しますわ」

 トビアスのモラハラ攻撃に顔色を悪くしながらも、お義姉様が淡々と釘を刺す。


「ふん、城に滅多に出仕もしない田舎領主に大した力など無いだろうに……。
 とは言え殿下、侯爵の人脈によって田舎領主に徒党を組まれると少々厄介かもしれません。
 こんな下賤の者為にそのようなリスクを冒すのは拙速に過ぎるかと」

 ……あの義父にそんなもの人脈ある訳無いよ。
 そう心の中で呟くも、その言葉は口には出さずに押し止める。

「殿下、本日の目的は私達の夜会デビューに向けた練習をするため、つまりダンス等パートナー無しには始まりませんわ。
 その席に突然呼び出したのはこちらなのです。
 パートナー無しで恥をかくのは当人もそうですが、家の名にも傷が付きかねません。
 特に本日の席には他ならぬ貴方がいらっしゃるのです、フリードリヒ殿下。
 それを知ってお怒りになるのはロジーネ様でなく侯爵閣下ですわ。
 それを避ける為に間に合せのパートナーの身元確認が疎かになったのでしょう。
 確かにそれは侯爵家との不手際でしょうが、売国奴とまで罵るのは行き過ぎておりますわ」

 未だ興奮の治まらないブルーノ様を除く二人は、酷く詰まらない物を見る目で私とミヒャエルを不躾に眺め回す。

 「まぁ、良いでしょう。後で侯爵家には二度とこの様な不始末が無いよう苦言を呈さなければなりませんが、この場は一先ず。
 この目障りな者共をつまみ出して手打ちにしましょう。
 国籍云々よりも人モドキと同じ空気をこれ以上吸うのは耐えられそうにありません」

 「何だかんだ面倒そうだしなぁ。もっと可愛い、抱き甲斐のある女はいくらでも居るしな」

 「……こちらで急な招待をしておいて大変申し訳無いのですが――」
 「いや、フィリーネとダンスを踊れなくなったのは残念だが、僕もこれ以上フィリーネをここに置いておきたくはないしね。
 先に言った通り、僕はこの場での事に文句を言うつもりはない、……けど、父の対応は国の対応になるから、どう言う対処を取るかは僕も分からない。
 ……君達の苦労が忍ばれるけど、せめてご武運くらいは祈らせてくれ」
 「……ありがとう、ございます。
 せめて侯爵家への送りの馬車の手配はさせて下さいませ」

 こうして。
 何一つお勉強する事なく、私達二人は帰途につく事になった訳だが。

 「いやぁ、色々噂は聞いてたけど。聞きしに勝る御仁だったね、彼らは」
 うん、ミヒャエル。そこは私も同意するけどさ。

 「ミヒャエル、貴方はそう笑うけど。
 私にとっちゃ笑い事じゃ済まないのよ。
 あんな事故物件攻略したいなんて微塵も思わないけど、もし本番になって強制力とかあったりしたら……!
 あんな男共掴まされる上に断罪されるとかホントありえないけど!」

 「その強制力? とか言うのは良く分かんないけどさ。
 一応既に政略結婚が決まってるから彼女達が居るんだろう?
 ここはお伽噺の世界じゃなく、現実リアルだよ?
 あのお坊っちゃん達の一存でどうにかできる話かな?」

 まぁ、常識的に考えれば無理だろうね。

 「……だけどさ。あの三人組のトンチンカンぶりを見ても大丈夫だと言い切れる?
 私は無理よ。
 しかも現実では無理そうでも小説の中ではありきたりなお話だもの。
 どう転ぶか分からなくて戦々恐々としてるのよ、私は」

 「……そこを突かれるとなぁ。普通に考えれば無理なの分かるはずなんだけど。
 その普通が少なくとも今日は通じなかったからな。
 ……残り数年で上手く矯正されれば――」

 「残念だけど、そんな宛があるなら、お義姉様が達がとっくに試して成功させているはずよ。
 お義姉様にとっては私以上に死活問題なんだから」

 私の場合はまだ、将来の可能性の段階だけど、お義姉様には既にカウントダウン中の現実に他ならないんだから。
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