17 / 114
私、ざまぁ系ヒロインに転生してしまったかも……!?
お勉強どころじゃなさそうです。
しおりを挟む
……何か今、恐ろしい台詞が聞こえたんだけど。
「あの、第二王子殿下。フィリーネは父が――コルネリウス侯爵家当主が、侯爵家の利益になる政略結婚をさせる為に引き取った娘です。
せめて側妃であれば父も喜んで差し出すでしょうが、妾妃扱いでは我が侯爵家に利益がありません。
既にこの娘に政略結婚に耐え得る教育を施す等、当家で負った負担以上の利益がなければ。
……陛下や王太子殿下の命令とあれば、侯爵家ごときでは逆らえませんが、第二王子殿下の申し出であれば、父は断るでしょう。
それでも、フィリーネを無理やり召し上げる事は可能でしょうが、我が侯爵家との遺恨は避けられないものとお覚悟の上でお願い致しますわ」
トビアスのモラハラ攻撃に顔色を悪くしながらも、お義姉様が淡々と釘を刺す。
「ふん、城に滅多に出仕もしない田舎領主に大した力など無いだろうに……。
とは言え殿下、侯爵の人脈によって田舎領主に徒党を組まれると少々厄介かもしれません。
こんな下賤の者為にそのようなリスクを冒すのは拙速に過ぎるかと」
……あの義父にそんなものある訳無いよ。
そう心の中で呟くも、その言葉は口には出さずに押し止める。
「殿下、本日の目的は私達の夜会デビューに向けた練習をするため、つまりダンス等パートナー無しには始まりませんわ。
その席に突然呼び出したのはこちらなのです。
パートナー無しで恥をかくのは当人もそうですが、家の名にも傷が付きかねません。
特に本日の席には他ならぬ貴方がいらっしゃるのです、フリードリヒ殿下。
それを知ってお怒りになるのはロジーネ様でなく侯爵閣下ですわ。
それを避ける為に間に合せのパートナーの身元確認が疎かになったのでしょう。
確かにそれは侯爵家との不手際でしょうが、売国奴とまで罵るのは行き過ぎておりますわ」
未だ興奮の治まらないブルーノ様を除く二人は、酷く詰まらない物を見る目で私とミヒャエルを不躾に眺め回す。
「まぁ、良いでしょう。後で侯爵家には二度とこの様な不始末が無いよう苦言を呈さなければなりませんが、この場は一先ず。
この目障りな者共をつまみ出して手打ちにしましょう。
国籍云々よりも人モドキと同じ空気をこれ以上吸うのは耐えられそうにありません」
「何だかんだ面倒そうだしなぁ。もっと可愛い、抱き甲斐のある女はいくらでも居るしな」
「……こちらで急な招待をしておいて大変申し訳無いのですが――」
「いや、フィリーネとダンスを踊れなくなったのは残念だが、僕もこれ以上フィリーネをここに置いておきたくはないしね。
先に言った通り、僕はこの場での事に文句を言うつもりはない、……けど、父の対応は国の対応になるから、どう言う対処を取るかは僕も分からない。
……君達の苦労が忍ばれるけど、せめてご武運くらいは祈らせてくれ」
「……ありがとう、ございます。
せめて侯爵家への送りの馬車の手配はさせて下さいませ」
こうして。
何一つお勉強する事なく、私達二人は帰途につく事になった訳だが。
「いやぁ、色々噂は聞いてたけど。聞きしに勝る御仁だったね、彼らは」
うん、ミヒャエル。そこは私も同意するけどさ。
「ミヒャエル、貴方はそう笑うけど。
私にとっちゃ笑い事じゃ済まないのよ。
あんな事故物件攻略したいなんて微塵も思わないけど、もし本番になって強制力とかあったりしたら……!
あんな男共掴まされる上に断罪されるとかホントありえないけど!」
「その強制力? とか言うのは良く分かんないけどさ。
一応既に政略結婚が決まってるから彼女達が居るんだろう?
ここはお伽噺の世界じゃなく、現実だよ?
あのお坊っちゃん達の一存でどうにかできる話かな?」
まぁ、常識的に考えれば無理だろうね。
「……だけどさ。あの三人組のトンチンカンぶりを見ても大丈夫だと言い切れる?
私は無理よ。
しかも現実では無理そうでも小説の中ではありきたりなお話だもの。
どう転ぶか分からなくて戦々恐々としてるのよ、私は」
「……そこを突かれるとなぁ。普通に考えれば無理なの分かるはずなんだけど。
その普通が少なくとも今日は通じなかったからな。
……残り数年で上手く矯正されれば――」
「残念だけど、そんな宛があるなら、お義姉様が達がとっくに試して成功させているはずよ。
お義姉様にとっては私以上に死活問題なんだから」
私の場合はまだ、将来の可能性の段階だけど、お義姉様には既にカウントダウン中の現実に他ならないんだから。
「あの、第二王子殿下。フィリーネは父が――コルネリウス侯爵家当主が、侯爵家の利益になる政略結婚をさせる為に引き取った娘です。
せめて側妃であれば父も喜んで差し出すでしょうが、妾妃扱いでは我が侯爵家に利益がありません。
既にこの娘に政略結婚に耐え得る教育を施す等、当家で負った負担以上の利益がなければ。
……陛下や王太子殿下の命令とあれば、侯爵家ごときでは逆らえませんが、第二王子殿下の申し出であれば、父は断るでしょう。
それでも、フィリーネを無理やり召し上げる事は可能でしょうが、我が侯爵家との遺恨は避けられないものとお覚悟の上でお願い致しますわ」
トビアスのモラハラ攻撃に顔色を悪くしながらも、お義姉様が淡々と釘を刺す。
「ふん、城に滅多に出仕もしない田舎領主に大した力など無いだろうに……。
とは言え殿下、侯爵の人脈によって田舎領主に徒党を組まれると少々厄介かもしれません。
こんな下賤の者為にそのようなリスクを冒すのは拙速に過ぎるかと」
……あの義父にそんなものある訳無いよ。
そう心の中で呟くも、その言葉は口には出さずに押し止める。
「殿下、本日の目的は私達の夜会デビューに向けた練習をするため、つまりダンス等パートナー無しには始まりませんわ。
その席に突然呼び出したのはこちらなのです。
パートナー無しで恥をかくのは当人もそうですが、家の名にも傷が付きかねません。
特に本日の席には他ならぬ貴方がいらっしゃるのです、フリードリヒ殿下。
それを知ってお怒りになるのはロジーネ様でなく侯爵閣下ですわ。
それを避ける為に間に合せのパートナーの身元確認が疎かになったのでしょう。
確かにそれは侯爵家との不手際でしょうが、売国奴とまで罵るのは行き過ぎておりますわ」
未だ興奮の治まらないブルーノ様を除く二人は、酷く詰まらない物を見る目で私とミヒャエルを不躾に眺め回す。
「まぁ、良いでしょう。後で侯爵家には二度とこの様な不始末が無いよう苦言を呈さなければなりませんが、この場は一先ず。
この目障りな者共をつまみ出して手打ちにしましょう。
国籍云々よりも人モドキと同じ空気をこれ以上吸うのは耐えられそうにありません」
「何だかんだ面倒そうだしなぁ。もっと可愛い、抱き甲斐のある女はいくらでも居るしな」
「……こちらで急な招待をしておいて大変申し訳無いのですが――」
「いや、フィリーネとダンスを踊れなくなったのは残念だが、僕もこれ以上フィリーネをここに置いておきたくはないしね。
先に言った通り、僕はこの場での事に文句を言うつもりはない、……けど、父の対応は国の対応になるから、どう言う対処を取るかは僕も分からない。
……君達の苦労が忍ばれるけど、せめてご武運くらいは祈らせてくれ」
「……ありがとう、ございます。
せめて侯爵家への送りの馬車の手配はさせて下さいませ」
こうして。
何一つお勉強する事なく、私達二人は帰途につく事になった訳だが。
「いやぁ、色々噂は聞いてたけど。聞きしに勝る御仁だったね、彼らは」
うん、ミヒャエル。そこは私も同意するけどさ。
「ミヒャエル、貴方はそう笑うけど。
私にとっちゃ笑い事じゃ済まないのよ。
あんな事故物件攻略したいなんて微塵も思わないけど、もし本番になって強制力とかあったりしたら……!
あんな男共掴まされる上に断罪されるとかホントありえないけど!」
「その強制力? とか言うのは良く分かんないけどさ。
一応既に政略結婚が決まってるから彼女達が居るんだろう?
ここはお伽噺の世界じゃなく、現実だよ?
あのお坊っちゃん達の一存でどうにかできる話かな?」
まぁ、常識的に考えれば無理だろうね。
「……だけどさ。あの三人組のトンチンカンぶりを見ても大丈夫だと言い切れる?
私は無理よ。
しかも現実では無理そうでも小説の中ではありきたりなお話だもの。
どう転ぶか分からなくて戦々恐々としてるのよ、私は」
「……そこを突かれるとなぁ。普通に考えれば無理なの分かるはずなんだけど。
その普通が少なくとも今日は通じなかったからな。
……残り数年で上手く矯正されれば――」
「残念だけど、そんな宛があるなら、お義姉様が達がとっくに試して成功させているはずよ。
お義姉様にとっては私以上に死活問題なんだから」
私の場合はまだ、将来の可能性の段階だけど、お義姉様には既にカウントダウン中の現実に他ならないんだから。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
申し訳ないけど、悪役令嬢から足を洗らわせてもらうよ!
甘寧
恋愛
この世界が小説の世界だと気づいたのは、5歳の頃だった。
その日、二つ年上の兄と水遊びをしていて、足を滑らせ溺れた。
その拍子に前世の記憶が凄まじい勢いで頭に入ってきた。
前世の私は東雲菜知という名の、極道だった。
父親の後を継ぎ、東雲組の頭として奮闘していたところ、組同士の抗争に巻き込まれ32年の生涯を終えた。
そしてここは、その当時読んでいた小説「愛は貴方のために~カナリヤが望む愛のカタチ~」の世界らしい。
組の頭が恋愛小説を読んでるなんてバレないよう、コソコソ隠れて読んだものだ。
この小説の中のミレーナは、とんだ悪役令嬢で学園に入学すると、皆に好かれているヒロインのカナリヤを妬み、とことん虐め、傷ものにさせようと刺客を送り込むなど、非道の限りを尽くし断罪され死刑にされる。
その悪役令嬢、ミレーナ・セルヴィロが今の私だ。
──カタギの人間に手を出しちゃ、いけないねぇ。
昔の記憶が戻った以上、原作のようにはさせない。
原作を無理やり変えるんだ、もしかしたらヒロインがハッピーエンドにならないかもしれない。
それでも、私は悪役令嬢から足を洗う。
小説家になろうでも連載してます。
※短編予定でしたが、長編に変更します。
異世界で神様に農園を任されました! 野菜に果物を育てて動物飼って気ままにスローライフで世界を救います。
彩世幻夜
恋愛
エルフの様な超絶美形の神様アグリが管理する異世界、その神界に迷い人として異世界転移してしまった、OLユリ。
壊れかけの世界で、何も無い神界で農園を作って欲しいとお願いされ、野菜に果物を育てて料理に励む。
もふもふ達を飼い、ノアの箱舟の様に神様に保護されたアグリの世界の住人たちと恋愛したり友情を育みながら、スローライフを楽しむ。
これはそんな平穏(……?)な日常の物語。
2021/02/27 完結
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる