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勇者の初仕事

疑念

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    打つ。
    打って打って打って。
    ひたすら指を動かし打ちまくる。
    ……ああ!    もうっ、何で私がこんな事――!
    ほんの5分前の事。
    戦々恐々としていた私の前に現れた画面は。
    「はははは!    課長に押し付けられたデータ入力作業に後輩のフォローで入った資料作り!    鍛え抜かれた私の敵ではないわー!」
    ああ、テンションが何かヤバイ事になってる自覚はあるけど止まんない。
    何コレ、タイピングソフト?
    ……ローマ字入力の日本語仕様のゲームだ。
    何、私遊んでんのって?
    だってこのソフトしか動かんのよ、コレ。
    何とかデスクトップ画面に戻してそれらしいシステムを探そうとしたけど、このゲームを始めろボタン以外何も反応しない。
    ――で。試しに一度プレイしたところ。
    ステージ1をクリアしたら、システムロックが一つ外れたと告知ウィンドウが現れたから。
    こんなんで良いのかとイライラしつつもこうして画面の向こうのモンスター相手に戦っているのだ。
    ……外でマジモンの魔物と戦い続けている王子達をそのままにして。
    分かる?    この居心地の悪さが!
    これで何の成果も得られなかったらどうしようかと結局は戦々恐々としなきゃいけないこの状況!
    しかも嫌な予感の確信が深まるこの仕様……。
    全ての不満をキーボードに叩き付け。
    全4ステージを20分かけてクリア。
    システムロック解除のウィンドウを閉じると、画面にボタンが現れる。
    システムを止めるかと問うそれを迷わずクリック。
    シン、と静まり返るシステム。
    「――幸守さん、多分これここのは止まったと思うんですが……」
    けれど、外には相変わらず多くの魔物が居て、戦う三人――特に盾役無しに一人で前線で戦う和貴の周囲の雪は、魔物が撒き散らすタールの黒ばかりでなく血痕が点々と散っている。
    「……ええ。間違いありません、マナの吸引が止まりました。――となればここはもう長居は無用。勇者どの、すぐに車にお乗り下さい、撤退致しますぞ!」
    「え、この魔物達は……!?」
    「残りはウチの部下達に狩らせますよ。もう新たに魔物は生まれない。後は殲滅し浄化するのみとあれば部下達で事足りますからな!」
    幸守は声を張り上げ、前の3人に撤退を指示。
    自分は御者席に飛び乗った。
    私も慌てて乗り込む。
    また猛スピードで駆ける馬車の中で一人激しく揺さぶられながら、あの不可解なモノについて考える。
     ……数字の筆跡なんて、余程特徴的な癖字でもなければ、プロにしな見分けなんかつかない、よね?
    気のせい……だよね?
    もしも。これが奴らの因果と言うならば。
    「私……女神ばかり責められない……?」
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