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勇者の初仕事

取引

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    「取引……?」
    「そう。……ここで生きるなら勇者するしかなくて。私が恨み節聞かせてやるべきが女神で。彼女なら異世界を越える力を持つと言うなら。あんた達が本当に王子として誇りと責任を持つと言うなら――」
    私は覚悟を決めてその提案を言の葉に乗せる。
    「私が勇者としての責務を果たした暁には、私が女神に元の世界へ帰すよう交渉するのに助力して欲しい。――女神に逆らえとは言わない。ただ、その間の私の命と生活――衣食住の保証をして欲しい」
    「……お前、俺達を何だと思ってるんだ。まさか用が済んだからって無一文身一つで追い出すクズと一緒にするな」
    和貴が憤慨する。
    「流石に一生賓客待遇は難しいですが、職と住まいはこちらで手配致しますし、生活が安定するまでの支援は当然でしょう」
    「……どこで預かるとかの話は聞いてないから、多分皇子様のとこか、どっか気に入った国があったなら受け入れるのは構わないし?」
    「……これまで何一つ私の言い分が通らなかったんだもの、疑うのは当然でしょう」
    ……まだ釈然としない部分も多いけど。一応クズの極みではない様子。
    「まあ、こっちも勇者としての仕事はして貰わなきゃ困る。確約が欲しいならこの血にかけて誓おう。――その取引、承知した」
    「幸いですな。ちょうど明日にも目的地に到着予定でしたからなぁ」
    「――その、目的地って?」
    「この地を蝕む刺。この地の恵みを奪い、奴らの土地を富ませる忌まわしきモノ。全部で四つあるそれを全て破壊する。奇っ怪な術で守られ俺達では触れられすら出来ないそれを。周囲は汚染され尽くし魔獣の棲みかで人間は近づくことすら出来ないそれを」
    「我が国は冬の国。しかし、本来はこんなにも吹雪吹きすさぶ極寒の地では無かったと。過去を記す歴史書には冬でも育つ作物の記述も、厚い氷の下より小魚を食す記述も見つかっておるのです」
    「奴らが奪うマナは大地を満たす生命の源の力。それを失えば弱いモノから過剰に淘汰され、やがては強きモノすらも飢えさせる」
    「その上アレが吐き出す毒の気に当てられた獣は魔獣と化し、正常な生命を食い荒らし、大地の疲弊を加速させ、獣達の凶暴化も招いている」
    「正に諸悪の根元なんだよね~」
    つまり。少なくとも四回は代償を払って女神の力を使う必要がある、と。
    ……でも。
    「――ぶっつけ本番も怖いんですけど」
    「……だねぇ。女神の御力がどんなもんか誰も分からないってのは結構な不安要素だもんねぇ」
    「ふむ。奥深くまで踏み込む前に軽く魔獣相手に実地訓練を致しましょうか」
    「では。選んでいただきましょうか。最初に誰と組むのかを」
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