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2章 仕事仲間が出来ました。
第3話 助っ人召喚!
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「ユリさん、準備はよろしいですか?」
アグリ様の確認の問い。
それに私は「勿論です」と自信を持って答える。
家も用意したし、受け入れの準備は整え終わっている。
後は来た当人と上手くやっていけるかどうか。
こればかりは相手次第だろう。
私も努力の必要があるのは理解している。
「――では、始めます」
そこはまだ、畑も何も作っていない元の草原の一角。
アグリ様は太くてゴツゴツした木の杖――古の魔女が持ってそうな杖をもって何やら唱え始める。
私には全く理解できないけど。
やがて草原に青白く魔法陣が浮かび上がる。
光を放つ魔法陣の中、不意に人影が現れる。
なかなかの長身に細身の影。
徐々に影に色が付き、光が収まる頃には短髪の黒髪に金眼の青年が立っていた。
「ここ、は……」
混乱し辺りを見回していた青年は、まずアグリ様を見つけてハッとした表情を浮かべた。
「ま、まさか……唯一神アグリ様……?」
「はい、そうですよ」
にっこり笑ってアグリ様が答えると、なぜか青年は絶望した表情で崩れ落ち、リアルorzでダバダバ涙流して泣き出した。
「そんな……、まさか神の裁きの間か……? つまり私の方が間違っていたのか……?」
「いいえ、たしかに私は神アグリですが、ここは裁きの間ではありませんよ。
……ああ、ユリさんの為に解説しますが、裁きの間とは下界の法では裁けない程の悪行を行った者を私が呼び出して相応しい罰を与えるのです。
が、現状ではそれらを全て呼び出していたら、寿命という概念の無い神である私でも時間が足りませんから。
ですから、数少ない裁きの必要の無い貴方を召喚したのです。
次の、新しい世界の始まりを任せるに相応しい方として」
そう言われて青年はようやく、今度は冷静に辺りを見回す。
ちなみに私達の背後には私の造った農園がある。
すでに放牧された牛と鶏の鳴き声が実にのんびりとした平和な空気をかもしだしている。
どう見ても“裁きの間”なんて物騒な場には相応しくない光景だろう。
そして、アグリ様の隣に立つ私に視線が向く。
「では……そちらの方は……?」
「彼女の名はユリ。……詳しい事はゆっくりお茶でも飲みながら話しましょう」
「初めまして。この後ろの農園の管理者のユリです、よろしくお願いします」
「あ、ああ……。俺……いや私の名はユージーンだ」
ああ、やっぱり。
流石に神様なアグリ様には及ばないものの、この彼――ユージーンもかなりのイケメンだ。
しかも細身と言いつつモヤシではなくボロっちい服の外からでも分かる細マッチョ。
今は栄養不足なのかやつれているけど、それがなければ素晴らしい体型である。
……はぁ、これからこんな美形二人の前に対するのか。
アグリ様の確認の問い。
それに私は「勿論です」と自信を持って答える。
家も用意したし、受け入れの準備は整え終わっている。
後は来た当人と上手くやっていけるかどうか。
こればかりは相手次第だろう。
私も努力の必要があるのは理解している。
「――では、始めます」
そこはまだ、畑も何も作っていない元の草原の一角。
アグリ様は太くてゴツゴツした木の杖――古の魔女が持ってそうな杖をもって何やら唱え始める。
私には全く理解できないけど。
やがて草原に青白く魔法陣が浮かび上がる。
光を放つ魔法陣の中、不意に人影が現れる。
なかなかの長身に細身の影。
徐々に影に色が付き、光が収まる頃には短髪の黒髪に金眼の青年が立っていた。
「ここ、は……」
混乱し辺りを見回していた青年は、まずアグリ様を見つけてハッとした表情を浮かべた。
「ま、まさか……唯一神アグリ様……?」
「はい、そうですよ」
にっこり笑ってアグリ様が答えると、なぜか青年は絶望した表情で崩れ落ち、リアルorzでダバダバ涙流して泣き出した。
「そんな……、まさか神の裁きの間か……? つまり私の方が間違っていたのか……?」
「いいえ、たしかに私は神アグリですが、ここは裁きの間ではありませんよ。
……ああ、ユリさんの為に解説しますが、裁きの間とは下界の法では裁けない程の悪行を行った者を私が呼び出して相応しい罰を与えるのです。
が、現状ではそれらを全て呼び出していたら、寿命という概念の無い神である私でも時間が足りませんから。
ですから、数少ない裁きの必要の無い貴方を召喚したのです。
次の、新しい世界の始まりを任せるに相応しい方として」
そう言われて青年はようやく、今度は冷静に辺りを見回す。
ちなみに私達の背後には私の造った農園がある。
すでに放牧された牛と鶏の鳴き声が実にのんびりとした平和な空気をかもしだしている。
どう見ても“裁きの間”なんて物騒な場には相応しくない光景だろう。
そして、アグリ様の隣に立つ私に視線が向く。
「では……そちらの方は……?」
「彼女の名はユリ。……詳しい事はゆっくりお茶でも飲みながら話しましょう」
「初めまして。この後ろの農園の管理者のユリです、よろしくお願いします」
「あ、ああ……。俺……いや私の名はユージーンだ」
ああ、やっぱり。
流石に神様なアグリ様には及ばないものの、この彼――ユージーンもかなりのイケメンだ。
しかも細身と言いつつモヤシではなくボロっちい服の外からでも分かる細マッチョ。
今は栄養不足なのかやつれているけど、それがなければ素晴らしい体型である。
……はぁ、これからこんな美形二人の前に対するのか。
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