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1章 農園始めます!
第1話 謎の人物との遭遇
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扉は、引手の付いた片引きの引き戸だった。
勿論これも、力を入れ過ぎたら壊れそうなオンボロ扉だ。
しかし建付けが酷く悪いらしくすんなりとは開いてくれず、キィキィと耳を塞ぎたくなる音を立てるも、耳を塞ぐ手はその扉を開けるために両手とも絶賛使用中である。
どうにかこうにか自分がすり抜けられる位の隙間をこさえるだけで疲れ果てた。
「……太ってなくて良かった」
例えぽっちゃりレベルでも、余計に隙間を必要としかねない体型でなかった事を少し喜びつつも、恐る恐る小屋の中へと視線を向ける。
窓と言えそうな開口部が、ごく小さいものがたった一つ、天井近くに設けられただけの小屋の中は当然薄暗い。
これを住居と呼んだら確実に日本では建築基準法違反になるだろう。
だが。
部屋の暗さに徐々に慣れてくる視界に飛び込んできたのは、ささやかすぎる四角い小さなテーブルと、それに合わせて作られた椅子、そしてその椅子に腰掛けた一人の人影。
「………………、」
それを見つけた彼女は言葉を失った。
絶望的な状況で、人を見つけた。それは嬉しい事、のはずなのだけど。
その人物の容貌に、彼女は一瞬全ての思考を失った。
目の前に座る人物の、胸も無くがっしりした体型からは男のようにも見えるが、中性的な顔に、腰まで伸びる美しい金髪は女性に見えない事もない。
そして、何より髪の隙間から僅かに見える両の耳の形が……
「……エルフ?」
そう、ゲームやマンガ、ラノベの挿絵で描かれるエルフの様な出で立ちをした、性別不明な人物。
背景のオンボロ小屋に全く似合わぬ超絶的美貌。
だけど、当たり前だけど現代日本、どころか現実の地球の何処の国でもエルフなんて種族は今の所見付かってはいない。
それは、物語の中のファンタジーな種族の代表みたいなものでしょう……?
「残念ですが、私はエルフではありませんよ」
ぽろりと思わず溢れた言葉に、その人(?)物が答える。……これまた男とも女とも取れる、しっとりとした美声で。
あなたは誰、何者?
ここは何処なの?
何で私はここに……は、この人が関与していなければ答えて貰えないだろうけど。
他にも最寄り駅か帰る手段、電話……どころか電気水道ガス通っているとも思えない小屋だけど……、
とにかく聞きたいことはいくらでもある筈なのに。
その人が次の言葉を紡ぐまで、何一つ言葉が浮かんで来なくて。
「ようこそ、異界の迷い人よ。私はこの世界の神。……出来るならば一つ、頼み事を聞いてくれると嬉しいね」
その、衝撃的な自己紹介が右の耳から左の耳へと抜けていった。
勿論これも、力を入れ過ぎたら壊れそうなオンボロ扉だ。
しかし建付けが酷く悪いらしくすんなりとは開いてくれず、キィキィと耳を塞ぎたくなる音を立てるも、耳を塞ぐ手はその扉を開けるために両手とも絶賛使用中である。
どうにかこうにか自分がすり抜けられる位の隙間をこさえるだけで疲れ果てた。
「……太ってなくて良かった」
例えぽっちゃりレベルでも、余計に隙間を必要としかねない体型でなかった事を少し喜びつつも、恐る恐る小屋の中へと視線を向ける。
窓と言えそうな開口部が、ごく小さいものがたった一つ、天井近くに設けられただけの小屋の中は当然薄暗い。
これを住居と呼んだら確実に日本では建築基準法違反になるだろう。
だが。
部屋の暗さに徐々に慣れてくる視界に飛び込んできたのは、ささやかすぎる四角い小さなテーブルと、それに合わせて作られた椅子、そしてその椅子に腰掛けた一人の人影。
「………………、」
それを見つけた彼女は言葉を失った。
絶望的な状況で、人を見つけた。それは嬉しい事、のはずなのだけど。
その人物の容貌に、彼女は一瞬全ての思考を失った。
目の前に座る人物の、胸も無くがっしりした体型からは男のようにも見えるが、中性的な顔に、腰まで伸びる美しい金髪は女性に見えない事もない。
そして、何より髪の隙間から僅かに見える両の耳の形が……
「……エルフ?」
そう、ゲームやマンガ、ラノベの挿絵で描かれるエルフの様な出で立ちをした、性別不明な人物。
背景のオンボロ小屋に全く似合わぬ超絶的美貌。
だけど、当たり前だけど現代日本、どころか現実の地球の何処の国でもエルフなんて種族は今の所見付かってはいない。
それは、物語の中のファンタジーな種族の代表みたいなものでしょう……?
「残念ですが、私はエルフではありませんよ」
ぽろりと思わず溢れた言葉に、その人(?)物が答える。……これまた男とも女とも取れる、しっとりとした美声で。
あなたは誰、何者?
ここは何処なの?
何で私はここに……は、この人が関与していなければ答えて貰えないだろうけど。
他にも最寄り駅か帰る手段、電話……どころか電気水道ガス通っているとも思えない小屋だけど……、
とにかく聞きたいことはいくらでもある筈なのに。
その人が次の言葉を紡ぐまで、何一つ言葉が浮かんで来なくて。
「ようこそ、異界の迷い人よ。私はこの世界の神。……出来るならば一つ、頼み事を聞いてくれると嬉しいね」
その、衝撃的な自己紹介が右の耳から左の耳へと抜けていった。
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