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第二章 竜人の子

竜の子

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 「う、うううう~、痛い痛い痛い! ふえ~」

 陣痛が始まってはや一時間。
 だが、医師によるとまだ子宮口はあまり開いておらず、本格的な分娩までにはまだかかるだろう、とか何とか言ってた気がするけど、この痛みの前に難しい話なんか理解する余裕はない。

 もうたっぷり何時間も痛みに耐えた気がしたのに、まだたったの一時間、しかもまだまだ時間がかかると聞いてエルシエルは絶望的な気分になった。

 「い、痛いって覚悟はしてたけど……! ほ、ホントに痛い……!」

 フォンセが王を継いだ瞬間、力の制御が上手くいかなかったあの時の痛みとどちらが酷いか、正直いい勝負だと思う。

 「ほら陛下、腰をさすってあげて!」

 肝っ玉母ちゃんみたいなベテランの産婆さんが、オロオロするフォンセの尻を蹴る勢いで指示を飛ばす。

 「あ、ああ……分かった」

 熱くもないのに痛みで顔は汗でビッチョリ。
 時折フォンセに顔をタオルで拭いてもらわないと、汗が目に入りそう。

 「初産ですからね、時間がかかって当然です。でも、あなたの進みは順調よ、心配は要らないからね。ほら、陛下は奥さんをちゃんと励ましてあげて! 貴方がオロオロしたって何の役にも立たないんですから、手を動かしなさい!」

 時折侍女やメイドが水やゼリーなどを置いて行ってくれる。

 陣痛の合間にトイレに行くのを手伝ってもらったりしながらほぼ丸一日が経過した頃。

 「赤ちゃんの頭が見えましたよ、もう少し! いきんで! ヒッヒッフーですよ!」

 「うああああー!」

 「おぎゃー」

 城に、元気な産声が響いた。

 「おめでとうございます! 元気な男の子ですよ!」

 そう言って見せられた子は。
 真っ黒い竜の子だった。

 あれ、生まれて来る子が竜人だとは聞いていたけど竜の子とは聞いてないんだけどな……

 寝不足と軽い貧血でフラフラする頭で、鱗のひんやりした赤ん坊を受け取る。

 産湯で綺麗にしてもらい、おくるみで包まれた竜の赤ちゃん。

 「……竜人の子は竜の形態で産まれてくる子も居るんですよ。むしろ人の子の姿の赤子より能力の高い子が多いんです」

 「ふふふ、陛下のミニチュアの様で御座いますね。期待出来そうです」

 ……うん、体を丸めて眠る我が子は可愛かった。
 フォンセの竜体と唯一違うのは鼻面が子犬のようにペちゃんとしている事くらいか。

 「エルシエル様、大変お疲れ様でございました。ごゆっくりお休みください」

 私も、身体を清めてもらい新しい服に着替えさせてもらう。
 流石に眠くて堪らない。

 「エルシエル、ありがとう」
 フォンセが頭を撫でてくれて。

 私の意識はすぐに夢の中へと落ちていくのだった。
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