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第二章 竜人の子

子に課せられる試練

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 「王子でなく公子?」

 「ええ、ご存知の通り、我が国の王位は世襲では御座いません。尊い血を引くというだけで、能力の無い輩を玉座に据えれば国どころか世界が滅びる。故に、我々竜人の貴族の子は度々試練を与えられ、ふるいにかけられます」

 そしてある年齢までふるい落とされなかった者は、王候補の候補となる。
 そこから本格的に選考会を経て、次代の竜王選びが始まるのだ。

 「私に今何があったら、次は繋ぎとして第二候補だった者が王になる……が、正式な次代の王は、我らの子の世代の者達だ」

 生まれたのが女の子なら、その候補からは外れる。

 「女児が政治能力などで男児に劣っているとは思わない。……だが、このお役目についてはどうしても、女児では耐久力が男児に劣ってしまうのだ」

 他の国なら、単なる性別の違いで能力度外視すれば問題にもなるだろうが、この国特有の理由には世界の存亡がかかっている。
 その分シビアにならざるを得ないんだ。

 「私、人間なんだけど、生まれるのは竜人なの?」

 「はい。竜人以外の種族が相手であれば、ハーフや人間として生まれる可能性もあるのですが、竜人の遺伝子は強く、ほぼ100%の確率で竜人の子として生まれます。……流石に男女の別は生まれてみるまで分かりませんが」

 そして、お腹の中の子が竜人でも、人間の子と同じく大体十月十日で産まれてくるそうだ。

 妊娠が分かったその日から、私には専属の栄養士と産科医がついた。

 公子として、他の同年代の子と変わらない地位を与えられるはずの子でも、王となったフォンセの血を継ぐ子だ。
 この子が駄目でも、この子の子が王になる可能性もある。

 無事に生まれてくるよう、私には万全のサポートが24時間営業毎日つく事になった。

 ……この国のお役目の大切さは理解しているつもりだけど。
 それでも……自分の子に試練……と聞くとつい可哀想に思えてしまう。

 それがペーパーテストの類いならまだしも、あの苦痛に耐え、力を制御する素質を見極める為の試練……

 それがどんな物か。最後の王の決定戦以外の話を、私はまだ知らない。
 あれだけ詰め込まれた王妃教育にもそんな事は含まれてなかったから。

 「……女の子だったら、って思っちゃうのは私の勝手だよね」

 男の子だったら、強い子に育てなきゃいけないプレッシャーもあって。
 どっちでも良いと思いながらも、同時に女の子を望むなら気持ちも抑え切れなかった。

 期待と不安の中、私は日に日に膨らむお腹を抱え、仕事に励んでいたのだけれど――

 「あ、あれ、痛い……?」
 最初は単なる腹痛だと思った。
 しかしあっという間に痛みは増していき……

 「エルシエル様、産気づきました! 陛下にお知らせを!」
 遂に、その日はやって来たのだった――
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