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第二部 第一章 新婚旅行!?

王都帰還

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 「……すまない」
 「毎度謝るくせにすぐ忘れて同じ事を繰り返すなら、謝る意味はありませんよ?」

 馬車の中、陛下に膝枕されたエルシエルは恨めし気にフォンセを見上げ軽く睨みつけた。

 「う、……す、すま……あ、いや……その」

 「別に、行為が嫌と言ってる訳じゃ無いんです。けど、出来れば私の体力が尽きて足腰立たなくなる前に勘弁してくださいよって言ってるんですけどね」

 「う、うむ」
 「取り敢えず寝不足なんで寝かせて下さい」
 あまりに眠くて、目を閉じればすぐにでも意識が飛びそうだった。
 まして、フォンセの体温がとても心地よくて……

 エルシエルは夢の世界に旅立った。

 そんな彼女の髪のさらさらした指通りを楽しみながら、フォンセはエルシエルの頭を撫でる。

 今夜は王都一歩手前の村に一泊し、明日には王都入り、そのままパレードしつう王城へ帰還する予定だ。

 「……流石に今夜は我慢しなくては、か」

 楽しかった旅行ももう終わる。
 そろそろ日常の現実へ戻らなくては。

 今回の旅行で得たものは多い。
 きっとエルシエルは早速今回得た課題に挑戦すべく研究に励むのだろう。

 それが、この国の民のためである事が、とても嬉しく誇らしい。

 本来、王の正妃には大した仕事は振られない。
 ……それがこのダルク・アンダーでの通例だった。
 王に血を捧げるだけで日に日に弱っていくご婦人に無理はされられないから。

 けれど、エルシエルは相変わらず吸血を嫌がる事もなく。

 ――一部の王は拒絶さえされたという夫婦の夜さえも、彼女はついついエルシエルが可愛くてやり過ぎてしまう自分を叱りつつも、拒否した事はなかった。

 近年に限らず、稀に見る良妻だ。

 「……そろそろ、自制せねばな」

 これまでは蜜月もまだだったが、こうして蜜月を終えたからには自分も大人にならねばなるまい。

 自分の膝で警戒もなく気持ち良さそうに眠るエルシエルの温もりが、フォンセは愛おしくてたまらないのだから。



 ――そして、翌日の昼過ぎ。王都の門に到着した二人はオープン馬車に乗り換え、王城への道のりを、民の声援を浴びながら進む。

 今回の旅でエルシエルもそろそろこういった事に慣れてはきた。


 「お帰りなさいませ、フォンセ陛下、エルシエル妃殿下」

 そして、王城の門にて、今回の留守居だった大臣総出で出迎えられた時。

 エルシエルは改めて自分の地位を自覚し。

 「――ただ今戻りました」

 それ以上に、ようやく『帰ってきた』気分になった。

 「留守に何もなかったか?」
 「はい。……ですが、代理の私では決裁出来ない仕事が山と溜まっておりますれば……。明日からの執務はご覚悟下さいね、陛下?」

 隣でフォンセの表情が引きつったのは……見なかった事にしようと思う。
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