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第二部 第一章 新婚旅行!?
蜜月
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「ふわぁ、綺麗……」
光の国という名の通り、どこもかしこも基本キラキラしていた故郷と異なり、闇の国ダルク・アンダーは、暗くはないがどこか重たく見えがちな景色が多めだと、エルシエルは思っていたのだけれど。
そこは、なんとなくふわふわした風な物の多い光の国には無さそうな。
「地底湖が、こんなに美しいなんて……」
広い、広い地下の空洞の天井付近から吹き出す地下の滝。
その飛沫が涼しく心地良い風となってエルシエルに届く。
が、大半は美しいコバルトブルーの湖に注ぎ込まれ、光に照らされ消えない虹を作り続けている。
その光景はひどく幻想的で。
それを言葉でどんなに讃えたくても、何故かエルシエルの語彙が急激に貧弱になってしまった様で、ひたすら「綺麗、凄い」としか出てこない。
その美しい湖畔を一望できる別荘。
各村や町の視察は全て終え、パレードも残すは王都での帰還パレードを残すのみ。
「ここへは二泊三日を予定しております。その間の予定等は特にございませんので、何か急を要する知らせが無い限りは一切のお邪魔はいたしません。ご自由に、そしてご存分に蜜月をお楽しみ下さいませ」
……ん?
「そうか、ようやくか。ああ、食事や風呂の世話以外は人は要らん。給仕も要らぬから、その様にはからえ」
「畏まりました」
え、えええ?
何かフォンセが凄くウキウキしてるんだけど……?
当然のように大きなベッドが置かれた、広く綺麗な部屋に案内され。
窓からはあの幻想的な景色がよく見える。
なのに、せっかくの景色を放ってフォンセは美人顔でもない私をニコニコ見つめている。
……うん、分かってるよ。
フォンセ的にはこれは蜜月旅行なんだもんね?
やっと本番……なんだよね?
はぁ……二泊三日、かぁ……
体、保つ……かなぁ……
ウェルカムフルーツじゃないけど、ワインとチーズとハムが置かれたテーブルから、ヒョイパクとつまめばなかなか良いお味だった。
ワインも甘めで美味しい。
フォンセに勧めれば、美味しそうに食べはするけど……目が凄く物欲しそうな……
これはもう、逃げられないと観念するしかなさそう。
「はぁ、お願いだから、ちゃんとペース配分考えて、加減してよね?」
そう言うと、フォンセは嬉しそうに私を抱き上げベッドにそそくさと運び込んだ。
「ああ。たっぷり愛してやる」
――三日後。
スライム化したエルシエルが、フォンセに姫抱っこされたまま馬車に乗り込む事になったのは――その日の内に箝口令がしかれ、他に漏れる事はなかった……らしい。
光の国という名の通り、どこもかしこも基本キラキラしていた故郷と異なり、闇の国ダルク・アンダーは、暗くはないがどこか重たく見えがちな景色が多めだと、エルシエルは思っていたのだけれど。
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広い、広い地下の空洞の天井付近から吹き出す地下の滝。
その飛沫が涼しく心地良い風となってエルシエルに届く。
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それを言葉でどんなに讃えたくても、何故かエルシエルの語彙が急激に貧弱になってしまった様で、ひたすら「綺麗、凄い」としか出てこない。
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……ん?
「そうか、ようやくか。ああ、食事や風呂の世話以外は人は要らん。給仕も要らぬから、その様にはからえ」
「畏まりました」
え、えええ?
何かフォンセが凄くウキウキしてるんだけど……?
当然のように大きなベッドが置かれた、広く綺麗な部屋に案内され。
窓からはあの幻想的な景色がよく見える。
なのに、せっかくの景色を放ってフォンセは美人顔でもない私をニコニコ見つめている。
……うん、分かってるよ。
フォンセ的にはこれは蜜月旅行なんだもんね?
やっと本番……なんだよね?
はぁ……二泊三日、かぁ……
体、保つ……かなぁ……
ウェルカムフルーツじゃないけど、ワインとチーズとハムが置かれたテーブルから、ヒョイパクとつまめばなかなか良いお味だった。
ワインも甘めで美味しい。
フォンセに勧めれば、美味しそうに食べはするけど……目が凄く物欲しそうな……
これはもう、逃げられないと観念するしかなさそう。
「はぁ、お願いだから、ちゃんとペース配分考えて、加減してよね?」
そう言うと、フォンセは嬉しそうに私を抱き上げベッドにそそくさと運び込んだ。
「ああ。たっぷり愛してやる」
――三日後。
スライム化したエルシエルが、フォンセに姫抱っこされたまま馬車に乗り込む事になったのは――その日の内に箝口令がしかれ、他に漏れる事はなかった……らしい。
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