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第二部 第一章 新婚旅行!?
歓待
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「ようこそ、陛下。この様な辺ぴな村へ……」
この旅行最初のお仕事は、視察だ。
お披露目パレードをする予定の最初の街までは数日かかる。
その、途中の村で宿を取るついでに、その村の主要産業である農業を視察しようと言う話。
勿論、私は自分の専門分野に関わってくる話で、ワクワクしていた。
……普段、せいぜい近隣村の者しかやって来ない様な田舎村の村長は、陛下御一行に、国務大臣の先触れがあっても、尚恐縮しきりだったけど。
「良い。楽にしてくれ。プライベートも兼ねた旅行だ。
視察と言っても何か咎めようなどという目的ではなく、我妻の見聞を広げてやろうと思ったまでの事。
もしも我が妻、エルシエルが何か疑問に思う事があったなら、その質問に答えてやって欲しい」
「はっ、畏まりました……!」
――この国では、木材の入手があまり容易でないため、一般庶民の家も、大概は切り出してきた石材か、土を捏ねて焼いたレンガ造りの家が主流だ。
地下だから嵐なんてものもないし、雨も降らないし風も吹かない。
しかし、ごく稀に地表で大雨が降ると雨漏りする屋根から滴るように、ほつほつと天井から雫が落ちるためやはり屋根は要るのだが、しかし窓に硝子の嵌った家は殆ど無い。
その、数少ない例外である村長の家に私達の今夜の寝床を用意して貰い、夕食をご馳走になる。
この国の定番食材のモヤシときのこをふんだんに使った庶民の御馳走。
けど、事前に国務大臣から渡された予習用の宿題で、この村の特産はきのこと聞いていただけあって、確かに食卓に上ったきのこの種類はかなり豊富だった。
そのおかげで、様々な食感と香りが楽しい。
明日は早速その栽培の様子を見学させて貰うんだけど……その前に、だ。
「エルシエル、覚悟は良いか?」
「う、うう……、なるべくお手柔らかにお願いします……」
そう。お披露目とか視察とかお仕事もついて回るけど、陛下にとってはこっちが目的のメインなのだ。
食事を終え、お風呂を借りてさっぱりして寝室に戻ると……
ソワソワしながらフォンセが待ち構えていた。
竜王の地位は世襲ではないけれど、フォンセの血を継ぐ子の誕生は誰もが待ち望んでいる。
流石に先日結婚したばかりの私に子をせっつくせっかちさんはまだ居ないけど。
この旅行でそれを期待する輩は確実に一定数居るんだろう。
……フォンセの場合は子云々より、番の私といちゃいちゃしたいだけっほいけど。
いつもみたくベッドに押し倒される。
城の王の寝室のベッドに比べれば硬いし肌触りも劣るけど。
確実にすぐそんな事を気にしている余裕は無くなるだろう。
私がフォンセの濃厚な愛に溶かされ声が枯れるほど鳴かされる夜は、もうすぐそこまで迫っていた――
この旅行最初のお仕事は、視察だ。
お披露目パレードをする予定の最初の街までは数日かかる。
その、途中の村で宿を取るついでに、その村の主要産業である農業を視察しようと言う話。
勿論、私は自分の専門分野に関わってくる話で、ワクワクしていた。
……普段、せいぜい近隣村の者しかやって来ない様な田舎村の村長は、陛下御一行に、国務大臣の先触れがあっても、尚恐縮しきりだったけど。
「良い。楽にしてくれ。プライベートも兼ねた旅行だ。
視察と言っても何か咎めようなどという目的ではなく、我妻の見聞を広げてやろうと思ったまでの事。
もしも我が妻、エルシエルが何か疑問に思う事があったなら、その質問に答えてやって欲しい」
「はっ、畏まりました……!」
――この国では、木材の入手があまり容易でないため、一般庶民の家も、大概は切り出してきた石材か、土を捏ねて焼いたレンガ造りの家が主流だ。
地下だから嵐なんてものもないし、雨も降らないし風も吹かない。
しかし、ごく稀に地表で大雨が降ると雨漏りする屋根から滴るように、ほつほつと天井から雫が落ちるためやはり屋根は要るのだが、しかし窓に硝子の嵌った家は殆ど無い。
その、数少ない例外である村長の家に私達の今夜の寝床を用意して貰い、夕食をご馳走になる。
この国の定番食材のモヤシときのこをふんだんに使った庶民の御馳走。
けど、事前に国務大臣から渡された予習用の宿題で、この村の特産はきのこと聞いていただけあって、確かに食卓に上ったきのこの種類はかなり豊富だった。
そのおかげで、様々な食感と香りが楽しい。
明日は早速その栽培の様子を見学させて貰うんだけど……その前に、だ。
「エルシエル、覚悟は良いか?」
「う、うう……、なるべくお手柔らかにお願いします……」
そう。お披露目とか視察とかお仕事もついて回るけど、陛下にとってはこっちが目的のメインなのだ。
食事を終え、お風呂を借りてさっぱりして寝室に戻ると……
ソワソワしながらフォンセが待ち構えていた。
竜王の地位は世襲ではないけれど、フォンセの血を継ぐ子の誕生は誰もが待ち望んでいる。
流石に先日結婚したばかりの私に子をせっつくせっかちさんはまだ居ないけど。
この旅行でそれを期待する輩は確実に一定数居るんだろう。
……フォンセの場合は子云々より、番の私といちゃいちゃしたいだけっほいけど。
いつもみたくベッドに押し倒される。
城の王の寝室のベッドに比べれば硬いし肌触りも劣るけど。
確実にすぐそんな事を気にしている余裕は無くなるだろう。
私がフォンセの濃厚な愛に溶かされ声が枯れるほど鳴かされる夜は、もうすぐそこまで迫っていた――
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