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第二部 第一章 新婚旅行!?

旅の計画

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 「しかし……そういう事なら全部まとめて一月程で主要都市を巡る旅に出ていただきましょうか」

 仕事を兼ねるなら、三日から長くても一週間しか許されないはずの王の蜜月を一月に伸ばせるぞ、と陛下の目の前に人参エサをチラつかせる。

 ……流石、この国の宰相と側近達。
 彼らはフォンセ陛下とは幼い頃から交流があり、陛下の扱い方は心得たものだ。

 勿論平民同士の気楽な幼馴染みの関係とは少し異なるけれど、気安い関係なのは間違いない。

 「……蜜月とは仕事をしなくて良い期間のはずではないのか?」
 陛下は、他の臣下の前では絶対にしない拗ねた表情で不満げに彼らを睨んだ。

 「ええ、移動中の馬車の中ではお二人きりに致しますので存分にいちゃついて頂いて構いませんし、無論宿で過ごす夜はむしろいちゃついていただかねば困ります。
 ただ、時折舞い込む緊急を要する案件や、視察業務とパレードへの参加をしていただければ良いのです」

 せいぜい二、三日、何処か温泉にでも行けたら、位に考えていた私にとっては渡りに船な案なんだけど。

 「ええ、主要都市の中には温泉街が売りの都市もございますよ。火の国と比べられてしまうと少々こぢんまりしておりますが、その分逆にのんびりするには向いていると思いますよ」

 ほう。のんびり温泉……素敵な響きよね……

 「……分かった。取り敢えず日程の案を出せ」
 長いため息のあと、陛下は諦めたようにそう彼らに命じた。
 「――御意」

 そして彼らは満足げな顔で退室して行った。

 「はぁ。戴冠もそうだが、私には“普通”は許されないのか……」
 代わりに何か落ち込んじゃった陛下が執務机に突っ伏し悶々とし始めた。

 ……これはこれで可愛いけど……、うん、面倒くさいし。

 「何ですか、私との旅行はそんなに嫌ですか?」
 「そっ、そんな事はない!」

 「なら何でそんなに落ち込むんですか」

 「……竜人族の蜜月とは、極力他人の干渉を嫌う。
 徹底する者は、給仕の者さえ部屋に食事を運ばせたら即下げさせ自ら給仕する、その位徹底するのだ。
 流石に王たる私がそこまでの蜜月を望めない事は、王候補であった頃から納得し、覚悟はしていた。
 ……だが、な。
 こんな飛び石のような蜜月を取った王など記録にすら無いのだよ」

 と、フォンセは遠い目で言った。

 「普通が……遠い……」

 嘆くフォンセに。
 私はかける言葉をとっさに思いつけず。

 そっと肩に手を置くしか出来なかった。
 だって、陛下には物凄く申し訳ないけど。

 フォンセとの旅行はとても楽しみだったから――
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