98 / 119
第十章 闇の吸血竜王に嫁入りします!
〈番外編〉迷い犬の里親探し ⑤
しおりを挟む
「おやおや、どうしました?」
次にエルシエルがダメ元で訪れたのは、礼部大臣フィリップ=ブレイズ伯爵の執務室だった。
彼は他の側近と違い、唯一伯爵家の当主だった。
「なる程、里親探しですか……」
と苦笑いをするフィリップ。
「確かに我が家にも息子はいますが……」
「ええ、もうそろそろ成人だったかしらね」
伯爵は竜人族ではなく、当然息子も同じく。
故に、年齢的には他の側近達の息子と大差ない年齢でも、その中身はまるで異なる。
「我が家で飼っていた犬は既に老犬。息子が動物好きなら新たな犬を迎えても……と思うのですが、我が子は動物にはそれ程興味を持たず……。今飼ってる犬は幼い頃からの付き合いの為情を見せますが、他の犬猫には殆ど興味を持ちません。植物には興味があるらしく、趣味で敷地に自ら温室を建てる程なのですが……」
「それは……、幼い仔犬など飼えば、心配が絶えなくなりますね……」
似た理由で飼えないと判断したエルシエルにはよく分かる。
「申し訳ありません」
「いいえ、もしかしたらと言う程度の気持ちで声をかけたのだもの、謝ることはないわ。私こそごめんなさいね」
「いえいえ、それこそ謝る事ではございませんよ。息子が動物好きだった可能性だってあった訳ですからね」
さて、ここも空振りとなると、残るは……
次にエルシエルがダメ元で訪れたのは、礼部大臣フィリップ=ブレイズ伯爵の執務室だった。
彼は他の側近と違い、唯一伯爵家の当主だった。
「なる程、里親探しですか……」
と苦笑いをするフィリップ。
「確かに我が家にも息子はいますが……」
「ええ、もうそろそろ成人だったかしらね」
伯爵は竜人族ではなく、当然息子も同じく。
故に、年齢的には他の側近達の息子と大差ない年齢でも、その中身はまるで異なる。
「我が家で飼っていた犬は既に老犬。息子が動物好きなら新たな犬を迎えても……と思うのですが、我が子は動物にはそれ程興味を持たず……。今飼ってる犬は幼い頃からの付き合いの為情を見せますが、他の犬猫には殆ど興味を持ちません。植物には興味があるらしく、趣味で敷地に自ら温室を建てる程なのですが……」
「それは……、幼い仔犬など飼えば、心配が絶えなくなりますね……」
似た理由で飼えないと判断したエルシエルにはよく分かる。
「申し訳ありません」
「いいえ、もしかしたらと言う程度の気持ちで声をかけたのだもの、謝ることはないわ。私こそごめんなさいね」
「いえいえ、それこそ謝る事ではございませんよ。息子が動物好きだった可能性だってあった訳ですからね」
さて、ここも空振りとなると、残るは……
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
物語の悪役らしいが自由にします
名無シング
ファンタジー
5歳でギフトとしてスキルを得る世界
スキル付与の儀式の時に前世の記憶を思い出したケヴィン・ペントレーは『吸収』のスキルを与えられ、使い方が分からずにペントレー伯爵家から見放され、勇者に立ちはだかって散る物語の序盤中ボスとして終わる役割を当てられていた。
ーどうせ見放されるなら、好きにしますかー
スキルを授かって数年後、ケヴィンは継承を放棄して従者である男爵令嬢と共に体を鍛えながらスキルを極める形で自由に生きることにした。
※カクヨムにも投稿してます。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
お一人様大好き30歳、異世界で逆ハーパーティー組まされました。
彩世幻夜
恋愛
今日が30歳の誕生日。
一人飲みでプチ贅沢した帰りに寄った神社で異世界に召喚されてしまった。
待っていたのは人外のイケメン(複数)。
は? 世界を救え?
……百歩譲ってそれは良い。
でも。こいつらは要りません、お一人様で結構ですからあぁぁぁ!
男性不信を拗らせた独身喪女が逆ハーパーティーと一緒に冒険に出るとか、どんな無理ゲーですか!?
――そんなこんなで始まる勇者の冒険の旅の物語。
※8月11日完結
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる