闇の吸血竜王に嫁入りします!

彩世幻夜

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第九章 後始末と未来の話

神竜様の謁見

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 取り敢えず落ち着いた場所で手当をしなければ、けど、私の事情も聞きたい……と、側近達が悩んだ結果、結婚前だけど私、陛下のお部屋にお邪魔しちゃってマス。

 勿論寝室ではなく応接のための部屋だけど。

 医師に足を含めて全身の怪我の手当をして貰いながら、飛ばされてからの冒険の話を改めて陛下達に聞かせた。

 「ここで教わった事のお陰で無事に戻って来る事が出来ました、ありがとうございます」

 「いえ。それは貴女がきちんと努力した結果です。その足、お辛かったでしょうに……。こちらこそ無事に戻って来ていただいて本当にありがとうございます」

 「ああ。エルシエルが戻っていなかったら……私は更なる被害をこの国に、引いては世界に与えるところだった」

 手当の終わった私を、陛下が自分の足の間に座らせ後ろから抱え込むように抱きついてくる。

 先程の切羽詰った様子はもう見られず、優しく抱きしめられ、私もようやく帰って来た実感が湧いた。

 まだ、怪我の痛みではない苦痛が残るが、そうしてフォンセに抱っこされている間は少し楽になるのだと気付く。

 「さて、支度は整ったか?」
 「はい、あとはお二人に着替えをして頂くだけです。陛下、エルシエル様のお着替えに隣の部屋を借りたいと侍女が申しておりますが……」

 「ああ、むしろぜひ使ってくれ。今は塔に帰す訳にもいかぬ。かと言ってお前達にエルシエルの着替えを見せる訳がない。かといってお前達に。仕事を放り出されても困るんでな」

 そして、これまで身につけた中でもとびきり上等で、けれど派手さの一切ない装いに着替えさせられる。
 身支度を整え終わり、元の部屋に戻されると、陛下もその装いを一変させていた。

 黒く、派手さはないくせにそのキレイな顔をこの上なく引き立てている。

 「怪我で身体も辛いだろうが、神竜様へ謁見せねばならない。不完全に終わった戴冠を、少しでも正常に戻さなければ……」
 「はい。けど……うう、自国の神竜様にも会った事ないのに……緊張します」

 ドキドキしながら向かったのは、へイアン様と謁見した謁見の間。
 今は空の玉座に、彼の死を改めて思い知らされる。

 「私の捜索の指示を実際に飛ばして下さったのはヘイアン様だと伺いました。……お礼を言わなければならなかったのに、言えないままでした」

 「……戴冠後、しばし苦痛のない余暇と最期を迎えていただきたかったがそれも叶わなかった。せめて私がしっかりせねば、ヘイアン様に顔向け出来んな。そのためにも……エルシエル、こっちだ」

 玉座の裏に隠される様にある扉と、その先に続く隠し通路のような薄暗く狭い廊下を行けば。

 「洞窟……ですか? 大きい……」
 暗くて目の慣れないエルシエルはまずその広さに驚き――次第に慣れ始めた目が目の前に巨大な影を認めた。
 それまで暗闇と同化して気づけなかった。

 が、陛下はその影の前に跪く。
 エルシエルも陛下に倣うが……どんどん慣れてくる目が、巨大な――以前見たフォンセの竜の姿より尚大きな竜の姿をとらえる。

 『――来たか』
 そして、脳裏に低い声が響いた!
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