上 下
81 / 119
第九章 後始末と未来の話

乙女ゲームの世界〈聖女視点〉

しおりを挟む
 その日私はゲームをしていた。
 昨日も一昨日もその前も、食事と睡眠の時間以外は人生全てをゲームに捧げていた。

 だって、学校へ行っても良い事なんか何も無いんだもん。
 家に居ても面白い事なんか無いんだけど、唯一ゲームをしている時間だけが、私が生きてて楽しいと思える時間だった。

 親?
 居るけど居ないよ。

 私という存在が生まれた以上、まあ生物学上の父と母は存在するんだろうけど名前すら知らない、生きてるか死んでるかも知らない。

 そんな私が施設でなくこうして“自分の部屋”でゲームしてられるのは、幼い頃に里親に引き取られたから。

 “オカアサン”はずっと不妊で悩んでたんだって。
 “オトウサン”は実家の事業を継いでてどうしても子供が必要だったんだけど、妻が大好きで離婚して子供が産める新しい嫁を、と言う両親を振り切って私を引き取ったんだって。

 確かに幼稚園に通うような子供だった頃には可愛がって貰った記憶もある。
 だけど“オカアサン”がなんの偶然か実子を身ごもった。しかも産まれてきたのは待望の男の子。

 その日から、私はこの家に要らない子になった。
 だけど、今更放り出すのは世間体が悪いからって、新しいマンション買って、週にお小遣い一万円置いて、後は放って置かれた。
 当時、私は小学五年生だった。
 スーパーやコンビニでお弁当買うくらいなら出来たから、飢えはしなかったけど、オトウサンもオカアサンも、私の学校のPTA活動はもちろん、行事や面談にも顔を出さなくなった。

 運の悪いことに、その小学校はPTA活動の盛んな学校で、特にその世代は強力なボスママとやらが牛耳っていた。
 協力的でない両親の子供の私は嫌われ、あっという間にいじめのターゲットになった。
 親が率先していじめを先導しているのだ、当然先生も見てみぬふり。

 そんな学校、行く価値ある?
 幸い今は便利な時代で、ネット環境とお金さえあれば大抵の物は買える。

 私はそれからゲームに没頭する様になった。

 特に恋愛ゲームが好きで、その中でも「ラゴニアの聖女 ~竜の花嫁は世界を救う~ 」ってゲームのフォンセ陛下は一番の推しだったの!

 だから、世間では中二になったはずのある日、ゲームしてて寝オチして、起きたらゲームの中の世界に転移して。
 私は運命だと思った。
 不幸な私の境遇を不憫に思った神様が与えてくれた、私の為の世界なんだと。

 必死にやり込んだゲーム知識をちょちょいと利用すれば、面白い様に竜王達は私に夢中になった。

 だけど……何でか私のフォンセ様だけ反応が鈍いんだ。
 ゲームでもかなり攻略難度が高いキャラだったからなぁ……。
 さあ、どう攻略しようかな?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!

naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』 シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。 そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─ 「うふふ、計画通りですわ♪」 いなかった。 これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である! 最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

お一人様大好き30歳、異世界で逆ハーパーティー組まされました。

彩世幻夜
恋愛
今日が30歳の誕生日。 一人飲みでプチ贅沢した帰りに寄った神社で異世界に召喚されてしまった。 待っていたのは人外のイケメン(複数)。 は? 世界を救え? ……百歩譲ってそれは良い。 でも。こいつらは要りません、お一人様で結構ですからあぁぁぁ! 男性不信を拗らせた独身喪女が逆ハーパーティーと一緒に冒険に出るとか、どんな無理ゲーですか!? ――そんなこんなで始まる勇者の冒険の旅の物語。 ※8月11日完結

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

ウロボロス「竜王をやめます」

ケモトカゲ
ファンタジー
100年に1度蘇るという不死の竜「ウロボロス」 強大な力を持つが故に歴代の勇者たちの試練の相手として、ウロボロスは蘇りと絶命を繰り返してきた。 ウロボロス「いい加減にしろ!!」ついにブチギレたウロボロスは自ら命を断ち、復活する事なくその姿を消した・・・ハズだった。 ・作者の拙い挿絵付きですので苦手な方はご注意を ・この作品はすでに中断しており、リメイク版が別に存在しております。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...