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第七章 竜王会議と異界の娘

悪役令嬢って何ですか?

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 「え、何、コレ」

 「あー、キスマーク……ですね。こんな場所に作るなんて、完全に陛下の独占欲の賜物でしょう」
 風呂に入り、鏡で見て驚いた私に、サーリャが嬉しそうに楽しそうに、それが何なのか教えてくれた。

 それは、胸まで空いた様な扇情的なドレスを着なくとも、僅かに首元に余裕のあるドレス――立ち襟さえなければ普通に見えてしまう場所にある。

 カッと頬が火照る。

 やばい、今日こそ恥ずか死ぬ。今日こそ寝れない……!
 なのに、昨夜と同じようにフォンセ様と同じベッドに入り、同じように陛下に寝かしつけられたら、堪らず素直に寝ちゃう私って……!

 もう、泣きたい……。

 そして翌日。陛下を含めて闇の国の側近達は皆臨戦態勢で会議に臨んだ。
 その内の誰も、あの不愉快な予言を真に受ける人は居ない。

 なのに……だ。

 「これをご覧ください」

 会議場の机に並べられたのは、私が研究で毒を作成している証拠と称した資料の数々。

 いえ、私が研究しているのは農業についてです。
 確かに虫対策の農薬として殺虫効果のある薬草の研究をしたことはあります。
 虫を殺すんですからそれは毒に分類されるんでしょうが、皆さん一度も虫除けとか使った事無いんですか。

 ……確かにここしばらくは研究ではなく授業として、影の長さんに毒の作り方を教わったりしましたが、それだって、人を殺すような毒薬は一つも教わっていません。

 あくまで逃げるために一時的に眠ったり麻痺して貰ったりする程度の毒薬です。

 それについては陛下も宰相も軍務大臣も承知の上。
 ……多少長さんが暴走した感は否めないのだけど。
 けど、彼との授業を認めたのは彼らなのだから、当然その証拠を一笑に付した。

 ……なのに。

 「まあっ、こんな“悪役令嬢”を庇うなんて……。その女にそれだけ洗脳されてしまっているのですね……お可哀そうに」
 とシクシク泣いてみせるのだ、聖女は。

 そして、
 「こうして証拠もあるのに何故聖女を疑う!」
 リートは頑なに聖女を庇う。

 ホルアス陛下はどっちつかずの態度で煮えきらず、私を庇うことも聖女を擁護する事もない。

 だが、他の竜王は私に疑惑の目を向け始める。

 そんな、何で!

 て言うか悪役令嬢って何? 私は悪い事なんて何もしてないのに。
 娯楽小説の読み過ぎなんじゃないの?

 こんな中でも陛下と側近達は私を庇って戦ってくれている。

 その、中で。

 「――え、何?」

 突如私の足元が光った。
 何事かと見れば、魔法陣が私を中心に展開していて。

 「やっ、何……!」

 「エルシエル!」
 焦った陛下の顔を見たのを最後に、私の視界は黒に染まった。
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