67 / 119
第七章 竜王会議と異界の娘
悪役令嬢って何ですか?
しおりを挟む
「え、何、コレ」
「あー、キスマーク……ですね。こんな場所に作るなんて、完全に陛下の独占欲の賜物でしょう」
風呂に入り、鏡で見て驚いた私に、サーリャが嬉しそうに楽しそうに、それが何なのか教えてくれた。
それは、胸まで空いた様な扇情的なドレスを着なくとも、僅かに首元に余裕のあるドレス――立ち襟さえなければ普通に見えてしまう場所にある。
カッと頬が火照る。
やばい、今日こそ恥ずか死ぬ。今日こそ寝れない……!
なのに、昨夜と同じようにフォンセ様と同じベッドに入り、同じように陛下に寝かしつけられたら、堪らず素直に寝ちゃう私って……!
もう、泣きたい……。
そして翌日。陛下を含めて闇の国の側近達は皆臨戦態勢で会議に臨んだ。
その内の誰も、あの不愉快な予言を真に受ける人は居ない。
なのに……だ。
「これをご覧ください」
会議場の机に並べられたのは、私が研究で毒を作成している証拠と称した資料の数々。
いえ、私が研究しているのは農業についてです。
確かに虫対策の農薬として殺虫効果のある薬草の研究をしたことはあります。
虫を殺すんですからそれは毒に分類されるんでしょうが、皆さん一度も虫除けとか使った事無いんですか。
……確かにここしばらくは研究ではなく授業として、影の長さんに毒の作り方を教わったりしましたが、それだって、人を殺すような毒薬は一つも教わっていません。
あくまで逃げるために一時的に眠ったり麻痺して貰ったりする程度の毒薬です。
それについては陛下も宰相も軍務大臣も承知の上。
……多少長さんが暴走した感は否めないのだけど。
けど、彼との授業を認めたのは彼らなのだから、当然その証拠を一笑に付した。
……なのに。
「まあっ、こんな“悪役令嬢”を庇うなんて……。その女にそれだけ洗脳されてしまっているのですね……お可哀そうに」
とシクシク泣いてみせるのだ、聖女は。
そして、
「こうして証拠もあるのに何故聖女を疑う!」
リートは頑なに聖女を庇う。
ホルアス陛下はどっちつかずの態度で煮えきらず、私を庇うことも聖女を擁護する事もない。
だが、他の竜王は私に疑惑の目を向け始める。
そんな、何で!
て言うか悪役令嬢って何? 私は悪い事なんて何もしてないのに。
娯楽小説の読み過ぎなんじゃないの?
こんな中でも陛下と側近達は私を庇って戦ってくれている。
その、中で。
「――え、何?」
突如私の足元が光った。
何事かと見れば、魔法陣が私を中心に展開していて。
「やっ、何……!」
「エルシエル!」
焦った陛下の顔を見たのを最後に、私の視界は黒に染まった。
「あー、キスマーク……ですね。こんな場所に作るなんて、完全に陛下の独占欲の賜物でしょう」
風呂に入り、鏡で見て驚いた私に、サーリャが嬉しそうに楽しそうに、それが何なのか教えてくれた。
それは、胸まで空いた様な扇情的なドレスを着なくとも、僅かに首元に余裕のあるドレス――立ち襟さえなければ普通に見えてしまう場所にある。
カッと頬が火照る。
やばい、今日こそ恥ずか死ぬ。今日こそ寝れない……!
なのに、昨夜と同じようにフォンセ様と同じベッドに入り、同じように陛下に寝かしつけられたら、堪らず素直に寝ちゃう私って……!
もう、泣きたい……。
そして翌日。陛下を含めて闇の国の側近達は皆臨戦態勢で会議に臨んだ。
その内の誰も、あの不愉快な予言を真に受ける人は居ない。
なのに……だ。
「これをご覧ください」
会議場の机に並べられたのは、私が研究で毒を作成している証拠と称した資料の数々。
いえ、私が研究しているのは農業についてです。
確かに虫対策の農薬として殺虫効果のある薬草の研究をしたことはあります。
虫を殺すんですからそれは毒に分類されるんでしょうが、皆さん一度も虫除けとか使った事無いんですか。
……確かにここしばらくは研究ではなく授業として、影の長さんに毒の作り方を教わったりしましたが、それだって、人を殺すような毒薬は一つも教わっていません。
あくまで逃げるために一時的に眠ったり麻痺して貰ったりする程度の毒薬です。
それについては陛下も宰相も軍務大臣も承知の上。
……多少長さんが暴走した感は否めないのだけど。
けど、彼との授業を認めたのは彼らなのだから、当然その証拠を一笑に付した。
……なのに。
「まあっ、こんな“悪役令嬢”を庇うなんて……。その女にそれだけ洗脳されてしまっているのですね……お可哀そうに」
とシクシク泣いてみせるのだ、聖女は。
そして、
「こうして証拠もあるのに何故聖女を疑う!」
リートは頑なに聖女を庇う。
ホルアス陛下はどっちつかずの態度で煮えきらず、私を庇うことも聖女を擁護する事もない。
だが、他の竜王は私に疑惑の目を向け始める。
そんな、何で!
て言うか悪役令嬢って何? 私は悪い事なんて何もしてないのに。
娯楽小説の読み過ぎなんじゃないの?
こんな中でも陛下と側近達は私を庇って戦ってくれている。
その、中で。
「――え、何?」
突如私の足元が光った。
何事かと見れば、魔法陣が私を中心に展開していて。
「やっ、何……!」
「エルシエル!」
焦った陛下の顔を見たのを最後に、私の視界は黒に染まった。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!
naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』
シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。
そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─
「うふふ、計画通りですわ♪」
いなかった。
これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である!
最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
お一人様大好き30歳、異世界で逆ハーパーティー組まされました。
彩世幻夜
恋愛
今日が30歳の誕生日。
一人飲みでプチ贅沢した帰りに寄った神社で異世界に召喚されてしまった。
待っていたのは人外のイケメン(複数)。
は? 世界を救え?
……百歩譲ってそれは良い。
でも。こいつらは要りません、お一人様で結構ですからあぁぁぁ!
男性不信を拗らせた独身喪女が逆ハーパーティーと一緒に冒険に出るとか、どんな無理ゲーですか!?
――そんなこんなで始まる勇者の冒険の旅の物語。
※8月11日完結
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
ウロボロス「竜王をやめます」
ケモトカゲ
ファンタジー
100年に1度蘇るという不死の竜「ウロボロス」
強大な力を持つが故に歴代の勇者たちの試練の相手として、ウロボロスは蘇りと絶命を繰り返してきた。
ウロボロス「いい加減にしろ!!」ついにブチギレたウロボロスは自ら命を断ち、復活する事なくその姿を消した・・・ハズだった。
・作者の拙い挿絵付きですので苦手な方はご注意を
・この作品はすでに中断しており、リメイク版が別に存在しております。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる