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第七章 竜王会議と異界の娘
聖女の予言
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「……まぁ、今日の今日で突然こんな事言われて信じられないのは分かる。初めは俺もそうだったからな」
うんうんと一人で頷き一人で納得するリート様。
「だから、彼女がした予言の一つをここで明かそう。その結果を見届けた後でもう一度よく考えて欲しい。さあ、ハナ。俺に聞かせてくれた予言を皆にも聞かせてくれ」
「はい、竜王様」
……うん、声も可愛らしいね、この子。男性に好まれそうな声だ。
「実はそちらの彼女――エルシエルは闇の竜王陛下を謀る悪女なのでございます。近々彼女の悪行は日の下に晒され、彼女は恥を偲んで陛下の下を去るでしょう」
だけど。その可愛い声で紡がれたのは、酷い虚構だった。
「――くだらぬ。彼女は真っ当に選考会で数居た候補の中から選ばれた花嫁だ。それについてはホルアス陛下も承知の上だぞ。それを承知の上で、私の花嫁を侮辱するか」
それに対し、フォンセ様が抗議して下さる。
「今は、何とでも。ですが必ず私の言葉が真実であったと悟る日が来るでしょう」
「そう言う事だ」
今日は元々顔合わせのみで終わる予定の会議だったと言う事で、そのままお開きになった。
すぐに部屋へ戻った陛下はこの事を側近達に伝え、警戒を命じた。
「何と無礼な! 我らは半年以上共に居て、人となりも見抜けぬ無能とでも言いたいのか! 言いがかりも甚だしい!」
レイン宰相が怒りを顕にする。
「我らを見下すのはもう常であるとはいえ、元は光の国の生まれの花嫁まで貶めにかかるとは」
アスモさんも悔しげに拳を握りしめた。
「済まない。不愉快だっただろう?」
「……あの聖女様の発言や、他の竜王様の態度は不愉快でしたけど、それはフォンセ様のせいではないでしょう? フォンセ様に謝って貰う事は何もありません。むしろホルアス陛下まであんな……。光の国の民として恥ずかしい……。私の方こそ謝らないと……」
「それこそエルシエルの責任ではない。……その様に思ってくれる花嫁を迎えられる私は幸運だ」
そう言って陛下は私を腕の中に閉じ込める。
……それが心地良いと安心する私は……フォンセ様が好きなんだと改めて自覚する。
私は、彼女に花嫁の立場を譲りたくない。
けど……世界の為に本当にそれが必要なんだとしたら?
フォンセ様が、ヘイアン様の様な苦痛を味あわなくて済むなら……私は身を引くべきなのでは……?
「何を悩んでいる? 話してくれないか?」
私を抱きしめたまま陛下に促される。
「例えそうだとしても……私は既に番を決めてしまった。もう、新たな番は選べぬ」
陛下の顔が私の頬をかすめ、滑らかな髪が触れる。
「んっ……」
唇が首筋に触れ、強く吸われる。
牙は――突き立てられてはいないのに……?
「エルシエルだけが、私の花嫁だ」
熱のこもった言葉が耳をくすぐった。
うんうんと一人で頷き一人で納得するリート様。
「だから、彼女がした予言の一つをここで明かそう。その結果を見届けた後でもう一度よく考えて欲しい。さあ、ハナ。俺に聞かせてくれた予言を皆にも聞かせてくれ」
「はい、竜王様」
……うん、声も可愛らしいね、この子。男性に好まれそうな声だ。
「実はそちらの彼女――エルシエルは闇の竜王陛下を謀る悪女なのでございます。近々彼女の悪行は日の下に晒され、彼女は恥を偲んで陛下の下を去るでしょう」
だけど。その可愛い声で紡がれたのは、酷い虚構だった。
「――くだらぬ。彼女は真っ当に選考会で数居た候補の中から選ばれた花嫁だ。それについてはホルアス陛下も承知の上だぞ。それを承知の上で、私の花嫁を侮辱するか」
それに対し、フォンセ様が抗議して下さる。
「今は、何とでも。ですが必ず私の言葉が真実であったと悟る日が来るでしょう」
「そう言う事だ」
今日は元々顔合わせのみで終わる予定の会議だったと言う事で、そのままお開きになった。
すぐに部屋へ戻った陛下はこの事を側近達に伝え、警戒を命じた。
「何と無礼な! 我らは半年以上共に居て、人となりも見抜けぬ無能とでも言いたいのか! 言いがかりも甚だしい!」
レイン宰相が怒りを顕にする。
「我らを見下すのはもう常であるとはいえ、元は光の国の生まれの花嫁まで貶めにかかるとは」
アスモさんも悔しげに拳を握りしめた。
「済まない。不愉快だっただろう?」
「……あの聖女様の発言や、他の竜王様の態度は不愉快でしたけど、それはフォンセ様のせいではないでしょう? フォンセ様に謝って貰う事は何もありません。むしろホルアス陛下まであんな……。光の国の民として恥ずかしい……。私の方こそ謝らないと……」
「それこそエルシエルの責任ではない。……その様に思ってくれる花嫁を迎えられる私は幸運だ」
そう言って陛下は私を腕の中に閉じ込める。
……それが心地良いと安心する私は……フォンセ様が好きなんだと改めて自覚する。
私は、彼女に花嫁の立場を譲りたくない。
けど……世界の為に本当にそれが必要なんだとしたら?
フォンセ様が、ヘイアン様の様な苦痛を味あわなくて済むなら……私は身を引くべきなのでは……?
「何を悩んでいる? 話してくれないか?」
私を抱きしめたまま陛下に促される。
「例えそうだとしても……私は既に番を決めてしまった。もう、新たな番は選べぬ」
陛下の顔が私の頬をかすめ、滑らかな髪が触れる。
「んっ……」
唇が首筋に触れ、強く吸われる。
牙は――突き立てられてはいないのに……?
「エルシエルだけが、私の花嫁だ」
熱のこもった言葉が耳をくすぐった。
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