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第七章 竜王会議と異界の娘

陛下と一緒

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 「こちらがお部屋になります。お食事はこちらにお運び致します。くれぐれも案内なく外に出よう等とは考えない様お願いします」

 竜便から降りた私達が案内された部屋は――

 「……使用人部屋?」
 それも個室ではない、大部屋の。

 男爵家の令嬢である私でも良く言って質素だと思うような部屋。
 選考会の時に用意してもらった部屋より遥かに劣る部屋を用意された。
 婚姻前の今、まだ男爵家の娘である私だけならまだしも、一国の王とその側近、しかも公爵家のご当主を通す様な部屋では決してない。

 私の家を訪ねて下さったフィリップ様とアスモ様がお泊りになった村の宿よりは広さは若干マシかもしれない。
 だけど、清潔さならあの宿の方が上だったはずだ。
 あまり日の入らない、ジメッとした部屋。

 本来日の出ない闇の国の昼間より暗い部屋。

 しかも極めつけが。

 「……えぇと、ベッド、足りませんよね?」
 「アスモは床で寝てもらうとしても、それでもまだ一つ足りませんね」
 「あの、私も床で……」
 「何をおっしゃいます。我らの大事なエルシエル様を床で寝かせるなどありえませんよ。陛下と一緒に寝て下さい」
 「へ、婚姻前なのですが?」
 「陛下、良いですよね? 勿論婚姻前のお嬢様に手を出すなんて紳士らしからぬ真似はなさいませんよね?」
 「う、うむ……」
 「ではこれで解決ですね」

 ……宰相様のゴリ押しで、今夜は陛下と一緒のベッドで寝る事になってしまった。
 嫌……とは言わないけど気恥ずかしいじゃ済まないくらい、今夜は眠れる気がしない。

 ……しなかった、のだが。

 「え、何これ」

 運ばれてきた昼食に、思わず二度見してしまった。

 それは、男爵家で普段食べる食事より尚質素、どころか男爵家の使用人の食事より質素な食事だった。

 「パンとスープとチーズだけ? この、農業大国と言われるグラン・グノーシスで?」

 流石にパンは焼き立てだし、スープも具はしっかり入っているし味もしっかりついているけど。

 どう考えても一国の王に出す食事ではない。
 災害時などの緊急時であればいざしらず、この平時にこの扱いとは。

 「我々は嫌われ者なのですよ」
 「え?」
 「我々は毒を撒き散らし、少女から無理やり血を貪る野蛮な国の住人。それが、多くの者の認識なのです」

 何を、言っているのだろうか?
 エルシエルは咄嗟に理解できなかった。

 彼らの奮闘がなければ、世界は滅んでしまうのに?

 「勿論理屈としては理解していますよ、竜王達はね。
 ……ですが、歴代の竜王が恐れる少女に犠牲を強いたのは事実。
 そして闇の国にて負のエネルギーを常に浴びる我らからわずかに漏れる負のエネルギーが、他の国の民にプレッシャーを与える事も事実。
 故に、嫌われ者のレッテルを剥がすのはなかなかに難しくて」

 その宰相様の言葉を否定する者は、誰も居なかった――
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