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第七章 竜王会議と異界の娘

憧れのグラン・グノーシス

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 「うわぁ……」

 流石にもう、竜便如きでは驚かない。
 竜便どころかフォンセの手に乗って空を飛んだことがあるのだから。

 だけど、研究者として憧れの地、グラン・グノーシスの実り豊かな畑の景色は、やっぱりエルシエルを魅了する。

 思わず感嘆の声が漏れるくらいには。

 「楽しそうだな?」
 「はい、もし時間に余裕があれば種や苗を仕入れて研究したいですね。闇の国で活かせる何かがないかどうか」

 やがて竜便は徐々に高度を落とし、見えてきた城の前に降り立った。

 光の国の城は白く華奢な城。
 闇の国は無骨で頑丈な黒い城。

 そして、地の国の城は――

 「広い……」

 とにかく広かった。

 高い建物はあまりないが、上から見ても、光の国の城を城下町ごと囲ってもまだ足りないくらいに広かった。

 「ダルク・アンダーの城さえまだたまに迷いそうになるのに……。案内の人が居なくなったら私、即迷える自信作あるわ……」

 「それは困るな。……これを着けて居ると良い、エルシエルが迷子になっても私がすぐに迎えに行ける」

 フオンセが出してきたのは黒い石の様な物を金色の台座で受け止めた首飾りだった。

 「ありがとうございます」

 竜便は、城の前のこれまた広い――竜便が五便は並べそうな広場に降り立った。

 すると城の門からグラン・グノーシスの者と思われる数人がこちらに駆けて来る。

 「それと……すまない。竜王会議の間、不愉快な事が続くだろう。何かあったらすぐに私に、私の手が空かないなら側近の誰でも良い、すぐに報告してくれ。絶対に一人で抱え込むな」

 「え?」

 どう言う事か。尋ねようとするも。

 「貴様ら何奴!」
 「――え?」
 私達の乗る竜便に槍の穂先を向け誰何する兵士達。

 てっきり国賓を出迎えに来たものと思っていたのに、まさかの対応に、エルシエルは混乱する。

 重要な国際会議の参加者、それも代表は各国の王と分かっているはず。
 なのにこの対応はナイよね?

 なのに陛下たちは怒ることなく諦観の眼差しを兵士に向けるだけだ。

 「我らは竜王会議に出席する為に参った。私は新竜王となるフォンセと申す。先代のヘイアン陛下の命は既に風前の灯。故にこの会議で私の新王就任及び、私の花嫁の承認を願いたく参った。招待状はこれに。確認するが良い」

 「私は闇の国ダルク・アンダーの宰相を務めるレイン=ドラグルージュ。こちらが控えになります、ご確認を」

 「……確かに本物の様だ。しかし不用意な行動は控えよ。そなた等は常に見張られていると心得よ」

 ……は? 国の代表に失礼を働いておいて謝りもしないの?

 こうして。竜王会議は始まる前から不穏な空気が流れ始めていた……。
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