闇の吸血竜王に嫁入りします!

彩世幻夜

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第五章 嫁入り支度は慌ただしく

竜王会議開催の知らせ

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 闇の国に移り住んで、そろそろ半年が経つ。

 当初一年かける筈だった王妃教育は、後から加わった護身術(?)を除いて全て終わった……と言うか、後から聞いて知ったんだけど、最初に予定されてた王妃教育の範囲は最初の一月余りで終わってたんだそう。

 残りは学者の暴走で詰め込まれた、あれば役立つ専門知識だったらしい。陛下が私の無理に気付いてくれて一喝してくれたんだそうだ。
 ……フォンセ陛下様々ですよ、はい。

 だから後は陛下のお仕事を手伝いつつ、仕事を覚えて処理可能な書類を増やし、陛下の仕事を減らすのが私の今の目標だったりする。

 そんな毎日を送っていたある日の事。

 陛下の執務室に、一通の封書を銀の盆に乗せた執事がやって来た。
 その時には私は普通にスルーしてた。

 だって執務してたら手紙の一通や二通や三通……いや数十来るのが当たり前だしそれ以上に手紙を各所に書いて使用人に持たせて送らせるなんて日常茶飯事なんだもん。

 まあ、雑多なお手紙に比べたら随分恭しく持ってきたな、とは思ったけどさ。

 「……ついに来たな」

 だけど、その封書を開けて中身を一瞥したフォンセ陛下は複雑な顔で封書を宰相様の方へ放った。

 「竜王会議……。ようやくエルシエル様を他の竜王にお披露目し、婚姻を正式に発表できますね。
 ここで婚姻を承認されれば、結婚式に臨める。
 まあ承認なんて形式的なものですがね、無視すると伝統云々格式云々他  諸々ととてつもなく面倒臭いから律儀に待っただけですし」

 「ヘイアン様の容態ももう限界が近い。……タイミング的に戴冠と結婚式は一緒になりそうだ」

 少しだけ陛下の顔が曇る。

 「間に合えば、良いのだがな」

 竜王会議は一月後。地の国グラン・グノーシスで行われると言う。

 私は先代陛下にあの時以来会わせて貰っていない。
 「……もう、正気でいるのかどうか。陛下や我々なら誤って攻撃されてもいなせますが、人間のエルシエル様には致命的な攻撃となる可能性が高いのです」
 と、宰相様が言うので。

 竜王が負う物は、それだけ重い。
 その荷物を軽くしてあげられるのは花嫁の血だけ。

 フオンセ陛下は、既に実務的な業務は全て担っているが、まだそのお役目だけは先代が担っている。
 だからまだ陛下に負担は無い。

 だけど、正式に戴冠したらその全てが陛下の肩にのしかかる。

 陛下はその事を嫌だとは言わない。
 もう、覚悟を決めているんだ。

 そんな陛下を少しでも支えられる様頑張る私を、陛下はニコニコしながら撫でてくれる。
 ……たまに宰相様の顔色を伺ってるのは……気のせいだよね?

 そんな平和な毎日が。
 まさか乱される事になるとはこの時は闇の国の誰も思わず。

 私達は、竜王会議に臨んだのだった。
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