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第六章 闇の国の王妃教育
進捗状況報告〈フォンセ視点〉
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「素晴らしい逸材です!」
彼らは揃いも揃って目を輝かせながら報告してきた。
報告書を見れば呆れるしかない。
「随分と、やり過ぎな気がするんだが」
どの教科も、本来王妃教育として必要な域を大幅に越えて専門的な知識を詰め込まれている。
「それは……その、飲み込みも早く、学習意欲も高いのでつい調子に乗りまして……」
「一つ、二つなら――得意教科であればそれも良いだろう。だが彼女は今ありとあらゆる分野の勉強を一度にこなしている。その大半でやり過ぎが報告されているのだが?」
そう、エルシエルが得意な座学でダウンした訳はここにあった。
決してエルシエルが駄目な訳ではなく、むしろ優秀過ぎたのが仇となったとしか言い様がない。
唯一マナーだけは、
「まあまあですね。……一度覚えた習慣を覚え直すのは難しいものです。それを思えば良くやっていますよ」
と評価されていたが。
「彼女は私の大事な花嫁だ。無理をさせて潰されては困るのだが?」
最近、夕飯時のエルシエルが疲れ気味な事が増えていた。
あの元気が取り柄と言わんばかりの、エルシエルが。
王妃教育が大変なのかと、少し調整出来ないか報告書を上げさせた結果がコレだ。
一部の教科を除き、既に王妃教育として必要な部分の勉強は終わっていた。
残りも当初予定していたスケジュールの半分もかからず終わりそうなペースだ。
唯一マナーレッスンだけはほぼ予定通りではあるが。
フォンセはさっきまで目を輝かせていたものの、一転して顔色を悪くした教師陣に氷点下の眼差しを向けた。
「ロナルド。スケジュール管理はお前に任せていたはずだな? 私はお前を信用してエルシエルにつけたのだが?」
「申し訳ございません! 授業の内容については教師に一任し、確認を怠っておりました。処罰は甘んじてお受け致します」
「今後、各教科週に一コマあれば十分だな?」
「はい」
「ならば、これから午後は私の仕事を少し覚えてもらおう」
「……陛下、口元が緩んでおられますよ」
「エルシエルと仕事をすると思うと……ついな」
「エルシエル様は優秀でいらっしゃいます。陛下も頑張らねばあっという間に追い越されてしまうかもしれせんよ?」
「………………」
「仕事、頑張ってくださいね?」
書類の山を執務机に乗せながら、宰相が微笑む。
「う、うむ……。しかし、エルシエルが頑張ってくれたおかげで婚姻は随分と早められそうだな?」
「多少は早められるでしょうが、竜王会議の時期や来賓の方々の都合もございますから。大幅な変更は無理ですよ」
「だが、出来るだけ早く頼む」
「はい、かしこまりました、陛下」
彼らは揃いも揃って目を輝かせながら報告してきた。
報告書を見れば呆れるしかない。
「随分と、やり過ぎな気がするんだが」
どの教科も、本来王妃教育として必要な域を大幅に越えて専門的な知識を詰め込まれている。
「それは……その、飲み込みも早く、学習意欲も高いのでつい調子に乗りまして……」
「一つ、二つなら――得意教科であればそれも良いだろう。だが彼女は今ありとあらゆる分野の勉強を一度にこなしている。その大半でやり過ぎが報告されているのだが?」
そう、エルシエルが得意な座学でダウンした訳はここにあった。
決してエルシエルが駄目な訳ではなく、むしろ優秀過ぎたのが仇となったとしか言い様がない。
唯一マナーだけは、
「まあまあですね。……一度覚えた習慣を覚え直すのは難しいものです。それを思えば良くやっていますよ」
と評価されていたが。
「彼女は私の大事な花嫁だ。無理をさせて潰されては困るのだが?」
最近、夕飯時のエルシエルが疲れ気味な事が増えていた。
あの元気が取り柄と言わんばかりの、エルシエルが。
王妃教育が大変なのかと、少し調整出来ないか報告書を上げさせた結果がコレだ。
一部の教科を除き、既に王妃教育として必要な部分の勉強は終わっていた。
残りも当初予定していたスケジュールの半分もかからず終わりそうなペースだ。
唯一マナーレッスンだけはほぼ予定通りではあるが。
フォンセはさっきまで目を輝かせていたものの、一転して顔色を悪くした教師陣に氷点下の眼差しを向けた。
「ロナルド。スケジュール管理はお前に任せていたはずだな? 私はお前を信用してエルシエルにつけたのだが?」
「申し訳ございません! 授業の内容については教師に一任し、確認を怠っておりました。処罰は甘んじてお受け致します」
「今後、各教科週に一コマあれば十分だな?」
「はい」
「ならば、これから午後は私の仕事を少し覚えてもらおう」
「……陛下、口元が緩んでおられますよ」
「エルシエルと仕事をすると思うと……ついな」
「エルシエル様は優秀でいらっしゃいます。陛下も頑張らねばあっという間に追い越されてしまうかもしれせんよ?」
「………………」
「仕事、頑張ってくださいね?」
書類の山を執務机に乗せながら、宰相が微笑む。
「う、うむ……。しかし、エルシエルが頑張ってくれたおかげで婚姻は随分と早められそうだな?」
「多少は早められるでしょうが、竜王会議の時期や来賓の方々の都合もございますから。大幅な変更は無理ですよ」
「だが、出来るだけ早く頼む」
「はい、かしこまりました、陛下」
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