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第五章 嫁入り支度は慌ただしく
一時帰国
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帰りの竜便に同乗するのは、結果を光の国へ報告する役の礼部大臣と、護衛役の軍務大臣、そして光の国に居る間に何かあってはいけないと私個人につけられた護衛のお馴染みの騎士クルト。
令嬢達の顔色は随分と晴れやかだ。
私は、と言えば――昨日、結局聞きそびれてしまった問いの答えを探して思い悩んでいた。
え、お昼ご飯?
勿論美味しくいただきましたが何か?
ぽけーっと席に座って景色を眺めつつ考え事……してたらいつの間にか光の国セイン・ライトランドに到着していた。
その足でそのまま謁見の間に連れて行かれる。
「よく戻った。……それで、結果はいかに?」
「は、我ら闇の国ダルク・アンダーは、エルシエル=プランツ男爵令嬢を、我らが新王陛下の花嫁として貰い受けたく存じます」
その答えに、謁見の間はざわめいた。
「花嫁の身支度が済み次第、我らが闇の国でお預かりし、王妃に相応しい教養を身に着けていただき、竜王会議に臨みたいと存じます」
「――あい、分かった。これはいにしえよりの決まり事。われら光の国に否やはない。公式な手続きはこちらで済ませる。そなた等はプランツ男爵一家へ結果を告げに行くと良い」
「はっ、……ですが、その前に――」
「その件については既に公爵家に対し抗議をしている。……嫁入り支度の資金をしていただけるそうだ」
その会話にリュセ様が震えた。
「それは、ありがたい。ではその話を土産に我らはこれより男爵家へ向かいたいと存じます」
「先触れは既に出した。――健闘を祈る」
こうして謁見は終了し、私は王家が用意した馬車に乗り換え、一路我が家へと向かう。
勿論タウンハウスではなくマナーハウスの方へ。
けど、もう夜は近い。
今日は王都の宿に泊まって明日男爵家へ行く事になった。
私一人ならタウンハウスへ行けば良いんだけど、護衛のクルト――(さん付けいらないって本人に言われたので、最近呼び捨てにしてる)が居るから、確実に使用人はパニックを起こす。
そうと分かっているから、私は大人しく宿の一人部屋でベッドに入った。
扉の外にはクルト。
頑丈な竜人だから大丈夫と言って寝ずの番をしてくれるんだそうだ。……野宿でもないのに。
はぁ、私が本当に竜王陛下の花嫁に選ばれたって知ったら両親は腰を抜かすだろうなぁ……。
お兄ちゃんは泣くかもしれない。
でも……。
何かさっきから陛下の笑顔が脳裏を離れない。
本人は居ないのに、何でかドキドキするんだ。
……本人が居る時に比べたらささやかだけど。
多分、私はフォンセ陛下を好きになってしまったんだろうな、と。
自分がするとは思えなかった恋をこんな形でする事になるとは、自分でも思わなかったんだから、それは家族は驚くよね。
「……認めてくれるといいけど」
令嬢達の顔色は随分と晴れやかだ。
私は、と言えば――昨日、結局聞きそびれてしまった問いの答えを探して思い悩んでいた。
え、お昼ご飯?
勿論美味しくいただきましたが何か?
ぽけーっと席に座って景色を眺めつつ考え事……してたらいつの間にか光の国セイン・ライトランドに到着していた。
その足でそのまま謁見の間に連れて行かれる。
「よく戻った。……それで、結果はいかに?」
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その答えに、謁見の間はざわめいた。
「花嫁の身支度が済み次第、我らが闇の国でお預かりし、王妃に相応しい教養を身に着けていただき、竜王会議に臨みたいと存じます」
「――あい、分かった。これはいにしえよりの決まり事。われら光の国に否やはない。公式な手続きはこちらで済ませる。そなた等はプランツ男爵一家へ結果を告げに行くと良い」
「はっ、……ですが、その前に――」
「その件については既に公爵家に対し抗議をしている。……嫁入り支度の資金をしていただけるそうだ」
その会話にリュセ様が震えた。
「それは、ありがたい。ではその話を土産に我らはこれより男爵家へ向かいたいと存じます」
「先触れは既に出した。――健闘を祈る」
こうして謁見は終了し、私は王家が用意した馬車に乗り換え、一路我が家へと向かう。
勿論タウンハウスではなくマナーハウスの方へ。
けど、もう夜は近い。
今日は王都の宿に泊まって明日男爵家へ行く事になった。
私一人ならタウンハウスへ行けば良いんだけど、護衛のクルト――(さん付けいらないって本人に言われたので、最近呼び捨てにしてる)が居るから、確実に使用人はパニックを起こす。
そうと分かっているから、私は大人しく宿の一人部屋でベッドに入った。
扉の外にはクルト。
頑丈な竜人だから大丈夫と言って寝ずの番をしてくれるんだそうだ。……野宿でもないのに。
はぁ、私が本当に竜王陛下の花嫁に選ばれたって知ったら両親は腰を抜かすだろうなぁ……。
お兄ちゃんは泣くかもしれない。
でも……。
何かさっきから陛下の笑顔が脳裏を離れない。
本人は居ないのに、何でかドキドキするんだ。
……本人が居る時に比べたらささやかだけど。
多分、私はフォンセ陛下を好きになってしまったんだろうな、と。
自分がするとは思えなかった恋をこんな形でする事になるとは、自分でも思わなかったんだから、それは家族は驚くよね。
「……認めてくれるといいけど」
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