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第四章 第二次選考会
第三課題
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「え、ちょっと……!?」
突然自分に跪いた使用人にエルシエルは慌てふためく――が。
「第三課題は既に実施されております。そして、今のお答えにて、我が国の次代の竜王の花嫁はエルシエル様で決定致しました」
「え、いつの間に!?」
「詳しい事は後程宰相様からご説明があるでしょう。その前に身支度を整えましょう」
まあ、いつまでも寝間着のままベッドに居座るのもなんだしね。
着替えてリビングへ行くと、宰相様が待機してらっしゃいました。
え、お待たせしてました?
「いえ、貴方が目覚めたと知らせを受けて今来たところですからお気になさらず」
そして、私は眠ったまま受けた覚えのない第三課題について聞いてみた。
「ああ。第三課題は闇の竜王の花嫁の一番大事な資質を試すものだったのですよ」
「はあ……?」
「竜便の中でも申し上げましたが、竜王陛下に血を差し出すことを厭う花嫁はあまり好ましくない、と言う事です。
既に他のお三方には陛下との個人面談に臨んでいただき、陛下に血をご提供いただきましたが、アリス様は恐怖から失神、リュセ様は泣き出し、スーザン様も隠してはおられましたが嫌悪が見られました。
まあ正直よくある事で、通常であればその程度は目を瞑るのですが、今回はあなたと言う逸材が居ましたから」
「え、私その面談受けてないけど……」
「面談など陛下と親睦を深めると言う名目ですから。既に光の国でも陛下とお喋りなさり、竜便でも我らの前で陛下と会話なさったでしょう? あれで十分ですよ」
「え、じゃあ吸血云々は……? 私の場合意識が無かった訳で……。イーブンとはとても……」
「寝起きの問答の報告は受けています。それで十分……なんですがねぇ。どうします、陛下?」
「へ?」
宰相の呼びかけに、扉が不意に開いて陛下が部屋に入って来た。
え、もしかしてずっと部屋の外に居ました?
「あわわわ、あ! あの、この度はお手数をおかけし申し訳……」
「――それについてはこちらの不手際だ。謝る必要はない。むしろこちらが謝罪せねばならん。同意を得ず吸血した事についても、だ」
……? 何だろう。何故か陛下の瞳の奥に感情の揺らぎが見えるような……。
「いえ、命を助けていただいて感謝しかありません。まだ死にたくなんかありませんから」
「……その答えで十分合格なんだがな。それでも他と同じ課題を受けるのか?」
「……はい。後で難癖つけられるのも面倒ですし」
「フッ、そっちの心配か。……良いだろう、後悔するなよ?」
突然自分に跪いた使用人にエルシエルは慌てふためく――が。
「第三課題は既に実施されております。そして、今のお答えにて、我が国の次代の竜王の花嫁はエルシエル様で決定致しました」
「え、いつの間に!?」
「詳しい事は後程宰相様からご説明があるでしょう。その前に身支度を整えましょう」
まあ、いつまでも寝間着のままベッドに居座るのもなんだしね。
着替えてリビングへ行くと、宰相様が待機してらっしゃいました。
え、お待たせしてました?
「いえ、貴方が目覚めたと知らせを受けて今来たところですからお気になさらず」
そして、私は眠ったまま受けた覚えのない第三課題について聞いてみた。
「ああ。第三課題は闇の竜王の花嫁の一番大事な資質を試すものだったのですよ」
「はあ……?」
「竜便の中でも申し上げましたが、竜王陛下に血を差し出すことを厭う花嫁はあまり好ましくない、と言う事です。
既に他のお三方には陛下との個人面談に臨んでいただき、陛下に血をご提供いただきましたが、アリス様は恐怖から失神、リュセ様は泣き出し、スーザン様も隠してはおられましたが嫌悪が見られました。
まあ正直よくある事で、通常であればその程度は目を瞑るのですが、今回はあなたと言う逸材が居ましたから」
「え、私その面談受けてないけど……」
「面談など陛下と親睦を深めると言う名目ですから。既に光の国でも陛下とお喋りなさり、竜便でも我らの前で陛下と会話なさったでしょう? あれで十分ですよ」
「え、じゃあ吸血云々は……? 私の場合意識が無かった訳で……。イーブンとはとても……」
「寝起きの問答の報告は受けています。それで十分……なんですがねぇ。どうします、陛下?」
「へ?」
宰相の呼びかけに、扉が不意に開いて陛下が部屋に入って来た。
え、もしかしてずっと部屋の外に居ました?
「あわわわ、あ! あの、この度はお手数をおかけし申し訳……」
「――それについてはこちらの不手際だ。謝る必要はない。むしろこちらが謝罪せねばならん。同意を得ず吸血した事についても、だ」
……? 何だろう。何故か陛下の瞳の奥に感情の揺らぎが見えるような……。
「いえ、命を助けていただいて感謝しかありません。まだ死にたくなんかありませんから」
「……その答えで十分合格なんだがな。それでも他と同じ課題を受けるのか?」
「……はい。後で難癖つけられるのも面倒ですし」
「フッ、そっちの心配か。……良いだろう、後悔するなよ?」
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