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第四章 第二次選考会
評価と嫉妬
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「本日午後、スーザン様が課題を提出されました。これで全員、第一課題課題が終了しました」
長机に並べられた紙束を前に宰相がにっこり微笑んだ。
「……明らかに異様なのが一つあるよな?」
せいぜい数枚の紙を束ねただけのレポートの中で、薄くとも本に近い厚さのあるそのレポートはほかを圧倒する存在感があった。
「はい。エルシエル様の課題です」
「あー、取りあえず読むか。……読まなきゃならんのだよな?」
「ええ、勿論。評価のためです」
机仕事を嫌う軍務大臣のアスモが渋い顔をするが。
国務大臣のベルフェルはむしろ愉快そうにその紙束を見下ろした。
「さて、何を書いたか。早速読ませてもらいたいが……私はそれを最後にじっくり読みたいのでね、他のレポートから読ませて貰うよ」
と、それぞれレポートを手に取る。
結果。
「公爵令嬢は母国で才女と呼ばれるだけあって、無難にまとめていますな」
「スーザン殿は……体力の方を優先して選びましたので……まぁ何とか纏まってる感じですか」
「アリス様の物は可もなく不可もなくと言った感じですなぁ」
そして最後、全員の目がエルシエルのレポートに向く。
「しかし……エルシエル様のレポートは素晴らしかったですな。
地理の基礎的な報告はこの国の者なら知っていて当たり前の事、しかしそこから我が国の現状を読み解き、改善の道筋になり得る案まで提示してきた。
今回は時間が足りなかったからこそですが、本腰を入れて研究していただけたらより有用な案が出て来るのではと期待したくなります」
「ははは。結婚相手に望むのは研究を続けさせてくれる事だけと豪語した娘だ。頼まずとも場所と予算を与えれば勝手に研究を始めると思うぞ?」
「ええ。陛下は金遣いも荒くないですし、暴力的でもありませんからね。彼女的には陛下の見た目も好みのようですし」
「やはり有力なのは彼女か」
「はい。ネックは身分ですが、その程度の事は簡単にどうにでもなりますから」
「未だに元気だもんなぁ、あの嬢ちゃん。ウチの飯も美味そうに食ってたし」
「第ニ候補としちゃ……公爵令嬢か。スーザン殿は期待した程耐性は無かったしな……」
「その辺り、第二審査で精査しましょう」
「そうだな」
――その頃。
「……ふぅ。ああ、息苦しくてたまらないわ」
ようやく課題を終わらせ、与えられた客室で寛ぐリュセはソファでぐったりしていた。
来た初日よりは少しマシになったものの、空気の薄い高い山の上にでも居るように呼吸が苦しくてたまらない。……ここは地底だと言うのに。
なのに何故だが候補に混じった男爵令嬢、それも人間ごときが何故ピンピンしていられるのか。
これまで失敗を知らず常に褒められて育った公爵令嬢の心に、知らず嫉妬の感情が、芽生え始めていた。
長机に並べられた紙束を前に宰相がにっこり微笑んだ。
「……明らかに異様なのが一つあるよな?」
せいぜい数枚の紙を束ねただけのレポートの中で、薄くとも本に近い厚さのあるそのレポートはほかを圧倒する存在感があった。
「はい。エルシエル様の課題です」
「あー、取りあえず読むか。……読まなきゃならんのだよな?」
「ええ、勿論。評価のためです」
机仕事を嫌う軍務大臣のアスモが渋い顔をするが。
国務大臣のベルフェルはむしろ愉快そうにその紙束を見下ろした。
「さて、何を書いたか。早速読ませてもらいたいが……私はそれを最後にじっくり読みたいのでね、他のレポートから読ませて貰うよ」
と、それぞれレポートを手に取る。
結果。
「公爵令嬢は母国で才女と呼ばれるだけあって、無難にまとめていますな」
「スーザン殿は……体力の方を優先して選びましたので……まぁ何とか纏まってる感じですか」
「アリス様の物は可もなく不可もなくと言った感じですなぁ」
そして最後、全員の目がエルシエルのレポートに向く。
「しかし……エルシエル様のレポートは素晴らしかったですな。
地理の基礎的な報告はこの国の者なら知っていて当たり前の事、しかしそこから我が国の現状を読み解き、改善の道筋になり得る案まで提示してきた。
今回は時間が足りなかったからこそですが、本腰を入れて研究していただけたらより有用な案が出て来るのではと期待したくなります」
「ははは。結婚相手に望むのは研究を続けさせてくれる事だけと豪語した娘だ。頼まずとも場所と予算を与えれば勝手に研究を始めると思うぞ?」
「ええ。陛下は金遣いも荒くないですし、暴力的でもありませんからね。彼女的には陛下の見た目も好みのようですし」
「やはり有力なのは彼女か」
「はい。ネックは身分ですが、その程度の事は簡単にどうにでもなりますから」
「未だに元気だもんなぁ、あの嬢ちゃん。ウチの飯も美味そうに食ってたし」
「第ニ候補としちゃ……公爵令嬢か。スーザン殿は期待した程耐性は無かったしな……」
「その辺り、第二審査で精査しましょう」
「そうだな」
――その頃。
「……ふぅ。ああ、息苦しくてたまらないわ」
ようやく課題を終わらせ、与えられた客室で寛ぐリュセはソファでぐったりしていた。
来た初日よりは少しマシになったものの、空気の薄い高い山の上にでも居るように呼吸が苦しくてたまらない。……ここは地底だと言うのに。
なのに何故だが候補に混じった男爵令嬢、それも人間ごときが何故ピンピンしていられるのか。
これまで失敗を知らず常に褒められて育った公爵令嬢の心に、知らず嫉妬の感情が、芽生え始めていた。
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