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第二章 第一次選考会

三日目

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 「……お嬢様、目の下にクマが出来ておりますが? 昨夜はお休みいただけませんでしたか?」

 侍女のユーリカが咎める様に苦言を呈した。

 「う……、その、ついつい読書が捗って……」

 昨夜、夕飯前に読んでいた本が読みかけだった。
 図書館の職員に尋ねたら貸し出し可(城外持出し厳禁)との事だったので、部屋に持ち帰り夕食後ベッドに入って読みふけり……気づけば朝だった。

 ここが城の部屋と言う事を除けばエルシエルにとってはよくある事――なのだが、ここは王城で、側に居るのはエルシエルの生態に慣れたカレンでなく王宮侍女。

 寝ずに恋愛小説を読みふけるお嬢様は居ても、学術書を読みふけるお嬢様と言うのは……

 「はぁ、時間がありますのでとにかく早く身支度を整えて朝食を済ませて下さい!」

 あ、追求は諦めたっぽい。

 そして改めて、三日目が始まる。
 本日の課題は――

 「個人面談、ねぇ」

 一人ずつの面談だそうで、順番になったら担当の侍従が呼びに来るらしく、今日は広間に集まる必要はないらしい。
 との事で、待ち時間にお茶を飲みながら読書再び。

 ああ、楽しい。
 贅沢な部屋も食事も要らない、部屋と食事は下働き仕様で良いから王宮図書館で暮らす許可とか欲しいんだけど。

 お昼を食べる前までそうして楽しい時間を過ごせたのだけど、流石に午後になって呼び出しがかかった。

 案内されたのはやっぱり広間。
 だけど……

 「(あ、竜王陛下と多分側近な人達……)」

 私が座る為にあるのだろう椅子と対面している長机に居るのは光の国の、多分この城で働く職員だろう。

 しかし私の座る椅子の後ろに居並ぶのは闇の国からの客人達。

 二日目まで彼らは参加していなかったけど、今日は面談の様子を見学しているらしい。

 まぁ……これまでの課題は個人の資質を測る類いのものだったから、後で結果の報告書でも確認すれば済んだだろうけど、今回は候補者の質疑応答を直に見るつもりなんだろう。

 まあ、私なんかが選ばれるはずもなし。一応真面目に答えはするけど後ろの面子を気にする必要も無いよね?

 「では、始めます。まず、貴女はエルシエル=プランツ男爵令嬢、で間違いありませんね?」

 「はい」

 「まずあなたの家族構成について答えて下さい」

 ……ん?
 そんなもの貴族年鑑でも調べれば分かる事では?
 そんな疑問を覚えつつも、問に答える。

 「プランツ男爵家現当主の父と男爵夫人の母、嫡男の兄と、私。親戚として既に嫁いだ実姉と、近々兄と婚姻予定の義姉、父の弟で私の叔父とその息子の従弟。血縁としてはこれが全てです」 

 「では次に――」

 こうして質疑応答は三十分以上に渡り行われたのだった。
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