上 下
15 / 119
第二章 第一次選考会

まずは軽く前哨戦から

しおりを挟む
 「――ワイト侯爵家と言えば蜂蜜が有名ですわよね」

 お茶会は、公爵令嬢のリュセ様の仕切りで進んでいく。

 「は、はい。養蜂が盛んで、それに伴って花畑も多いのです。その花を見に訪れて下さる観光客も多く、我が領地の主要産業を支える要でございます」

 「お茶に蜂蜜を入れていた様だけど……」

 「は、はい。これは光の国でしか咲かない光の花の蜂蜜です。ただの蜂蜜でしたら地の国の物の方が安く入手できるのですが、この光の花の蜂蜜は自己主張しない自然な甘さで、何かに合わせるのに向いているのです、紅茶に入れるにもお砂糖よりカロリーもヒ低いのです」

 「まぁ。私も試してみたいわ、用意してくださる?」
 侍女に命じ、リュセ様が蜂蜜入りの紅茶を啜る。

 「あら、本当に美味しいわ」
 それに続いて蜂蜜入りの紅茶を試す令嬢が数人。

 ……カロリーの件はとても気になる所だけど、お値段結構するよね? ウチじゃちょっと真似出来ない。

 「メイアクト侯爵家は……服飾関係のお話をよく伺いますわ」
 「ええ。元々繊維の元となる植物が名産だったのですが、そもそも単価が低く……それだけでは領の財政は成り立ちませんでしたの。そこで糸から布を降り、その布を活用する事で一連の産業を領の主要産業としたのです」

 うん。侯爵と名の付く家は基本領主業に励んでいる。ウチの男爵家があるのもそうした侯爵領の一画なのだ。

 「カール伯爵家のご当主は確か財務関係のお仕事をなさっていましたね?」

 「はい、恐れ多くも侯爵家から国庫へお収め頂くお金の確認や管理の仕事を、主にさせていただいております……」

 そして、伯爵家は基本城や役所に務め、国の政治を回している。

 しかし聞く限りそこまで特別な領地や仕事を任されている家のご令嬢は聞く限り居なそうなんだよね……。

 本当に、ここに居る皆々様方の選抜基準は一体何なんだろう?

 「プランツ家は……確か第一次産業の守護者として有名なお家よね?」

 「はい。恐れ多くも公爵家のご令嬢が我が男爵家の生業を存じて下さっていたとは光栄です。私自身も研究に携わる身ですので、嬉しく存じます」

 「……え? ああ、事業に携わっていらっしゃるのかしら? 優秀な側近をお持ちなのね?」

 「いえ、私自身の仕事ですわ。普段は研究所に籠もるかフィールドワークに出ているので、中々社交に関わる機会がなく……。うっかり失礼をしてしまわないか自分でヒヤヒヤしておりますの。何か失敗をしてもどうかお目溢しを、ほほ……」

 元々唯一の男爵令嬢として冷ややかな気がしなくもなかった周囲の空気が明らかに凍った瞬間だった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

お一人様大好き30歳、異世界で逆ハーパーティー組まされました。

彩世幻夜
恋愛
今日が30歳の誕生日。 一人飲みでプチ贅沢した帰りに寄った神社で異世界に召喚されてしまった。 待っていたのは人外のイケメン(複数)。 は? 世界を救え? ……百歩譲ってそれは良い。 でも。こいつらは要りません、お一人様で結構ですからあぁぁぁ! 男性不信を拗らせた独身喪女が逆ハーパーティーと一緒に冒険に出るとか、どんな無理ゲーですか!? ――そんなこんなで始まる勇者の冒険の旅の物語。 ※8月11日完結

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

田舎の雑貨店~姪っ子とのスローライフ~

なつめ猫
ファンタジー
唯一の血縁者である姪っ子を引き取った月山(つきやま) 五郎(ごろう) 41歳は、住む場所を求めて空き家となっていた田舎の実家に引っ越すことになる。 そこで生活の糧を得るために父親が経営していた雑貨店を再開することになるが、その店はバックヤード側から店を開けると異世界に繋がるという謎多き店舗であった。 少ない資金で仕入れた日本製品を、異世界で販売して得た金貨・銀貨・銅貨を売り資金を増やして設備を購入し雑貨店を成長させていくために奮闘する。 この物語は、日本製品を異世界の冒険者に販売し、引き取った姪っ子と田舎で暮らすほのぼのスローライフである。 小説家になろう 日間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 週間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 月間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 四半期ジャンル別  1位獲得! 小説家になろう 年間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 総合日間 6位獲得! 小説家になろう 総合週間 7位獲得!

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...