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第一部 第一章 花嫁選びの宴

城からの招待状

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 からころからころ。

 「うー、眠い……」

 窮屈な衣装に身を包み、エルシエルは馬車の中で船を漕ぎそうになりながらも必死に意識を保っていた。

 エルシエルが今乗っているこの馬車は、何と王城からとお迎えだと男爵家までわざわざやって来た。

 エルシエルはと言えば、昨日の夜会――あの挨拶の後は、必要最低限の挨拶だけ済ませて儀礼的にエスコート役の従弟と一曲だけ踊ったあと、お腹に詰められるだけ料理を詰め込んで、そのままさっさと帰ってきた。

 ……だが、早めの帰宅と言っても夜会は夜会。そろそろ日付の変わる頃にようやくベッドに入ったのだ。

 いつもなら昼過ぎまでベッドとお友達でいたい、そんな翌日の朝に、王城から使いの者がやって来て、対応に出た執事に一通の封書を至急と言い置いて帰って行ったと言う。

 封書の宛名はエルシエル。

 気持ち良く眠っていた所を侍女に叩き起こされ、託された招待状が城への召喚状だと知れた上、昼過ぎには迎えが来ると書かれていては、屋敷はたちまち上を下への大騒ぎとなった。

 エルシエルは問答無用で風呂に突っ込まれ、全身磨き上げられた。

 すっぽんぽんにされたエルシエル、次はドレスに着換え……って、

 「ドレスなんて昨日着てったの位しか無いわよ!」

 しかし男爵家とは言え流石に昨日の今日で同じドレスを着て行けば良い笑いものである。

 「私みたいのなんて誰も気にしてないわよ」

 「何言ってるの! 竜王陛下からのお声がかりがあったって注目されてたのよ、ご婦人たちの記憶力を舐めたらいけないわ。こうなったらあの娘のドレスを持って来なさい。流行り物ではなくオーソドックスなタイプの無難な……、……そんなの持ってたかしらねあの娘」

 お母様まで参戦し、昨日の比じゃなく着飾らされた。

 予告通り到着した馬車に、今日は一人で乗り込んで今に至る訳だけど……。

 「ああ、ヤバい、馬車の振動が余計に眠気を誘う……」

 話し相手のカレンが居れば少しは気を紛らわす事も出来たかもしれないけど、書状には身一つで来るよう書いてあったのだ。
 ドレスさえも要らないと。
 全ては城で用意しているから、と。
 そう書かれていては従うしかない。

 「あ……もう……ダメ……」
 私の意識はフッと途切れ闇に飲まれていった。

 同じ頃。
 王城へ向かう馬車が全部で八台。

 それを城の高い塔の上から見下ろす、闇の国からやって来た王と側近達が居た。

 「第一ラウンド開始、ですか。果たして何人残るでしょうねぇ?」
 「……さぁな」
 家臣達の問いに王は。
 「どんな結果になろうと、私は職務を全うするだけだ」
 そう答えを返したのだった。
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