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勇者Side - Spin off - ④
δ-3 レッスン開始
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ヒョオ、と音を立てて風が吹き抜ける。
赤茶けた大地に僅かな雑草が生えるのみの広野に立つ私たち二人。
私はかつての記憶通りに力を振るった。
まずは範囲指定。……これはおおよそで構わない。視界に入るだけ全部、なんて指定も可能なくらいとてもルーズな仕様になっているから。
それから振るう力を決めて――放つと土地が一瞬まぱゆく光る。
これでおしまい。
使う力が少ないと、既に育っている作物の出来を良くする程度の能力だけど、全力で使うとこの寂れた土地でも瞬く間に草原に変わる。
聖女とはそれ程までの力を使える存在なのだ。
「うーん、魔法使うみたいにすればいいのかしら?」
ヒカルは取り敢えず見たままに力を振るう――が、範囲指定はともかく力の加減が上手くいかずに不発に終わった。
「……ん? あれ、失敗した?」
「――適当な力のこめ方だと失敗するみたいです。ある程度段階があって、その規定値で力を使わないと失敗するんですよ」
「なるほど……」
と、納得したように頷き、それから続けて術を発動させようとし。一度目は失敗、二度目も失敗。三度目、四度目でまず成功させた。……けど、喜ぶ間もなくすぐに五度目……失敗。六度目、七度目……失敗。八度目でまた成功。……さっきの成功より力が強い。
そうして少しずつ力を上げて、成功する力の量を感覚で覚えようとしているらしい。
「え、まさか今日一度で覚えようとしてる? んな無茶な」
「……うん。流石に全部は無茶だろうけど、出来る限りはね、やらないと。もう日もないし」
ヒカルは何でもない事の様に言うけど、私はこの力を使いこなすのに半年はかけた。それを、今日一日でどれだけ追い縋る気なの!
吸血鬼になった様だけど、少しばかり人間よりかは体力もアップしているらしいからって……これはやり過ぎでは?
「はは、流石……。主様クオリティは健在ですか」
レイが微妙に笑顔をひきつらせながらポツリと呟く。
「彼女、ずっとこんな感じで訓練を続けていたんですよ。剣術も魔術も、冒険者としてのアレコレもね。なんせスパルタなコーチが専属でついてましたから」
モモコはヒカルを改めて見やる。
「その専属コーチが離れたなら、少しくらいは楽をしようと思っても仕方ないのに。彼女らはむしろより厳しい訓練を己に課しました。――その結果はお嬢さんが一番良くご存知でしょ?」
……悔しいけど。勇者パーティーはいとも簡単に彼らに屈してしまった。勇者パーティーの誰も、こんな訓練をしている者は居なかったから。
「……でも、流石にもう終わりにしないと」
「んじゃ俺はアイツ呼んでくるから。モモコはヒカルをお願いするよ」
「あっ、面倒な事を人に押し付けて!」
「あはははは~」
逃げ回る男とそれを追いかける女。
それは今後しばしば見られる様になる光景だった。
赤茶けた大地に僅かな雑草が生えるのみの広野に立つ私たち二人。
私はかつての記憶通りに力を振るった。
まずは範囲指定。……これはおおよそで構わない。視界に入るだけ全部、なんて指定も可能なくらいとてもルーズな仕様になっているから。
それから振るう力を決めて――放つと土地が一瞬まぱゆく光る。
これでおしまい。
使う力が少ないと、既に育っている作物の出来を良くする程度の能力だけど、全力で使うとこの寂れた土地でも瞬く間に草原に変わる。
聖女とはそれ程までの力を使える存在なのだ。
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ヒカルは取り敢えず見たままに力を振るう――が、範囲指定はともかく力の加減が上手くいかずに不発に終わった。
「……ん? あれ、失敗した?」
「――適当な力のこめ方だと失敗するみたいです。ある程度段階があって、その規定値で力を使わないと失敗するんですよ」
「なるほど……」
と、納得したように頷き、それから続けて術を発動させようとし。一度目は失敗、二度目も失敗。三度目、四度目でまず成功させた。……けど、喜ぶ間もなくすぐに五度目……失敗。六度目、七度目……失敗。八度目でまた成功。……さっきの成功より力が強い。
そうして少しずつ力を上げて、成功する力の量を感覚で覚えようとしているらしい。
「え、まさか今日一度で覚えようとしてる? んな無茶な」
「……うん。流石に全部は無茶だろうけど、出来る限りはね、やらないと。もう日もないし」
ヒカルは何でもない事の様に言うけど、私はこの力を使いこなすのに半年はかけた。それを、今日一日でどれだけ追い縋る気なの!
吸血鬼になった様だけど、少しばかり人間よりかは体力もアップしているらしいからって……これはやり過ぎでは?
「はは、流石……。主様クオリティは健在ですか」
レイが微妙に笑顔をひきつらせながらポツリと呟く。
「彼女、ずっとこんな感じで訓練を続けていたんですよ。剣術も魔術も、冒険者としてのアレコレもね。なんせスパルタなコーチが専属でついてましたから」
モモコはヒカルを改めて見やる。
「その専属コーチが離れたなら、少しくらいは楽をしようと思っても仕方ないのに。彼女らはむしろより厳しい訓練を己に課しました。――その結果はお嬢さんが一番良くご存知でしょ?」
……悔しいけど。勇者パーティーはいとも簡単に彼らに屈してしまった。勇者パーティーの誰も、こんな訓練をしている者は居なかったから。
「……でも、流石にもう終わりにしないと」
「んじゃ俺はアイツ呼んでくるから。モモコはヒカルをお願いするよ」
「あっ、面倒な事を人に押し付けて!」
「あはははは~」
逃げ回る男とそれを追いかける女。
それは今後しばしば見られる様になる光景だった。
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