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番外編 - 好きな人の攻略法 -

② アプローチ

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    その町に辿り着くまで、いくつもの町を経由して来ました。……だから、知識として知っていた祖国と隣国の差を我が目で見てそれを実感して、私は改めてあの国の愚かさを再認識致しました。
    このままじゃいけない、と。だからこれまでより一層学びや鍛練に奮闘するようになりました。
    ……ところで。共に旅をする剣士のケントが、ヒカルに想いを寄せているらしい事には私、割りと早い段階で気付いておりました。
    当のヒカルはこの世界に馴染むため、イマルや私の指導について来るのに必死な様で、それどころではないご様子。
    ケントもそれは分かっているようで、片想いのまま彼女を見守っていたのですが……。
    ネフシールの町で見かけたイマルとヒカルの様子から、お二人の気持ちに気付いてしまって……。
    イマルについては弄るネタが出来たと喜びましたけれど……。ケントの気持ちを知る私はフォロー役に回るべきだろうと判断し、しばらくは慰め方を考えながら彼を見ていましたの。
    彼は、祖国の辺境の村出身の村人――即ち平民で、たまに軍の演習に出た先で見かけるくらいしか接点の無かった方です。
    ……出身の事だけを言うならイマルだってそう――だと思っていましたが――彼は私の元婚約者様と同じ勇者パーティーの一員でしたから、ケント程接し方に困ることはありませんでした。
    そもそも彼は初めから私とごく普通に接しておられましたからね。
    ケントは……。あの国の貴族の常の振る舞いを思えば仕方がないとはいえ、私の一々に怯えてましたから……。
    敢えて脅かしたい訳ではないので、色々気を付けてはいたものの……。ヒカルにもさん呼びを止めて貰ったところですもの。いい加減、慣れて欲しいもの。
    故に、あの日。年越しの祝いでイマル達にデートに行けと背中を押してヒカルは彼に任せ、私は勝負に出る事にしたのです。
    私はケントを町に連れ出し食事に誘いました。
    そして。
    「ねぇ、ケント。ヒカルも私を呼び捨ててくれるようになったのです。いい加減、私がもう貴族ではないと分かっていただけません事?」
    飲んで食べて。その後で私は切り出しました。
   「私は銀の剣の一員として振る舞うよう心がけ、元貴族令嬢だと驕ることのないよう常に自らを戒めて来たつもりです。……ですが、それはあくまで元貴族の私個人の基準での見解。それが間違いで、足りないとおっしゃるなら、是非どこが良くないのか教えてくださいませ」
    「え、え、俺そんなつもりは……!    マリーさ……ま、マリーに落ち度なんかないよ!    ただ俺がつい身構えちゃうだけで……。その、失礼な態度とっててごめん。俺の方こそ気を付けるようにするよ」
    ……と、取り敢えず言質は取りましたわ!
    だから。
    しばらくはイマルをからかい、ヒカルとのお喋りを楽しみつつ……と思っていたのに。
    イマルの思わぬカミングアウトとパーティー離脱でそれどころじゃなくなりました。
    でも……。突然リーダーを任されて困りながらも一生懸命役目を果たそうとするケントは……。
    可愛いくせに格好良かったのですわ!
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