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ざまぁのその後

16-8 求愛返し

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    陛下に残りの仕事を押し付け帰って来た今日は、いつもより早い時間に屋敷へ到着。
    まだ食事の支度が整わないからと、先に入浴を……と執事が言うから先に風呂に入り、その後いつも通り食事を済ませる。
    ……薬を飲まない日はまだ寝室別なんだけども、ね。
    式まであと二週間。
    あんな適当な言い方だったけど、陛下に「やれ」と言われて、こうして早々に帰宅したからにはやらないわけにはいかんのですよ、ってことで。
    私は今イマルの寝室に居る。
    イマルの寝室――即ち当主の主寝室と言うだけあってベッドは広い。
    夫婦用の寝室はまた別にあるらしく、ここは当主が一人で寝ることを想定して作られた部屋らしいけど、その部屋におかれているのはダブルサイズより幅のあるベッドで、それが余裕で収まる位に部屋も広い。
    入浴後に着替えた部屋着を、イマルはひょいと脱ぎ捨て夜着に着替える。……下着を着たままとはいえ、突然の事に狼狽える私を、イマルは不思議そうに振り返った。
    ベッドに腰掛け「来い来い」と手招きしつつ自分の隣に座れとベッドをポンポン叩く。
    ……そりゃ、ね。最後までして全部見てるんだから今さらだろって話なんだけどさ。
    私の心臓はあの時みたいに物凄くバクバクしてて、余裕なんて全くなくて。……そんな時に突然服脱ぎだされて動揺するなって、無理ですから!
    けど、逃げ出すわけにもいかずに素直にイマルの隣に腰を落ち着ける。
    あー、もうどうしようもなく顔が真っ赤になってる自覚があるから、イマルの顔が真っ直ぐ見られない。
    ああ、求愛てどうすれば良いんだっけ?
    とにかく血を吸って……牙の跡を目立つところ……というか首筋に残すんだよね?
    座高の差で視線は丁度彼の鎖骨の辺りに吸い寄せられていく。
    すると何故か突然喉の乾きを感じて、今すぐ水を飲みたくてたまらなくなる。……まるで真夏の猛暑の中を走った後みたいに。
    それをまた困ったように見下ろし頭を撫でて宥めようとするイマルが、夜着の襟を開き、スルリと夜着の布が方から腕へと落ち、肩から脇腹までの裸身が私の視界に晒される。
    けど、私の目のピントは首筋に合ったまま動かせない。ただ喉の乾きだけが思考の全てを占めていて……。
    「――大丈夫だ。怖がらなくていい。どうすれば良いのかはお前の中に居る俺の血が知っている。だから、したいようにすれば良い」
    ……イマルが何か言ってるけど。えっと、ホントに何を言ってるんだろう?    まさに今これから血を啜ろうとしているのに、何故もう私が彼の血を飲んだ事があるみたいな事を……ああでももうその肌の下を流れているはずの甘露の事しか考えられない――
    無意識のままそこへを口を寄せ、息を吸うのと同じくらい当たり前に牙を立てて噛みついていた事にハッと気付いた時には、甘くて温かい物が喉を通って胃へと届いていて。
    ……あれ。何コレ。血?    それが何でこんなに甘いの?    生臭くも鉄臭くもない……?
    ――もっと、欲しい。
    「待て。そのくらいで止めとけ。後がキツくなるぞ」
    けど、イマルに制止されてしまう。
    何で……?    もっと欲しいのに!
    それしか考えられない頭で不満たっぷりの目でイマルを睨むけど、「すぐに分かる」と困った様に笑う。
    そして――それは本当に唐突に。私を飲み込んだ。
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