141 / 192
断罪
14-6 断罪 - 貴族 - ②
しおりを挟む
「では、改めてそなたらへの処罰を説明しよう」
魔王様は天井からぶら下がる面々を見上げながら、悠々と声を張る。
これ見よがしに弓をちらつかせたり、ちょっと鼻息荒くふんすと小雪混じりの冷風吹かせて命綱をキシキシさせちゃったりしたからか、今だけだろうけど彼らはとってもお利口さんになってるからね。
「まず、ここに居る全ての者は爵位剥奪。……その爵位に付随する義務を怠り権利ばかりを貪った挙げ句に禁忌の術の行使を決め実行を命じ、その上他国に侵略せんと企んだ。その様な者に今後貴族を名乗られては迷惑千万。故に、お前達から爵位を剥奪する」
陛下はいかにも面倒な、と言いたげにしながらも懇切丁寧な説明を加えて処罰を言い渡していく。
「次。お前達の家が有する資産の全額没収。お前達はその権利を乱用し、本来無用な戦に民を使い、禁忌の薬物にて民を害した。彼らの救済には相応の資金が必要だ。無論、我らの軍にも小なりとはいえ犠牲は出ておる。こちらの補償にも金は要る。これらの資金を賄うため、お前達の資産を没収する」
連中がブーイングの声を挙げようとした瞬間、イマルが視線でニールに命じ、軽く吹雪の旋風を叩きつければ、はらはらと雫が降ってくる。
げっ、と慌てて防水結界を辺りに張り巡らせる。私たちと王さま含む各国重鎮達にあれを浴びせかけられては大変だ。
……ついでにかわいそうだから既に処罰を言い渡された兵士さんにも結界を張る。
ん、ヘルナイト王? 当然放置ですよ!
「いい判断だ。良くやったな」
イマルがニコニコ笑いながら私の頭を撫でくり回す。……あの、人前なんで止めてくれませんかね? ほら、魔王陛下が生ぬるい目でこっち見てるから、ね?
「げふん。あー……それと……だな」
無理矢理咳払いをして話を進める陛下に、周囲のお偉方からの視線が刺さる。……陛下、頑張って下さい!
「げふんげふん。それと、強制労働を課す。爵位も財も失ったお前達がこぞって賊にでも堕ちたりすれば面倒だ。つまらぬ二度手間はごめんだが、かといって騎士や魔術師らと同じ任務につけてもただの足手まといにしかならんだろうし、鉱山送りにしても役立たずだろうて。故に、机仕事を手配してやった。しっかり励めよ?」
机仕事と言っても政務とは直接関係のない、地味な書類仕事をひたすらこなすだけ。そういうのに向いてる人ならともかく、相性が悪いと一日持たずにキーッってなるやつ。
データ入力とか、資料作成とかそんな雑用的デスクワークをひたすらに、監視付きでやらされる。
周りはおっさんばかり。綺麗なお姉さんが淹れてくれるお茶休憩も、タバコ休憩も無し。仕事上がりの一杯も勿論禁止。
実質、お務めの内容が書類仕事なだけの日本の刑務所生活に近い。……元お貴族様に生活能力なんてあるはずないから、その辺は多少お情けで整えられるらしいけど、これまでの悠々自適な生活とはかけ離れた日々が待っている。
彼らにとっては屈辱だろう。
「ああ、逃げたら即処刑だから。死にたくなかったら大人しくしとけよ?」
それに抗議の声を上げようとした男に、イマルがネイアをけしかける。
……直後。
男の人の大事な部分をネイアの放った矢が貫くと、この世の終わりのような絶叫が響き、謁見の間に居た男達が青い顔で両膝をしっかり閉じ合わせた。
魔王様は天井からぶら下がる面々を見上げながら、悠々と声を張る。
これ見よがしに弓をちらつかせたり、ちょっと鼻息荒くふんすと小雪混じりの冷風吹かせて命綱をキシキシさせちゃったりしたからか、今だけだろうけど彼らはとってもお利口さんになってるからね。
「まず、ここに居る全ての者は爵位剥奪。……その爵位に付随する義務を怠り権利ばかりを貪った挙げ句に禁忌の術の行使を決め実行を命じ、その上他国に侵略せんと企んだ。その様な者に今後貴族を名乗られては迷惑千万。故に、お前達から爵位を剥奪する」
陛下はいかにも面倒な、と言いたげにしながらも懇切丁寧な説明を加えて処罰を言い渡していく。
「次。お前達の家が有する資産の全額没収。お前達はその権利を乱用し、本来無用な戦に民を使い、禁忌の薬物にて民を害した。彼らの救済には相応の資金が必要だ。無論、我らの軍にも小なりとはいえ犠牲は出ておる。こちらの補償にも金は要る。これらの資金を賄うため、お前達の資産を没収する」
連中がブーイングの声を挙げようとした瞬間、イマルが視線でニールに命じ、軽く吹雪の旋風を叩きつければ、はらはらと雫が降ってくる。
げっ、と慌てて防水結界を辺りに張り巡らせる。私たちと王さま含む各国重鎮達にあれを浴びせかけられては大変だ。
……ついでにかわいそうだから既に処罰を言い渡された兵士さんにも結界を張る。
ん、ヘルナイト王? 当然放置ですよ!
「いい判断だ。良くやったな」
イマルがニコニコ笑いながら私の頭を撫でくり回す。……あの、人前なんで止めてくれませんかね? ほら、魔王陛下が生ぬるい目でこっち見てるから、ね?
「げふん。あー……それと……だな」
無理矢理咳払いをして話を進める陛下に、周囲のお偉方からの視線が刺さる。……陛下、頑張って下さい!
「げふんげふん。それと、強制労働を課す。爵位も財も失ったお前達がこぞって賊にでも堕ちたりすれば面倒だ。つまらぬ二度手間はごめんだが、かといって騎士や魔術師らと同じ任務につけてもただの足手まといにしかならんだろうし、鉱山送りにしても役立たずだろうて。故に、机仕事を手配してやった。しっかり励めよ?」
机仕事と言っても政務とは直接関係のない、地味な書類仕事をひたすらこなすだけ。そういうのに向いてる人ならともかく、相性が悪いと一日持たずにキーッってなるやつ。
データ入力とか、資料作成とかそんな雑用的デスクワークをひたすらに、監視付きでやらされる。
周りはおっさんばかり。綺麗なお姉さんが淹れてくれるお茶休憩も、タバコ休憩も無し。仕事上がりの一杯も勿論禁止。
実質、お務めの内容が書類仕事なだけの日本の刑務所生活に近い。……元お貴族様に生活能力なんてあるはずないから、その辺は多少お情けで整えられるらしいけど、これまでの悠々自適な生活とはかけ離れた日々が待っている。
彼らにとっては屈辱だろう。
「ああ、逃げたら即処刑だから。死にたくなかったら大人しくしとけよ?」
それに抗議の声を上げようとした男に、イマルがネイアをけしかける。
……直後。
男の人の大事な部分をネイアの放った矢が貫くと、この世の終わりのような絶叫が響き、謁見の間に居た男達が青い顔で両膝をしっかり閉じ合わせた。
0
お気に入りに追加
3,162
あなたにおすすめの小説
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。
マツヤマユタカ
ファンタジー
『アイテムコピー』という外れスキル持ちのアリオン=レイスは他には一切魔法が使えず、
14歳という年齢的にも非力であったため、冒険者パーティーには中々入れなかったが、
なんとか受け入れてくれるパーティーに巡り会うことが出来た。
だがそのパーティーリーダー、ゲイスの目的は別にあった。
それはアリオンの『アイテムコピー』の能力を悪用し、金貨や宝石をコピーさせて大もうけしようと
いうものであった。
だがアリオンはそれを頑なに拒絶する。そのため日々パーティーの仲間たちにいじめられ続けていた。
だがある時、ついに痺れを切らしたゲイスによって上級ダンジョンに取り残されるアリオン。
絶体絶命の窮地を救ってくれたのは、美しき剣聖レイナ=ベルンと静かなる賢者ネルヴァ=ロキの二人であった。
彼らはたちまちアリオンの身体から流れる強大な神の力を感じ取る。
そしてアリオンの能力を解放するのだった。
それによってアリオンは上位スキル『能力コピー』を手に入れる。
このスキルはどのような魔法や、魔物の能力でさえもコピーしてしまうというとんでもない能力であった。
アリオンは上級ダンジョンをレイナたちと共にクリアしていく過程で、様々な魔物たちの能力を手に入れていく。
そして無敵の大魔導師へと成長を遂げるのであった。
一方アリオンを追放したゲイス一味は、強大な存在となったアリオンによって痛い目に遭わされたにもかかわらず、まったく改心することなく恨みを持ったがために、どんどんと没落していくのであった……。
小説家になろう様でも《『アイテムコピー』という外れスキル持ちでパーティーを追放された俺だが《 神の力》を解放したことで上位スキル『能力コピー』となり、 どんな強大な魔法もコピーしまくり《無敵の大魔導師》になっちゃいました。》というタイトルで投稿し、
ブックマーク登録2000以上、評価ポイント平均4・5をいただいております。
是非とも一度、ご覧ください。
パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件
九葉ユーキ
ファンタジー
クラウス・アイゼンシュタイン、二十五歳、C級冒険者。滅んだとされる死霊術士の末裔だ。
勇者パーティーに「荷物持ち」として雇われていた彼は、突然パーティーを追放されてしまう。
S級モンスターがうろつく危険な場所に取り残され、途方に暮れるクラウス。
そんな彼に救いの手を差しのべたのは、五百年前の勇者親子の霊魂だった。
五百年前に不慮の死を遂げたという勇者親子の霊は、その地で自分たちの意志を継いでくれる死霊術士を待ち続けていたのだった。
魔王討伐を手伝うという条件で、クラウスは最強の女勇者リリスをその身に憑依させることになる。
S級モンスターを瞬殺できるほどの強さを手に入れたクラウスはどうなってしまうのか!?
「凄いのは俺じゃなくて、リリスなんだけどなぁ」
落ちこぼれ死霊術士と最強の美少女勇者(幽霊)のコンビが織りなす「死霊術」ファンタジー、開幕!
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
え?私、最強なんですか?~チートあるけど自由気ままに過ごしたい~
猫野 狗狼
ファンタジー
神様の手違いで転生してしまう主人公ナナキ、ちょっとボケた神様はステータスすらとんでもないことにしちゃって…!?ナナキの所に神様やら聖獣やら精霊王やら集まってくるけど、周りの人達のおかげで今日も今日とて元気に暮らせます。そして、自分からやらかすナナキだけどほとんど無自覚にやっています。そんな女の子が主人公の話です。
表紙は、左上がハデス、真ん中がナナキ、右上がゼウス、ナナキの隣がアポロ、右下がヘファイストスです。
ド素人な私が描いた絵なので下手だと思いますが、こんな感じのキャラクターなんだとイメージして頂けたら幸いです。他の人達も描きたかったのですが、入りきりませんでした。すいません。
稚拙ですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。
お気に入り700人突破!ありがとうございます。
最強への道 〜努力は俺を裏切らない
ペンギン
ファンタジー
ある日、突然世界に魔物が溢れたら
命が簡単に失われる世界になってしまったら
そんな世界で目が覚めたら一人きりになっていたら
〈あなたはどうしますか?〉
男は選んだ"最強になり生き残る道"を
絶望的な世界において一冊の本に出会った男が
努力、努力、努力によって世界に立ち向かう
※誤字脱字が多く見られますのでご注意を
処女作です。軽い気持ちでご覧になって頂ければ幸いです。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる