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お約束が果たされる時

12-12 不完全燃焼

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    「……貴方達は本当に……自分たちが何をしたのか分かっていらっしゃらないのね」
    怒りと憎しみが渦巻いているのに、声はただ冷たいばかりの無機質で。怒りの熱が何故か反映されない。
   「この世界とは何の関係もない他所の世界から無作為に人を無理やり拐っておいて、ほぼ無一文同然で放り出すとか。ありえないでしょう?    私があちらの世界で得てきたもの全て奪っておきながら、無責任に捨てて……。彼らに拾われなかったら死んでもおかしくないのに、その大罪を綺麗さっぱり忘れてるとか無いわー」
    ムカつくから、幾つか連中のすぐ近くに雷を落としてやれば派手な音と共に氷が砕け、一部焼け焦げの跡だけ残る。
   「当てたら死んじゃうから雷は当てないけど……」
   天井付近から奴らの頭上から大量の水をおっかぶせ、全身びしょ濡れにしたところへ、緩めの旋風を叩きつける。
    周囲の氷結の影響もあるからなぁ、寒かろう。
   ガクブルしてるのは……寒さのせいか恐怖のせいか……。
    「や、止めろ!」
    「何で止めなきゃならないのよ」
    「こ、こんなことしてただで済むと思ってるのか!?」
     「当たり前じゃない。殺しちゃまずいから死なせはしないけど、殺さない程度にいたぶる分には誰にも何も言われないよ?」
    ふふふ、と笑って見せれば化け物見るような目を向けてくる。
    「ああ、凍傷って知ってる?    人の体って冷やしすぎると壊死しちゃうんだって。……手足無くしても死にはしないものね?」
    「止めろ、止めてくれ!」
    「だーかーらー、私に止めてやる義理なんて無いんだけど?    手足無くすくらい問題ないでしょ?    手足が無くたって術は使えるんだから。貴族なら生活は使用人任せだろうしね?    ちょっと痛いだけで済むからさ」
    言いながら、奴らの手足の氷結による凍結を強めてやれば、面白いくらい顔色が青くなっていく。
    「な、何が望みだ、金か、地位か!」
    「え、あんた達から貰いたいものなんて無いよ?    ……あるとすればあんた達が奪った私のもとの世界での生活だけど……無理でしょ?    人から奪うのが当然なら、奪われるのも当然、よねぇ?」
    「ひ、ひぃぃぃぃ!    ゆ、許してくれ!」
    「わ、悪かった!」
    「は?    そんな程度の謝罪で許せって?    あんた達、本当に何が悪かったか分かって謝ってる?    薄っぺらな言葉だけの謝罪なんかいらないんだけど?    つーか、何で私だけ捨てた?」
    「せ、聖女は勇者パーティーの要だ!    見映えがしなきゃ民の鼓舞にも差し障りが出る!」
    「……それは、私を勇者パーティーに入れない理由で、捨てた理由じゃないわよね?」
    「む、無駄飯食らいなんぞ城に置けるか!」
    「……別に無職のヒキニートするつもりなんか無かったけど。適当な職の斡旋もされず、一夜の宿をとるにも足りない金銭だけ持たせて放り出したのは何でよ」
    「っ、聖女様は得られたのだ、勇者パーティーも町に戻り、色々と忙しい時期だったのだ!」
    「……ヒカル。これ以上問い詰めても全うな答えなど返っては来ませんわ」
    「うん。そうみたいだね。こいつらは実行犯でしかないんだもんね」
    こいつらの処罰は専門家に任せるしかないか。
    最後に霜焼けになっちまえ!    ――とばかりに奴らの手足だけ全力で冷やしてやった。
    ちょっと不完全燃焼な分は次で晴らそう。
    ――待っててくださいね、王様?
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