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お約束が果たされる時
12-9 マリーの望み
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「な……何……だと……!?」
それまで怯えるばかりだった男が急に目に力を取り戻し、唾を飛ばして怒鳴る。
「ふざけるな、お前などに大事な家を任せられるか! お前が嫁ぐからと作った息子が居る。お前に爵位は渡さぬ……!」
「あらあら、ここで頑張っても、貴方が持ってるその爵位は、各国の代表揃い踏みの断罪の場で剥奪されるわ。そのときはマルコ……弟も連座かしら……。ああ、私は籍を抜いているし、連合軍には私が銀の剣として連合軍側についていると正式に認められているから連座の対象にはならないわよ」
笑うマリーの声音はその槍斧の刃より鋭く冷たい。
イマルは黙って彼女の断罪を見守っているけど、ケントは……ちょっとマリーに怯えて涙目になってる。
――マリーが伯爵から爵位を強だ……げふん、もとい譲り受けたいという話は事前に聞いている。まあその手順については現場の状況によりけりと臨機応変に、という事になってたけど。
「だってこの戦が終わり、戦後処理が済めば貴女は隣国の侯爵夫人ではありませんか。……私、この国で伯爵家の女当主を務めこの国を救いたいし、何より貴女と堂々と会えるお友達で居たいのですわ」
そうマリーは言ってたんだ。
そっか、マリー、弟居たんだね。弟の話……っていうか実家の話は聞きにくくて避けてたし……聞いたこと無かったなぁ。
……父親はああでも、まだその弟が幼いなら、見殺しにするのは嫌だよね。
「私が爵位を継ぎ、交渉次第ではマルコの命くらいは助かるやもしれませんもの。さあ、さっさとその爵位、手放して下さいな」
「ぐっ……、女等に……、男の一人も捕まえておけぬ様な女に大事な爵位は譲れぬ!」
……うわ。
「ええ!? 聞いた限りじゃトンデモ理屈で捻り出したしょうもない理由で婚約破棄をした男ですよ? それを見抜けなかったのか、そんなの婚約者に据えた上、さっさと損切り出来なかった無能が、マリーを責めるの? 婚約破棄の件を突くなら間違いなくマリーより先に責められるべき男がここに居るのに?」
思わずみのむし二匹を見比べてしまう。
「だな。……確かに貴族でも平民でもこの手の話は女のせいにされがちなんだが……この件についてはまともな奴に聞けば十中八九婚約破棄をやらかした男か、そんな男との縁談しか用意できなかった父親が笑われるだろ」
「……ですね。聞いた限りの話をもし俺の故郷でやらかしたら、その男の一家はしばらく村で暮らしにくくなるでしょうし、その後の態度次第では村八分だってあり得ますよ?」
まともな男性代表二人からも援護射撃を得て、マリーは少しだけ表情を緩めた。
「あはは、そだよね……。私の世界の私の国でそんなん言ったら普通に呆れられて終わりだよ。社会人なら仕事も交友関係も失くしてざまぁ、な展開になってもおかしくない」
「だが、こうして話し合いではご納得いただけないようだし、そろそろ実力行使と行こうか」
イマルが、とってもイイ笑顔で囁いた。
それまで怯えるばかりだった男が急に目に力を取り戻し、唾を飛ばして怒鳴る。
「ふざけるな、お前などに大事な家を任せられるか! お前が嫁ぐからと作った息子が居る。お前に爵位は渡さぬ……!」
「あらあら、ここで頑張っても、貴方が持ってるその爵位は、各国の代表揃い踏みの断罪の場で剥奪されるわ。そのときはマルコ……弟も連座かしら……。ああ、私は籍を抜いているし、連合軍には私が銀の剣として連合軍側についていると正式に認められているから連座の対象にはならないわよ」
笑うマリーの声音はその槍斧の刃より鋭く冷たい。
イマルは黙って彼女の断罪を見守っているけど、ケントは……ちょっとマリーに怯えて涙目になってる。
――マリーが伯爵から爵位を強だ……げふん、もとい譲り受けたいという話は事前に聞いている。まあその手順については現場の状況によりけりと臨機応変に、という事になってたけど。
「だってこの戦が終わり、戦後処理が済めば貴女は隣国の侯爵夫人ではありませんか。……私、この国で伯爵家の女当主を務めこの国を救いたいし、何より貴女と堂々と会えるお友達で居たいのですわ」
そうマリーは言ってたんだ。
そっか、マリー、弟居たんだね。弟の話……っていうか実家の話は聞きにくくて避けてたし……聞いたこと無かったなぁ。
……父親はああでも、まだその弟が幼いなら、見殺しにするのは嫌だよね。
「私が爵位を継ぎ、交渉次第ではマルコの命くらいは助かるやもしれませんもの。さあ、さっさとその爵位、手放して下さいな」
「ぐっ……、女等に……、男の一人も捕まえておけぬ様な女に大事な爵位は譲れぬ!」
……うわ。
「ええ!? 聞いた限りじゃトンデモ理屈で捻り出したしょうもない理由で婚約破棄をした男ですよ? それを見抜けなかったのか、そんなの婚約者に据えた上、さっさと損切り出来なかった無能が、マリーを責めるの? 婚約破棄の件を突くなら間違いなくマリーより先に責められるべき男がここに居るのに?」
思わずみのむし二匹を見比べてしまう。
「だな。……確かに貴族でも平民でもこの手の話は女のせいにされがちなんだが……この件についてはまともな奴に聞けば十中八九婚約破棄をやらかした男か、そんな男との縁談しか用意できなかった父親が笑われるだろ」
「……ですね。聞いた限りの話をもし俺の故郷でやらかしたら、その男の一家はしばらく村で暮らしにくくなるでしょうし、その後の態度次第では村八分だってあり得ますよ?」
まともな男性代表二人からも援護射撃を得て、マリーは少しだけ表情を緩めた。
「あはは、そだよね……。私の世界の私の国でそんなん言ったら普通に呆れられて終わりだよ。社会人なら仕事も交友関係も失くしてざまぁ、な展開になってもおかしくない」
「だが、こうして話し合いではご納得いただけないようだし、そろそろ実力行使と行こうか」
イマルが、とってもイイ笑顔で囁いた。
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