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お約束が果たされる時
12-8 ざまぁ第一弾
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大半のみのむしは部屋の隅にお片付けをし。
欲しい情報を喋らせた後の脱け殻は端に寄せて。
勇者パーティーは扉の前に並べて転がし。
今、ただ一人マリーと対峙するのは一人の中年男性。……西洋人風の風貌の男の年齢を推し量るのは難しいけど、あれがマリーの父親なのだとしたら……四十かそこらだろうか。
随分と細身の男だ。成人男性にしては少々薄い……というか頼りないというか……。すぐ折れてしまいそうな体格をしている。
これが中性的な顔の美形な青年とかならまだしも、良い歳した一伯爵家の当主としてははかなげなおっさんとか……ないわー。顔だって不細工とまでは言わないけど、美形とはお世辞にも言えないおっさんなんだもん。
それが、重たい盾や槍斧を軽々振り回すマリーに冷めた目で見下ろされ震えていても……全く同情できない。
理不尽かつ下らない理由で一方的に無茶な婚約破棄をされたマリーを、それを理由に追い出した張本人だもんね。
「ねぇ、お父様。貴族の女にとって醜聞とは恐ろしいものである事は私も理解しておりますわ。……ここにいる愚かな男を躾きれなかった不手際も、まあ認めましょう。……正直全うな令嬢として選択可能な手段でそれが可能な者が居たのかとも思いますが、課せられた仕事を完遂出来なかった責任はとるつもりはありましたのよ」
カツン、と槍斧の柄の尻で床を叩く。
その武器の重みに床の木板の破片が飛び、その一つが男の額を叩いた。
「けれど、あのような訳の分からない理由で婚約破棄されたのです。私には抗議し相応の慰謝料や補償をもぎ取り己の醜聞を散らす事が出来る立場でした。――お父様が私の言い分も聞かずに一方的に私を家から追い出さなければ」
かつかつと床に転がる男の目の前で地味に床を叩き削っていく。
「けれど、あの時お父様が私を家から追い出して下さったお陰で私は得難い仲間を得られましたの」
ふわりと。それまでの冷酷な表情を消しとても綺麗で可愛い笑顔で私達を示す。
「ふふふふ、先程の私達の名乗りを聞いてくださったかしら? ……彼らは皆、多かれ少なかれ我が国から要らぬ被害を受けた者達でもありますの」
がつんと、今度は斧の刃をひび割れだらけになっていたその場所にめり込ませ。
「私は、我が国が犯した聖女召喚の禁忌を咎め断罪すべく立ち上がった国々の代表としてこの場におりますのよ?」
顔は笑顔のまま、しかし冷たい笑みに変えて笑っていない目で睨み付けた。
「勇者は敗北、城に私達を入れた時点で勝敗はほぼ決しております。――私が散々お諌めしたのを聞く耳持たずで悪事に積極的に助力したお父様が、どのような処罰を受けるか私は存じませんが……」
実戦で使われてきたと分かる細かい傷が幾つも刻まれたリアルな刃の鈍い輝きに震える伯爵。
「お父様に、その爵位は分不相応ではありませんか?」
男の実の娘は。
「お父様。今この場で私にその爵位、譲っていただきますわ」
槍斧が刃を改めて男の首にピタリと沿わせて言った。
欲しい情報を喋らせた後の脱け殻は端に寄せて。
勇者パーティーは扉の前に並べて転がし。
今、ただ一人マリーと対峙するのは一人の中年男性。……西洋人風の風貌の男の年齢を推し量るのは難しいけど、あれがマリーの父親なのだとしたら……四十かそこらだろうか。
随分と細身の男だ。成人男性にしては少々薄い……というか頼りないというか……。すぐ折れてしまいそうな体格をしている。
これが中性的な顔の美形な青年とかならまだしも、良い歳した一伯爵家の当主としてははかなげなおっさんとか……ないわー。顔だって不細工とまでは言わないけど、美形とはお世辞にも言えないおっさんなんだもん。
それが、重たい盾や槍斧を軽々振り回すマリーに冷めた目で見下ろされ震えていても……全く同情できない。
理不尽かつ下らない理由で一方的に無茶な婚約破棄をされたマリーを、それを理由に追い出した張本人だもんね。
「ねぇ、お父様。貴族の女にとって醜聞とは恐ろしいものである事は私も理解しておりますわ。……ここにいる愚かな男を躾きれなかった不手際も、まあ認めましょう。……正直全うな令嬢として選択可能な手段でそれが可能な者が居たのかとも思いますが、課せられた仕事を完遂出来なかった責任はとるつもりはありましたのよ」
カツン、と槍斧の柄の尻で床を叩く。
その武器の重みに床の木板の破片が飛び、その一つが男の額を叩いた。
「けれど、あのような訳の分からない理由で婚約破棄されたのです。私には抗議し相応の慰謝料や補償をもぎ取り己の醜聞を散らす事が出来る立場でした。――お父様が私の言い分も聞かずに一方的に私を家から追い出さなければ」
かつかつと床に転がる男の目の前で地味に床を叩き削っていく。
「けれど、あの時お父様が私を家から追い出して下さったお陰で私は得難い仲間を得られましたの」
ふわりと。それまでの冷酷な表情を消しとても綺麗で可愛い笑顔で私達を示す。
「ふふふふ、先程の私達の名乗りを聞いてくださったかしら? ……彼らは皆、多かれ少なかれ我が国から要らぬ被害を受けた者達でもありますの」
がつんと、今度は斧の刃をひび割れだらけになっていたその場所にめり込ませ。
「私は、我が国が犯した聖女召喚の禁忌を咎め断罪すべく立ち上がった国々の代表としてこの場におりますのよ?」
顔は笑顔のまま、しかし冷たい笑みに変えて笑っていない目で睨み付けた。
「勇者は敗北、城に私達を入れた時点で勝敗はほぼ決しております。――私が散々お諌めしたのを聞く耳持たずで悪事に積極的に助力したお父様が、どのような処罰を受けるか私は存じませんが……」
実戦で使われてきたと分かる細かい傷が幾つも刻まれたリアルな刃の鈍い輝きに震える伯爵。
「お父様に、その爵位は分不相応ではありませんか?」
男の実の娘は。
「お父様。今この場で私にその爵位、譲っていただきますわ」
槍斧が刃を改めて男の首にピタリと沿わせて言った。
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