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お約束が果たされる時

12-3 戦闘開始

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    太陽を背に、カイルに乗った私達は勇者達の真正面の頭上から彼らを見下ろす角度で彼らの前へと躍り出る。
    太陽の光を浴びてきらきら美しく輝く水蛇カイルは、赤茶けた地面が広がる広野ではとても目立つ。
    始めこそ彼らの眼下にある戦場にばかり目を向けていた彼らの姿が、東京ドームコンサートの舞台の上のアイドルを見る位に近付けばこちらを指差し始める。
    「ちなみに、彼ら、カイルの事はご存知で?」
    「ああ。……水上戦で何度か――忘れていなければ、だが」
    「いやいや、イマルの従魔は皆個性的だから。そうそう忘れらんないでしょ」
    ザルマやヴァル、蒼夢ならまだ分かるけどさ……。
    まあいい。あちらから魔法や弓矢の先制攻撃を浴びせられる前にまずはご挨拶しようか。
    「呪縛バインドプラント!」
    わざと大袈裟な魔法陣エフェクトを空に光らせ、光の檻を降らせ、その中に閉じ込めた勇者一行を刺付き荊で縛り上げ――。
    慌ててそれを切り払おうとする剣士と、魔法を退けようとする魔術師……かな、あれ。てことはあれがケントの幼馴染みとマリーの元婚約者か。
    「……毒針ポイズンニードル。」
    ピンポイントで狙いを定めて麻痺効果付きの刺を飛ばしてやる。
    「な、何しやがる!    お前――イマル!」
     おお。流石に元パーティーメンバーの顔と名前は覚えていたか。良かった、そこまでのお馬鹿さんじゃなくて。
    一々説明するの面倒だけど、だからってどうして私達と対峙しているのかも分かってない連中やっつけても意味ないし。
    イマルはカイルの高度を下げ、そして私を抱えて彼らの前へとひらりと軽く飛び降りた。
    「――ああ。久しいな」
    ニヤリと、不適な笑みを浮かべるイマル。
    おお、素晴らしくお似合いです、イマル様。いっそあの魔王陛下より魔王っぽくてカッコいいです!
    カイルを戻し、代わりにルミナを盾にイマルは勇者パーティーの面子を右から左へ視線を流し笑みを深める。
    私も、勇者パーティーの面子の顔と職を一致させるべく油断なく構える。
    「それで?    聖女と一緒の旅は楽しかったか?」
     じりっ、と。未だイマルが吸血鬼で、アルソレスの貴族だなんて知らないはずの彼らは、イマルがこうしてここに現れた意味をはかり損ねてか、警戒の眼差しを向ける。
    「この戦。お前達だけでこの戦線を突破できると、本当に思っているのか?」
    「何だ、今さら勇者パーティーに戻してくれと言いに来たのか?    戦場に女連れで?    ははっ、ならそこに膝をついて頭を下げて見せろよ」
    ……前言撤回。やっぱり馬鹿だわこいつら。
    「――そんなつもりはない。俺の使命は聖女の保護とお前達の捕縛なのだからな。――ケント、マリー!    今だ!」
    彼らの背後で、高く跳び上がったニールの背から更に跳んだケントが剣を振りかぶる。
    その影に間抜けに空を見上げた勇者剣士が目を見張る。
    「ファイヤーアロー!」
    加えて空からマリーの魔法が降り注ぎ、私の荊に燃え移る。
    「――お待たせいたしましたわ、さあ、参りますわよ!」
    槍斧と共に駆けて来るマリーの姿に魔術師が固まる。
    「さあ、お覚悟なさいませ!」
    さあ、面子は揃った。
    「本番と、行きましょうか」
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