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お約束が果たされる時

12-2 進軍開始

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    「全軍、進め!」
    指揮官の命令に従い前進するアルソレス軍。
    彼らを尻目に、私とイマルはカイルに、ケントとマリーはニールの背に乗って戦場を駆け抜ける。
    今回、私達銀の剣パーティーは遊撃隊として現場の指揮下からは外されている。
    流石に総大将の王に侍る大軍司長の指揮下にはあるから、彼らの命令は絶対無視出来ないけど。
    「おう、まぁ好きに暴れて来いや」
    とニヤニヤしてたから、まあ余程本隊に迷惑かけたりしない限りは制止される事は無いだろう。
    私達が目指すのは勇者パーティー。
    まだ国境を越えるか越えないかの緩衝地帯で、ヘルナイト王国軍の姿は遠く、地平線の間際に凸凹した黒い影が見えるだけ。
    平原を駆けるニールの脚力には騎馬隊も敵わない。
    けど、その途中にある崖の上にまた別の人影が見える。
    ……まるで戦隊モノのロケ現場のような、赤茶けた岩肌がむき出しの崖の上、馬鹿みたいに並ぶ面々。
    その顔の大半、私には見覚えの無いモノだけど、一人女の子が居て、黒髪黒目のその子はダクーラでチラッと見かけた彼女……っぽい。
    だけど、彼女以外と共にパーティーを組んでいたイマルが即認めた。
    「――奴らだ」
    「……何なんでしょうか、あれ」
    それを見つけた私達はカイルに高度を下げて貰ってニールと並ぶ。
    「……あれですかね、高い所で自分の安全だけ確保して、上から魔法とか弓矢で狙い撃ちを狙ってるとか?」
    「ああ……。あの男ならやりそうですわ。けど、前衛役まで上に居るのでは、ケントの幼馴染みは仕事が無いのでは?」
    「……兵があの上まで迫るまでは、な。彼らがそれまでの時間をどう計算しているかは知らんが、俺達が相手をする以上は早速仕事で忙しくなるだろ」
    「ほほほ、それは……あの男の吠え面が拝めそうでとても愉快な展開ですわね。分かりました、私達は彼らの背後に回りますので、引き付け役をお願い出来るかしら?」
    「当然、そのつもりだ」
     イマルが楽しそうに笑う。
     ああ、私も楽しみだ。
     元パーティーメンバーが敵キャラとして再登場のお約束シーンがリアルに拝めるとは!
     イマルを要らないと判断したお馬鹿さん達のリアクションに期待しようではないか。
    イマルがヴァルを先行させ、彼らの様子をより詳細に探らせる。
    「間違いなく全員揃っているな」
    「ええ、今頃他の国境でも他の国の軍が侵攻してるのに?    他は無視?」
    「ヘルナイト王国と国境を接する国で魔族の国はウチだけだからな。他国の相手役は王国騎士団らしいぞ」
    「……」
     軍略なんか素人知識さえ無い私には何も言えないけど。それでも「ええ?」って思いたくなるけど……。
     まあ、いいか。私には関係ないし。
     私達からしてみれば、目の前に居る獲物を狩るのが最優先事項なんだから。
    「さあ、行くぞ。準備はいいな?」
    「当然!」
     イマルがカイルに加速を命じる。
     私は、初撃となる魔術を組み上げスタンバイし、勇者パーティーに迫る。
    さあ、勇者パーティーの反応は――?
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